イミテーション・ミュートス   作:芳村修環輝

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記憶

事件が起きた。 その日はいつも通り家族や友達と仲良く過ごしていた。楽しい毎日をおくっていた。みんなで色んな話をしたり、友達とゲームをして遊んだりと平和な毎日を楽しんでいた。

 

だがそんな日に不幸なことが起きた。突然、どこかから爆発音が聞こえてきた。それを契機に次々と様々な場所から爆発が発生していった。

それはこの世界の伝達塔を初め、みんなで行く食事処やいつも遊びに行ったりした友達の家、友達や家族たちと遊びに行ったアスレチックタワー、好きな作品が置いてある図書館、様々なものを作ってきた工房、そして、家族と暮らしてきた家。皆が皆、思い出がある。短い間だったけどたくさんの思い出が出来たのだ。

それを一瞬にして破壊された。思い出を物言わぬ化け物に変えようとするように。

目の前にある家族と暮らしてきた家を見る。爆発が起き、火の海と化したそれはずっと暮らしてきた家なのだ。

 

 

感情が出なかった。突然予想だにしないことが起こったからなのか、何げない日を送る毎日を一蹴するかのように破壊されたからなのか、感情が出なかった。そして、身体が震えるかのように硬直した。怖かった。

 

だけどその家には家族がまだいるかも知れない。硬直した身体を今は固まっている場合じゃないと言い聞かせるように目の前にある家に向かって動かす。家族を探すために。

 

家族を探す。普段は出ないような精一杯大きな声で呼びかける。感じたことのないような熱気を受け、身体は痛みを覚えるが家族を探し続ける。部屋を探し続けるが中々見つからない。隈無く探し続けていくとその部屋の前で倒れていた誰かを見た。家族だと思い、近づいていくが身体を揺すっても起きなかった。声をかけても返事をしない。声が小さくて聞こえないのかなと思い大きな声で呼びかけても返事をしない。妙だ、こんな熱いところで眠っていても寝づらいだろうに、どうしてここで?と訝しんだ。

ふと、部屋の中を見ると他の家族も同じように倒れていた。これは様子がおかしいと思い、必死に家族を呼び起こす。だが、どんなに身体を揺すっても声かけをしても起きない。そうしていると部屋の奥の扉の向こう側から声が聞こえた。その声には聞き覚えがあった。それはパパとママの声だった。良かったと安堵した。その安心感を胸に持ち扉を開けた。

 

そこには倒れ伏したパパとママがいた。駆け寄って、声を掛けると今度は反応があった。

「「・・・・・・・・・べノラ、なのか?」」

パパとママは名前を呼んでくれた。良かった、2人は起きてる。

「・・・良いかいべノラ、私達の後ろにある大きなカプセルに入るんだ」

パパが言った、その大きなカプセルは普段睡眠に使っているカプセル状のベッドに似ていた。

「・・・べノラ、早くそのカプセルに入りなさい」

ママも言う。

だけど、パパとママが心配だ。

 

 

メラメラと炎の中で燃えたぎる部屋で誰かが言う。

 

「行きなさい、ベノラ!!」

 

「行け、ベノラ!!」

 

「「悔いのない冒険を突き進め!!」」

 

 

 

「・・・うわぁぁぁ!!!」

 

 目覚めの悪いものを見た。今見た夢が何なのかはわからない。、そして誰なのかはわからない、とても大事な存在だったはずだ。

 

でも、思い出せない。思い出せないけど、それは大事な存在なんだと思ってしまった。

 

そう考えているうちに気づいてしまったのだ、自分は誰なのかと。

 

 

 

 

 

誰なのか、そんな大事であろうことも忘れてしまっているようだ。

 

「・・・私は誰なんだ」

 

ふと、周りを見るとまるで真っ白な空間にいるのだと気づいた。

 

にしても白すぎる。白すぎて清潔どころか、汚れなんてものが一切感じられなかった。

 

だけど私は妙にそれが居心地がよく感じられた。

 

何故だろうか?ここはもしかしたら私の家なのかもしれない。

 

・・・と考えるのは時期尚早だろう。だが、今は便宜上ここは私の家なのだと思うことにする。

 

 

 

と、考えるのは後にして今はここが何処なのか、探索をしたい。そう私は自分の中の好奇心にあてられて、考えを放棄した。

 

 

 

 私はベッドから降り、出て目の前の扉に行くと、その扉は自動に開いた。だけど私はそれに別段驚くこともなく前に進んだ。私はこの場所を知っているのかもしれない。

 

現在、私は記憶がない。自分のことすら覚えていない。

 

そんな状況にも関わらず、私は興奮していた。記憶がない、いわば無知の状態。分からないのなら知ればいいだけ。ふふっ、とても楽しみだ。その思いを胸に乗せ行動を開始した。

 

 

 

色々探索しているうちに、気づくと家族部屋と書かれていた部屋の前に来ていた。早速中に入ることにした。もちろんこの扉も自動に開く。

 

入るとすぐに感じたのだが、なんだかとても居心地がいい。別段何か変わった空間ではない、部屋の真ん中に一つ大きな楕円形の机がありその向こうに画面を映す大きなモニターがあった。

 

その他にも様々な家具もあるが、実にシンプルな空間である。だけど、私はこの部屋を見てとても安心を得られたのだ。

 

 

 

そして確信したのだ、やはりここは私の家なのだと。

 

ふと、近くに飾ってあった写真立てに目が入った。気になり中を覗いてみた。その写真には人が三人写っていた。この中で一番小さき者こそが私なのだろう。先程、鏡が置いてある部屋に入ったのだがそこに写っていた何も身にまとっていない小さき者がこの写真にいる人物、まぁつまり私だ。写真にいるものは身にまとってはいるが。そしてこの三人は仲睦まじく写っている。

 

つまりこれは・・・・・・どういうことなのだろう?

 

写真にあるこの2人と私の関係性はなんなのだろう?

 

そう考えているとある単語が浮かんできた。それは、「家族」だ。その浮かんだ単語がどういう意味なのかは分からない。だけど妙にしっくりきた。

 

そして、この単語が浮かぶくらいなのだから大事なのだろう。覚えておこう。

 

 

 

そういえば、夢に出てきた二人は誰かをベノラと呼んでいたが、もしかしたら私のことなのだろうか?私が見た夢なのだからきっとそうなのだろう。

 

と、思いたいがそれはさすがに時期尚早だろう。

 

とはいえ、この家には私のことが分かるようなものは無いような気もする。

 

なので家の外に出てみようと思う。

 

「自分探しの旅だ!」

 

そう言って私はこの家から出たのだった。

 

 

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