インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~ 作:夏梅ゆゆゆ
────綺麗………
それが、自分の纏っていた機体を見た、エメラダの第一印象だった。
「へぇ……随分と、美しいフォルムだね」
「あ、部長!来られたんですね!?」
「え?うん、今来たとk「どうでもいいんでこっち早く手伝ってください!まだメンテ終わってないんですよ!」………えぇー」
エメラダがぼーっと機体を見ていると、二コラは研究員の一人に呼び出された。
「はぁ……ごめんね?エメラダ、機体……クレスケンスに乗ってくれるかい?」
「うん?わかった」
そう言うと、エメラダはクレスケンスに触れる………その瞬間、あの時───以前に起動した時に感じたような全能感が湧いてくる。
「これは─────」
───世界が、はっきりと見える。
常人よりも優れた視力を持つ、遺伝子強化試験体たるエメラダであったが、ここまでクリアなのは初めてだった。
『───あーテステス、聞こえるかい?』
「っ!………二コラさん?」
『うん、良かった。オープン・チャネルは普通に繋がるみたいだね』
「オープン・チャネル?」
『あーっと、オープン・チャネルっていうのは……ISにはコア同士の相互間ネットワークがあるのは知ってるかい?』
「うん、一応は」
『うん、それでね?そのネットワーク回線を利用することでISを通した通信ができるようになるんだ』
「それがオープン・チャネル?」
『そうだね。因みに、通信法には周りにも聞こえるオープンと通信している同士にしか聞こえないプライベートがあるんだけど………まあ、それは一度置いといて』
ニコラは一度言葉を切ると、改まって再び喋りはじめる。
『───これから、エメラダにはクレスケンスのテストをして貰いたいんだ』
「テスト?」
『うん………最初はこっちのスタッフがテストをしようと動かそうとしたんだけどね?残念ながら、初期化と最適化が既にされている───つまり、君専用の機体になっちゃったから出来なかったんだ』
「………………」
エメラダは以前起動した時を思い出す………確か、あの時『最適化完了』などとシステム音声が聞こえてきた気がする。その時にでも為されたのだろう。
『とにかく、分かっているとは思うけど……君の機体は色々イレギュラーだからね。たくさんテスト項目があるんだ。解説はするから、頑張ってこなしていってくれ』
「…………分かった」
そうして、エメラダは説明を受けながらもISのテストを淡々とこなしていくのであった…………
▼
『────よし、基本的なシステムは確認できたかな』
「…………ふぅ」
『疲れたかい?休憩しようか?』
「ううん………大丈夫、次……行く」
───テスト開始から二時間後。
ようやく、基礎システムの確認が終わったところであった。しかし、エメラダは更なる続行を願う。
「(早く終わらせないと………………………………イチカの、ほかほかの夕飯が食べれない………!)」
………その理由は、ただの食い意地だったようだ。
『そうかい?………まぁ、今日予定してたのは後、武装辺りのチェックだけらしいから、もうひと踏ん張り頑張ろうか!』
「……頑張る」
『それじゃあ、一つずつ使える武装を確認していくよ』
「分かった」
エメラダはクレスケンスを宙に浮かべ、戦闘機動をとる。
『まず一つ目………これは、頭部の翼だね』
「…………翼?」
『うん、正式名称は【エアッド】っていうらしいね………その翼はナノマシンで構成されていて、ある程度、思考で形状や機動を自由に動かせるみたいだね』
エメラダは取りあえず、自分がナノマシンで体を変化させる感覚を思い出しながら試してみる…………すると、かなりの速度で翼がクレスケンスから分離、立体機動を始めた。
『これは………凄いね。イギリスでビット兵器が開発中らしいけど………比べるのもおこがましい出来だよ』
唯一、射撃ができないのは難点だが………と、ニコラは加えて思うものの、この速度があるならばただの質量攻撃としても十分かと、考えを改める。
心なしかワクワクしながらニコラは次を促す。
『じゃ、次行ってみようか。えっと………あっ、でもこれで最後なのか………』
そこまで言って、肩を落としかけるが………まぁ、初期武装なんてこんなものだろう、と思い直す。
『えー………【エーテル機関】?システム名みたいだけど、どうかな?』
「ちょっと待って…………」
エメラダはクレスケンスに思考を送ると、『エーテル機関、駆動』というポップアップが視界に映るのを確認する。
「よし………いけるよ」
『うん、それじゃあ今度は的を用意するから、実践的に試してみようか』
そう二コラが言うと、場内に幾つかのダミーターゲットが現れる。
「エーテル機関、駆動………【リグ・ダーム】!」
丁度、目の前を通り過ぎるときに以前も放った雷撃を放つ………弾速はかなり速いようで、見事に的に的中した。
そして、今撃って、一つ気になったことがあった。
「威力が………低い………?」
そう、以前に放ったときよりも格段に威力が落ちていたのだ………これでは、ISを大破させるどころか、シールドバリアーを数発撃ってぶち破る程度しか出来なさそうだ。
『あ、伝えるのを忘れていたけどクレスケンスにはリミッターをかけてあるからね?』
「リミッター?」
『そうそう……データにあるような威力を出されると色々と問題があってね?それに、そのエーテル機関はどうやらシールドエネルギーを消費してほかの現象を起こすための装置らしい………本来の威力、それもフルパワーで撃ってしまうと、絶対防御を維持できるギリギリまでエネルギーを削らなくちゃいけないみたいだね…………因みに、これが以前起動した際、最終的にISが自動解除された最大の要因らしい』
「分かった………とにかく、全部試してみる」
そう言って、エメラダは火球を爆裂させる【エラ・ゴルド】、キューブ上の岩石を生み出し叩き潰す【ルド・フィスト】、水流で吹き飛ばす【レイ・アイオム】を、自分と同じでナノマシンが使われたISに慣れてきたこともあってか、全て的に的中させるとそのまま地面に降り立った。
『取りあえず、お疲れ様………エメラダの筋も良かったし、これは後のテストも楽になるかもね』
「………そう、かな」
『うんうん、わが社の専属パイロットとして、将来が有望だとうれしいね…………兎に角、これで今日のテストは終了だから家まで送るよ』
「そう?………ありがとう、流石に、疲れた……」
────そんなこんなで、エメラダの、シェバト専属パイロットとしての一日目の仕事が終わったのであった。
設定メモ書き
・クレスケンス
原作では、とある科学者がエアッドというファン〇ル的兵器の実験機をエメラダ専用に作り替えた機体。頭に翠色の翼の生えた、美しいフォルムの機体である。
無論、本来の大きさは巨大ロボットと呼んで差支えない大きさ。
本作では、全身装甲のISとして、エメラダの専用機となる。
どういった経緯で急に現れたのか、どうしてそんな高性能なのか、ほとんどが謎に包まれた機体。
取りあえずは、シェバト社の実験機とすることで対外的には通している模様。
なお、原作では腕がないが、本作ではちゃんと腕部分の装甲もある。
※3/21、題名変更