インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~ 作:夏梅ゆゆゆ
ドイツ軍練兵場の端、そこにある休憩所で一夏は今、倒れこむように寝転がった。
「───っぷっはぁぁ!つっかれたぁぁぁ!!」
「軟弱者が。それくらいで根を上げるようでは先が思いやられるぞ」
「…………相変わらずお厳しい」
そして、そばに居た千冬は近くの自動販売機に向かい、一夏にスポーツドリンクを放ってくる。
「っと、サンキュ」
「いいから飲め。後十分もしたら再開するからな」
「…………本当にお厳しい」
一夏はスポーツドリンクに口をつける。
「……にしても、よくこんな所使えたよなぁ」
「……何がだ?」
「いや、こんな広い所を俺一人の特訓に使うのってよく許可されたなって思ってさ」
「……一応私は軍から頼まれてきている形になる……それのお陰でもあるのだろうな」
「なるほど、流石はモンド・グロッソ二連覇のIS乗りってわけか」
「待て……お前、知らないのか?」
「知らないって、何を?」
千冬はため息をつくと、額に手を当てつつも一夏に再び口を開く。
「この前の大会……私は優勝を放棄している」
「……………は?」
「……多少はニュースぐらい見ろ。どこもかしこも煩い位に騒いでいたぞ?」
「いや、色々忙しくて……じゃなくて!千冬姉、なんで優勝放棄なんて……」
額の手を外すと、千冬は若干きまりが悪そうに目をそらす。
「…………まぁ、なんだ……家族の犠牲で得た栄光など何の価値もないから、な」
「……………千冬、姉」
その姉の姿に一夏は少しの間言葉を発せなくなった。
それほどまでに自分たちは思われている───その事実がひどく心を震わせた。
「………ええい、休憩終わりだ!さっさと続きを始めるぞ!!」
「────おっしゃ、来い!やってやるぜ!!」
そう言って、一夏が立ち上がった瞬間────休憩所の扉が勢いよく開いた。
「────教官っ!このような所に居られましたか!」
「………だ、誰だ!?」
部屋に突っ込んできたのは少女……それも、銀髪に眼帯と言う風変わりな容貌の少女だった。
「む……ラウラか」
「はい!教官、今日の訓練ですがこれで終わりなのでしょうか?」
「ああ、そのつもりでハルフォーフ大尉には言伝を頼んだが……」
「申し訳ありません、もう少し、もう少しだけ続きをお願いできませんか!?」
そう、この銀髪の少女……ラウラは誰もが皆嫌がるような織斑式訓練をもっと受けたくてここに来たのだ。
というのも、この少女……元は出来損ないとまで蔑まれていたのだ。
ISが出来てからというもの、普通の戦闘では優秀だった彼女もISという違う土俵の上では最底辺の力しか出せなかったのである。
しかし、千冬が来てからは違った。
千冬の的確な指導はドイツ軍所属IS操縦者の伸びしろをぐんぐんと伸ばしている……が、その中でもラウラは断トツだった。
元々のポテンシャルは高かったのだろう。千冬という良き指導者を得てからは、この一ヶ月……破竹の勢いで実力を伸ばしていた。
その勢いに、今まで彼女を見下していた者たちは悉く驚愕の表情を見せた。
────もっと、もっと奴らを見返したい。
そんなラウラは少しでも強くなるために訓練時間外の千冬の元へ足を向けたのである。
「……駄目だ、今日は休め」
「な、何故ですか!?」
「空回りして怪我をするのが目に見えている。自分の体調管理も訓練の内だ」
「くっ………しかし………」
「……それに、今はこいつを扱くので忙しい」
「そいつは……?」
そこまで来て、やっとラウラは横の一夏に気を向けたようであった。
「……初対面でそいつとはいい挨拶だな」
「そうか………お前が………!」
「少しは人の話を聞け……って、おわ!」
一夏が少しむっとして言い返すと、ラウラは親の仇を見るかのような目つきになり、一夏にビンタを放つ……が、一夏は寸でのところでそれを避けた。
「き、急に何すんだよ!」
「……認めない」
「は?……なんだって?」
「────絶対にお前なんか認めないっ!!」
そう言うや否や、ラウラは元の扉から勢いよく退出していった。
「………一体、何だっていうんだよ」
「私が知るか。大方、また何かやらかしたんだろう」
「またってなんだよまたって……ちょ、引っ張るなよ!」
「今ので時間を無駄にした……さっさと訓練だ、行くぞ」
「分かったから!だから、襟を掴むのは止めぇぇ!!」
そうして、二人は練兵場に戻る……のだが、さっきのことで煩悶していた一夏が千冬の剛剣を受け止め続けられるわけもなく、終了時間の夕方になるまで無様に転がりまわっていたという………
更新速度の低下を予告……どいつもこいつも閃の軌跡って奴が悪いんだ!!