インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~ 作:夏梅ゆゆゆ
具体的には南の方へフラーイハーイ!するものでして……PCで書けないのはつらいですなぁ。
エターナることはほぼ確実にないと思うので、これからもよろしくお願いいたしまする。
「───着いたよ、ここがドイツ軍の基地……千冬ちゃんと一夏君が今いる場所だね」
「………おお」
そんな風に、エメラダが連れてこられたのはドイツ軍の基地の一つ……千冬が勤めている基地でもある場所だった。
エメラダは初めて見ることになる『軍』というものにしばらくの間、目を奪われた。
それほどまでに重厚であり、鉄臭さというものが直に伝わってくる……そんな印象を抱いたからである。
「……よし、手続き完了。じゃ、いくよ?」
「ん……分かった」
そんなエメラダをよそに、彼女を連れてきた二コラはずんずんと目的地に向けて進んでいく。
エメラダも基地内をきょろきょろと見回しながら彼を追いかけ続け……しばらく歩くと開けた場所に出た。
「おっ、やってるやってる」
「あ……」
そこでエメラダの目に飛び込んできたのは……一夏と千冬が激しく切り結んでいる光景だった。
二人の動きは傍から見ていても熾烈なものであり、一夏が千冬に空いた時間を使って教えを受けていることを知らされていたエメラダであっても驚愕せしめるものであった。
「ひゃーすごいなぁ。どっちも負けないぐらい速いねぇ……」
「……違う」
そう、ニコラにはわからないようであったが、戦闘に関して特化しているエメラダにははっきりと分かった………明らかなる一夏の不利をだ。
「(イチカも十分に速い……けど、千冬はそれ以上に……)」
それに加えて、剣に関してはそこまで詳しくはないエメラダだが、そんな彼女にもわかるくらいに両者の腕の差は歴然だった。
そう考えた瞬間、一夏が勝負を焦ったか、先ほどまでの膠着を破って鋭い刺突を放つ。
「くっ……はぁぁぁ!!」
「───甘いっ!!!」
しかし、千冬はその行動を読んでいたかのように体を数センチずらして回避、すぐさま隙だらけな一夏の剣を撥ね上げて……勝敗は決した。
「ふぅ………まだまだだな、一夏」
「くっ……はぁ、はぁ……っ千冬姉が、強すぎん……だってっ……」
「当たり前だ。お前のような未熟者にまだまだ負けるわけにはいかんからな………まぁ、でも、うん……少しくらいは腕を上げたんじゃないか?」
「……はは………千冬姉に言われると、嬉しさも一入っていうかなんて言うか……」
「………阿呆が、その程度で調子に乗るなよ。腕を上げたといってもまだまだ……ひよっこに毛の生えた程度だということを自覚しておけ」
「おう……いつか一人前になって一本取ってやるから覚悟しとけ……」
「ふっ……本当に分かっているのか?まったく、仕方のない愚弟だな」
「ったく……ひっでぇなぁ……」
「───おーい、千冬ちゃーん!」
千冬が勝負の後に倒れ伏した一夏と言葉を交わしていると、千冬が聞き覚えのある声……二コラの声が呼びかけてきた。
「………二コラさん、千冬ちゃんは止めてくださいと何度も………」
「あれ、そうだったっけ?まあいいや、そんなことよりも予定してたものを届けに来たよ」
「……………もういいです。それで、例のものは?」
「うん、今はそっちのピット内に輸送中。片方はもう着いてると思うけど……テスターは決まったのかい?」
「ええ、もう既に。輸送が終わり次第すぐにでも………」
「……チフユ?」
「……ん?エメラダ……どうしてここに?」
「え、エメラダっ!?」
ニコラと話していた千冬だったが、エメラダの存在に気付くと怪訝そうに眉を顰める……ついでに一夏も驚愕で跳ね起きる。
「ああ、彼女は今日のテストの相手役だよ。今日は他に実力のありそうなテストパイロットが娘も含めて出払ってしまう予定でね?その点、彼女だったら大事にはならないと判断して連れてきたんだ」
「まあ……そういうことでしたら……」
「……っと、輸送が終わったみたいだ。エメラダ、君はピットに行ってクレスケンスでいつでも出れるようにしておいてくれるかい?」
「ん、了解……じゃあイチカとチフユ、また後でね」
「えっ?ああ、おう……なんだか分からないが、行ってこい!」
「ん、任せて」
そう言い残してエメラダはピットに向かっていった。
▼
エメラダがピットに入るとそこには多くの人々が慌ただしく動いていた。
そんな中でエメラダは言われた通りにコンソールを出現させてクレスケンスの調整───といってもまだ基礎的な部分しか出来ないが───を開始させる。
そうして数分ほどたった頃、不意に彼女へ声をかける人物がいた。
「……………お前、は」
「……?」
エメラダが反応して顔をコンソールから上げると、そこには銀髪でエメラダとはそう変わらないくらいの少女が茫然自失といった様子で立っていた。
「んっ……と…………!?」
その少女に声をかけようとする……その瞬間、今ではそこまで起こらなくなっていた記憶のインストール……目覚めた時や発戦闘時に起こったそれが発現した。
「…………お前は、私と……いや、
エメラダの中に新しく植え付けられた記憶……そこには目の前に立つ彼女のことも記されていた。
「……遺伝子強化試験体C-〇〇三七」
「っ!!お前っ!!!」
「………ごめん」
しばし、気まずい沈黙が二人の間に流れる。しかし、銀髪の少女……ラウラはその沈黙を破って再度問いかける。
「お前は、何者だ?お前のような個体は私の記憶の中には存在していない……」
───ただ、自分と同じ
言外にそう伝えるラウラは警戒心をあらわにエメラダを睨みつける。
「あたしは、あなたと同じカテゴリーだけどテーマは違う……まったく別の研究で生まれた」
「だから……というわけか。道理で見覚えが無い……」
「…………それと」
「…………?」
「あたしは『お前』なんて名前じゃないよ。あたしはエメラダ……あなたは?」
「…………は?」
しばらくその言葉に面食らったラウラであったが、すぐにエメラダを再度睨みつける。
「……名前など、どうだっていい。所詮私たちは兵士で、兵器だ……………………………お前が私の相手なんだろう?さっさとISを展開して待機していろ」
それだけ言って、エメラダの前から立ち去る。しかし、その後ろ姿にエメラダは言葉を投げかける。
「違うよ」
「………何?」
振り替えるラウラ。そして、目に入ったエメラダには明確な意思……先ほどの言葉に対しての反発の意思がその目に宿っていた。
「……さっき、あなたはあたしたちが同じだと言った。でも、それは違うんだね」
「どういう、ことだ……?」
「あなたは自分を兵器だと……モノであると言った。でも………」
「お前は……違うとでも言うのかっ……?違うわけないだろうっ!お前も、私も、力を示すしか能のない……!!」
「───あたしは、モノじゃない」
「───っ!?」
ラウラはたじろいだ。エメラダの言葉に……そして、その瞳に宿る意志の強さに。
「あたしは、あたしには『兵器として』じゃない生き方を望んでくれる人がいる」
「チフユにニコラ、マリアやリン……ダンもカズマもランもあたしのことを家族、仲間、友達だって言ってくれた」
「そして……なにより、イチカはあたしの存在……その本当の意味を知ってもモノじゃないって、大切な家族だって言ってくれたんだ」
「だから、あたしは自分を……兵器でもモノでも無い『ヒト』だって自信を持って言えるよ」
「あなたは……自分をモノだと思うの?本当に?あなたにもモノじゃないって言ってくれる人が……!」
「───うるさいっ!!!!」
ラウラは再度視線を外し、足を進める。
「………そんなものは、幻想だ。私には必要の無い……ただの、甘えだ………」
足早に去っていくラウラ。そして、エメラダはその後ろ姿を見つめ続ける………先ほどの意思のこもった目とは違う、どこか悲しみをたたえた瞳で………
『テスト機のスタンバイを開始。模擬戦の開始はこれより一時間後です。スタッフはピット18区画に集合してください。繰り返します……』
基地のピット内にアナウンスが響き渡る……エメラダは先ほどの調整作業に戻っていった。
────対決の時は近い。
因みに書き忘れていたかもしれないが、クレスケンスの待機状態は最初のペンダントにちょっとした意匠が加わったものだったり。