インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~ 作:夏梅ゆゆゆ
毎度思うけど戦闘描写がとても難しい……
───開始を告げるアラームが近づく。
『試合開始まで、10、9、8……』
こんな所で立ち止まってなどいられないのだ。
だったら───どんな敵であろうと、全力で叩き潰すだけ……
『……2、1、試合開始!』
「ラウラ・ボーデヴィッヒ、これより『シュヴァルツェア・レーゲン』の運用テストを開始する……!」
……そう、この新しく手に入れた──教官からいただいた
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試合開始のアラームが鳴り、両者がアリーナへ射出される。
エメラダは見学席の方で不安げな顔をした一夏と、いつもよりも少しむっつり度が増した千冬を苦笑しつつ一瞥し───目の前に浮かぶ『黒』へと目線を戻した。
「それが、新型?」
「……ああ。だがそんなことはどうでもいい」
「……あなたはもっと落ち着いたほうがいいよ。周りが見えなくなる」
「うるさい! 私は証明するんだ……私が、私であるために……!」
「……言っても無駄。だったら───」
エメラダはそう言うや否や、エアッドを射出。それに呼応するかのようにラウラも大型レール
「───痛い目を見て、覚えてもらう!」
「……証明、するっ!!」
瞬間、ラウラのレールカノンがエメラダに向かって殺到する。しかし、エメラダのスピードを捉えるには至らずに接近を許してしまう。
「先ずは、一撃……!」
エメラダが無防備なラウラの胴体部へトルネードハンドで強化された一撃を与えようとする……その瞬間、エメラダの動きが止まった。
「な……!?」
「───墜ちろ!!」
「────ッ!!!」
その隙を見逃すラウラではない。すぐさまエメラダに向けて両肩と腰部左右に取り付けられた計六つのワイヤーブレードでエメラダを叩き落した。
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「───エメラダっ!?」
戦闘の光景を見て一夏が声を上げる。それは心配の部分も強かったが、何よりも先ほどの不可解な現象への不信感があった。
「千冬姉、さっきのって……」
「AIC……アクティブ・イナーシャル・キャンセラー、つまりは慣性停止能力……ラウラの機体、シュヴァルツェア・レーゲンの第三世代型兵器だ」
「慣性を……停止?」
「ああ、要は認識したものの動きをとどめることが出来る。先ほどもあれを使用した結果だろうな」
「へぇ……って、そんなのどう勝てばいいんだよ? 相手の動きを止められるんだったらそんなの……」
「まぁ、まず負けないだろう……お前の考えてる通りの能力ならな」
「……どういうことだ?」
「それくらい自分で考えろ。これも修行の一環だ───」
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「───貴様には、この停止結界を破ることなど出来ない」
地面に叩きつけられたエメラダを悠然と見下ろすラウラ。その様子を見ると動揺から覚めて本来の気質を取り戻しつつあるようだが、そんなことを気にしている場合でも無い。
「攻撃が止まった……それならっ!」
エメラダはエアッドを操作し、二方向からの挟撃を開始する……が、ワイヤーブレードとプラズマでコーティングされた手刀も合わせた結果、巧みにはじき返されてしまう。
「ハッ! そんな小細工が効くとでも───」
「……はぁぁぁぁぁ!!!」
「───何!?」
二つの踊るように襲い掛かるエアッド……それの対処に気を取られていたラウラは一瞬、気づくのが遅れた……エメラダが光を纏って突進してくることに、である。
レイカウント……そう呼ばれるその武装による突進は激しい勢いでラウラの機体へと吸い込まれていき……衝突の寸前、停止した。
「はぁはぁ……惜しかったな? だが貴様の浅知恵など……がっ!?」
AICでレイカウントによる突進を寸でのところで止め、先ほどのようにエメラダを攻撃しようとする……その瞬間、後ろから飛来した二つの物体がラウラの背を切り付けた……エメラダのエアッドである。
そして、その衝撃でラウラがエメラダから注意を外したその時、エメラダを縛めていた体の硬直が消える。
「……だから言ったでしょ? 周りが見えなくなるって!!」
「くっ……がぁぁぁ!?」
即座にエメラダはエーテル機関によって岩石を形成……ルド・フィストによってラウラをアリーナの端まで吹き飛ばした。
「これで、イーブン」
「くそ……なめるなぁぁぁ!!!!」
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エメラダの攻撃は最初の一撃さえ完全に防がれたものの、そこからは何発かずつ当たるようになってきていた。
その光景を見続け……やがて、一夏は一つの答えを思いついた。
「もしかして……一度に複数のものを止められないのか?」
「ふん……まぁ、妥協点だな。さらに言うなら使用者の意識を集中させんとすぐに解け、一定の距離のものしか捉えられず、乱発はできん……優秀な効果を持つ反面、弱点も多いというわけだ」
「へぇ……にしても、少し動きが鈍くないか?」
「……エメラダが速いという点もあるのだろうが、ボーデヴィッヒが機体に不慣れなのが大きいのだろう。第三世代なぞ演習でも扱ったことが無いのに、第三世代型兵器を初見で完全に扱いこなせるわけもあるまい」
そう言っている間にも試合は進む。お互いの力量に未だそれほどの開きが無いのか戦況は拮抗し続けていたが、次第にお互いの挙動が読まれ始めると機体への不慣れが顕著に表れ始める。
相手の動きを読みながら動くエメラダのスピードがラウラを圧倒し始めているのだ。
「……決着は近いかもしれんな」
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『機体損傷・大、シールドエネルギー残量・106』
「っ……くそ、何故だ……」
「───まだまだ! 行けっ、エアッド!!」
「あ、ぐっ……!!」
ラウラは追いつめられていた。
新しく力を手に入れたはずだった。技術も、機体も……しかし、通用しなかった。
「(こんな所で負けるのか……? あんな、自らの存在理由を見失ったようなやつに……)」
自分と同じ存在でありながら周りから愛され、『ヒト』として生きることを願う少女……彼女に負けてしまえば、自らのこれまでがすべて否定される……そんな気がしていたのだ。
「(嫌だ……負けたくない……もっと、私に力があれば……!?)」
──その時だ。
ラウラは自らの奥から響いてくる声を感じ取った。
『──願うか……? 汝、自らの変革を望むか……? より強い力を欲するか……?』
「ああ、言うまでもない………力があるのなら、それを得られるのなら、私など──空っぽの私など、何から何までくれてやる!」
Damege Level……D.
Mind Condition……Uplift.
Certification……Clear.
《Valkyrie Trace System》…………boot.
──その時、禁断のシステムが……鼓動を始めた。
追記、今月中と来月初めは更新が難しくなります。