インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~   作:夏梅ゆゆゆ

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遅れて大変申し訳ありませんでしたァァァァ!!!!


証明 自分が自分であるために 後編

「…………? もう終わり?」

 

エメラダは急に動きを止めたラウラを不審がる……そしてその瞬間、ラウラから……いや、シュヴァルツェア・レーゲンから何か黒いモノが溢れ出し、彼女を飲み込んだ(・・・・・)のだ。

 

「────ッ!? 何、これ……!」

 

そうして、ラウラを包み込んだソレ(・・)は黒い人型をとる。はた目には何を象ったのかすらわからなかっただろう。だが、エメラダには理解できた……出来てしまったのだ。

 

「チ、フユ…………?」

 

見た目はまるで違う。ただ、その佇まいが、構えが、纏う雰囲気が織斑千冬と全く同一であったのだ(・・・・・・・・・・)

 

「…………っ」

 

今回は人間離れしたエメラダの身体能力の一端、感覚の鋭さが生んだ弊害であったのだろう。限りなく同一であったが故に動揺を生み、そして…………致命的な隙を見せた。

 

『──────!!』

「──────あがっ!?」

 

隙を見せたエメラダにラウラだったモノは手に刀を持って肉薄、そのまま───斬り付けた。

衝撃で吹き飛ばされるエメラダ。そして、ソレはその姿を無機質な瞳で見つめ続けていた…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だよ、これはっ……!!」

 

その急激な展開に試合を観戦していた者たちも動揺を隠せなかった。

中でも、一夏は誰よりも動揺し、激昂していた。

 

「あれは…………千冬姉のっ…………!!」

 

彼の最愛の姉…………彼女の剣を受け続けていた一夏には一目でわかってしまった。あの黒いモノが使っている剣や動き、それらのものは全て織斑千冬のものであったのだ。

しかし、一夏が真に激高している理由……それはただ模倣しているから、と言うわけではない。何より、彼女の剣……それが家族(・・)を無意味に痛めつけるために、殺意をもって振るわれる…………そのことが気に入らなかった。

 

「…………っ!!」

「っ!! 一夏っ!?」

 

怒りのままに駆け出す一夏。正気に戻った千冬も止めようとするが、それを振り切って試合場に続くピットの方へ消えて行ってしまった。

 

「……くっ、緊急事態だ!! 至急本部へ連絡を……!!」

 

弟の安全に気を取られかけるも、ぎりぎりで踏みとどまった千冬はこの事態を早急に解決することを選択する。

 

「(エメラダ、一夏……無事でいてくれ………!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千冬を振り切った一夏はピット内を試合場に向けて駆け抜けていた。

しかし、時間がたって冷静になった頭の中で疑問が生まれる。

 

「俺に……何かできるのか………?」

 

少し剣術が出来るだけのただの中学生……そう自己認識する一夏はその巨大すぎる難問に頭を侵食されていくのを感じた。

疑問はやがて思考を蝕み、そして……駆け続けた足さえ止めてしまった。

 

「俺は……お、れは…………」

 

───無力だ。

そう、無力だった。それを理解もした。

ただ…………一夏の瞳は再び前を見据えた。

 

「(力が無い……? だからどうした……)」

 

確かに一夏には現状を理解する冷静な思考があった。

 

「(何もできない……? それが、どうしたっ……!)」

 

だが……………………彼はどうにも、諦めが悪かった。

 

「────そんなことで、止まってられるかよっ!!!」

 

───その瞬間、一夏のすぐ傍、そこにあったコンテナが光を放ち始めた。

 

「──っ、何だ!?」

 

いや、光を放っているのはコンテナではない。その中から光が漏れ出していた。

そうして、一夏の動揺をよそにコンテナはひとりでに開いていく。

 

「こ、れは………?」

 

コンテナの中…………………そこには、『白』がいた。

細身にも見えるそのフォルム、見たところ全身装甲と思われるそれはいたるところが真っ白だったのだ。

一夏は、何かに導かれるかのようにその機体に手を伸ばし…………光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……くっ…………」

 

エメラダのシールドエネルギーは底を尽きかけていた……というのも、単純に変化したラウラが強い(・・)のだ。

近寄って、斬る。ただそれだけなのに、相手に追随を許さない……そのあり方はかのブリュンヒルデと全く同じだった。

そして、遂にはエメラダへ止めと言わんばかりにその剣を振りかざし、そのまま────振り下ろせなかった。

 

『────!?』

「え…………?」

 

その剣を受け止めたのは────『白』。

全身装甲で覆われたその白き鎧は、自身の剣で剣を弾きあげるとエメラダを庇うかのような位置────丁度、ラウラとの対角線上に立ち、その剣を構えた。

 

「イチ……カ…………?」

 

エメラダがそう思ったのはただの勘だった。先ほどの推測とはまるで違う、何の根拠もない当てずっぽう…………しかし、『白』はその言葉を受け入れた。

 

「────待ってろ。今度は俺が助ける番だ」

 

その言葉を皮切りに、『白』……いや、一夏とラウラは彼我の距離を一気に零にする。

 

『──────!!!』

「はぁぁぁぁぁ!!!!」

 

袈裟懸けに、上段から、下段から、縦横無尽に一夏はその剣を振るう。しかし、ラウラもその悉くを弾き、受け流し、そして反撃し続ける。

いつまでも続くかに思われた剣戟……しかし、突如それは終わりを告げる。

 

「────」

「なっ……!?」

 

渾身の力を込めた一撃……ただ、それは誘導された一撃であった。

一撃を受け流され体勢を崩す一夏、そこに容赦なく強烈な蹴りが突き刺さる。

 

「がっ────!!」

「───!!!!」

 

後ろへ仰け反る一夏に追撃を加えようとするラウラ。一夏はそれに対応できる策を模索するが………

 

「(───くそっ、やっぱりダメか!!)」

 

───NO WEAPON───

 

その表示が示す通り、この機体に内蔵されていた武装は今この手に持っている名称不明の剣ただ一つのみ。この状況を打開する手立てはないに等しかった。

 

「だけど…………」

「────!?!?」

「…………そう簡単に諦められるはず、ないよなっ!!」

 

追撃にきたラウラをAICを使って機体を制御し、無理やりに蹴とばす。

再び距離の離れた両者。その緊迫の中で一夏は眼を閉じる。

 

「ずっと、守りたかった」

 

──あの時、守られたから。

 

「やっと、守れるようになった」

 

──例え借り物の力だとしても。

 

「だから、今だけは────」

 

─────力を貸してくれ、『ヴェルトール』!!!!!!

 

 

 

───フォーマットとフィッティングが完了しました。これより一次移行(ファーストシフト)を開始します───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エメラダはぼやける意識の中でただ鮮烈に映る『白』に心を奪われていた。

そして、その『白』は戦いの中、誓いと共に『真白』へと進化する。

 

「イチカ…………」

 

エメラダが守った、初めて守りたいと思った家族(・・)。そして、今自分を守ってくれている家族(・・)

自然と涙がこぼれていた。

ラウラ───自分と同じ存在だという彼女から言われた言葉。その全てを否定する彼の行動は、ひたすらにエメラダの心を打ち震えさせた。

不安じゃなかった、言葉が気にならなかったと言えば嘘になる……ラウラの存在はもしかしたらあったかも知れない自分のIFだから。

だけど、彼はその不安を斬り裂いた。

暖かな思いに包まれる心に宿った小さな不安の種、それを完膚なきまでに、颯爽と消し去ったのだ。

 

「イチカ────」

 

────ありがとう。

数度目になる彼女の心からの感謝を受けると同時、『真白』が『黒』を─────斬り裂いた。

 




『ヴェルトール』のことについては次回。
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