インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~   作:夏梅ゆゆゆ

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ヴェルトールについては次回と言ったな、あれは(ry

すみません、説明まで進みませんでした。

それはともかく、今回より原作開始……長く苦しい戦いだった……


Disc 1
数年後 おいでませ女の園


『ここ、は……?』

 

一夏がラウラを……いや、ラウラに纏わりついていたモノを斬り裂いた刹那、気が付くと一夏はどこかも分からない空間に居た。

ただ、不思議と困惑や恐怖といった感情は浮かんでこない……そんなことを考えていると、いつの間にか目の前に少女が立っていた……先程、自身と死闘を繰り広げた少女が、である。

 

『……お前は、どうしてそこまで強い』

『……強い?』

『そうだ』

 

少女から問いかけられる一夏。ただ、一夏はその問いの真意を理解できなかった。

 

『強いも何も、俺は運よくISを使えただけで……』

『だったら何故そうした?』

 

一夏はふと少女の顔を見る……それはどこか、迷子のように見えた。

 

『お前には力が無かったというのか? それならば、なぜあの場所へ来た?』

『それは……』

『答えろ……!』

 

どこか鬼気迫る表情の少女……彼女と対照的に冷静な一夏は静かに答えを導き始める。

 

『守りたかったから、かな』

『…………』

『……前に守ってもらったんだ』

 

一夏はあの日のことを脳裏に思い浮かべる……翠髪の少女が無残に傷ついたあの日を。

 

『情けなかった』

『何故だ? 奴は……』

『そうだ、俺よりもずっと強い……戦うために作られた存在、だろ?』

『それが分かっているのに……』

『分かってしまったからこそ、真にその意味を目の前で思い知らされたからこそ…………恐怖した』

『それが自然だろう? 恐怖されない兵器など、意味が無い』

『違う、あいつは……あいつに俺は言ったんだ』

 

彼女は兵器……モノなんかじゃなく、ヒト(・・)であるということを。

 

『笑えるだろ? 俺は自分の言葉を一瞬とはいえ、破っちまった』

『…………』

『──だから、今度こそ誓った。 自分自身に、死ぬまで消えない……いや、死んでも消えさせない誓いを』

『…………!』

『ガキのちっぽけな誓いだよ。でも、俺にとっては死ぬことよりも重く感じる……その命すら、あいつのお陰で拾ったものだしな』

 

────ああ、そうか。

少女には自分の負けた理由が分かった気がした。教官である千冬も、同じ存在であったはずのエメラダも、目の前のこの少年も…………自分には真似なんかできない、強い意志(・・)があるのだ。

 

『私は……見たほうが速いか』

『何を…………!?』

 

そう言った瞬間、周りの風景が一変する。

変わった先の風景は……鉄の部屋だった。

 

『私も奴と一緒……いや、奴に失礼だな』

『お前……』

 

一夏は理解した。力への渇望、それは全て彼女の存在として当たり前のことだったのだ。

 

『────だったら、俺が守るよ』

『なっ!? 何を────』

『言っちまえば、お前はあいつの……エメラダの姉妹みたいなもんなんだろ?』

『し、まい?』

『だったら、俺にとっても家族(・・)同然だ……だから、お前が強さを────本当の強さを得るまで、守るさ』

『…………』

『それで、強くなったら今度はお互い背中を守りあうんだ……まあ、俺もエメラダの背中を守るには程遠いんだけどな?』

『…………ぷっ』

『笑うなよ……自覚はあるんだから』

 

少女はふわりと笑う……心にあった淀みが流れ出ていったかのように。

 

『なら、せいぜい守ってくれ……兄さん?』

『上等だ……ラウラ!』

 

そして、二人の体は光に包まれて……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………間もなく、IS学園に到着いたします。お降りの方は───』

 

「……ん、着いたよイチカ」

「…………あ? ああ、分かった」

 

────随分と、懐かしい夢を見ていた気がする。

思えば、あれが自分の気持ちを全部曝け出した、最初で最後の機会だった……そう、一夏は再び回想に耽りそうになるのを止め、窓の外を見やる。

 

「(ここが……IS学園)」

 

IS学園……IS関係の人材を育成するための専門機関。そこで今日から高校生となるところの一夏とエメラダは生活していくわけだが…………

 

「憂鬱だ…………」

 

…………そこが普通の学園ならば良かった。だが、いろんな意味で普通でないのがこの学園だ。

まず、限定的な世界各国の法が意味を成さない地であること……これはISの特徴上しょうがない。

自分とエメラダは強制入学な点……これも、自分たちが特殊な立場にある以上しょうがない。

そして…………

 

「ヒソヒソ……」

「ぼそぼそ……」

「思った……ケメン……」

「男……私の時代が……」

 

「「「「「ざわ……ざわ…………」」」」」

 

「(針のむしろって、こういうことを言うんだなぁ……)」

 

……『ISは女性しか乗れない』これもISの特徴上しょうがないのは分かる。自分がそれを起動させてしまったことが異常だということも。

…………周り、クラス、そして学校中が女だらけ(・・・・)なのはしょうがない、そう、しょうがないことなのだが……

 

「(これは……キツイ)」

 

……耐えられるかどうかは別のお話なのであった。

 

「……イチカ? 入学式の会場に着いたけど……どうしたの?」

 

ふっと、エメラダの声に正気に戻される。

 

「(そういえば……こいつも変わったよなぁ……)」

 

スレンダーながらも均整の取れた体、美しい翠色の髪は磨きを増し、褐色の肌に非常に映える……身長がそこまで伸びなかったのもその可愛らしさを引き上げる要因の一つだろうか……等と現実逃避気味に考える。

 

「(それこそ、人魚みたいな……)」

 

「……チカ、イチカ!」

「おわっ!?」

 

気付くとすぐ目の前にあったエメラダの顔に驚いて仰け反る一夏……さっきまで考えていたことの影響でその驚きの度合いが大きかったのはご愛敬だろう。

 

「入学式、始まっちゃうよ……行こう?」

「お、おう! そうだなっ! さっさと行こうぜ!!」

「…………?」

 

エメラダの手を引いて会場に入る一夏……だが、彼は気付いていなかった。

 

「「「「「……チッ」」」」」

 

……女の園であるが故に、その風景(ラブコメ空間)憎々しい目で見つめる生徒と教師の一部(男日照りな嫉妬に燃える女たち)に…。

 

「…………」

 

…………そして、その中に一つ似て非なる視線があったことも…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員揃ってますねー。それじゃあSHR始めますよー」

 

そんなこんなで入学式をキリキリ痛む胃に悩まされながらも切り抜けた一夏。

教室へと案内された後、こうしてSHRを行っている訳であるが……

 

「(山田……先生?)」

 

そう、いまHRを取り仕切っている女性……一組副担任こと山田真耶教諭へ困惑の視線を投げかけていた。(視線には慣れた)

というのも、山田先生は下手をすれば生徒に間違われるくらい童顔と言うかなんというか……子供っぽいというか。

……まあ、副担任が親しみやすそうなのはいいことか……と、どうでもいいことに納得している一夏に声がかかる。

 

「……くん。織斑一夏くんっ」

「あ、えっと……はい!」

 

いきなり大声を掛けられて返事が遅れてしまったが、ちゃんと同じように大声で返してみる一夏。

 

「あ、あのっ、おっきいお返事ありがとね? でもね、あのね、自己紹介『あ』から始まって今『お』の織斑くんなんだよね。だからね、ご、ゴメンね? 自己紹介してくれるかな? だ、ダメかな?」

「いや、ちゃんとやりますから! 落ち着いてください!」

「ほ、本当? 本当ですか? 本当ですね? や、約束ですよ!」

 

どこか出鼻がくじかれたような印象を受けるが、取りあえず立ち上がって『興味津々』といった色を隠そうともしない面々を見やる……

 

「(……ん?)」

 

……どこか、一瞬既視感を覚えた気がするが、これ以上この小動物じみた先生を待たせるのも悪いと思い、自己紹介を始める。

 

「えーっと、織斑一夏と言います。世間的には名前を伏せられていましたが、ISには中学時代に触れてから乗っている『世界初の男性IS操縦者』です。これからよろしくお願いしま、す」

 

……緊張で最後につっかえてしまったが、こんなもんだろう……そう思って席に着こうとする一夏に山田先生からの思わぬキラーパスをもらう。

 

「え、えーっと……何か織斑くんに質問のある人───」

 

「「「「「───はいっ!!!!」」」」」

 

「ふぇ!?」

 

ははは……と、どこか諦めたように引きつった笑い声をあげる一夏……先ほどから山田先生がこちらに助けを求めるように視線を向けているのがさらに加えて辛い。

……そんな時、ガラッと勢いよく教室の扉が開いた。そこに居たのは───

 

「────げぇ、関羽!?」

「……いや、むしろ呂布並み」

「…………うるさいぞ、馬鹿ども」

 

しれっと加わってるエメラダ───同じクラスであった───とのあんまりな言い草に怒りよりも呆れが勝る関……いや、呂……千冬。

 

「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を任せてすまなかったな」

「い、いえっ。副担任ですから、これくらいはしないと……」

 

そう一言、山田先生へとねぎらいの言葉をかけると千冬は生徒たちに向き直る。

 

「────織斑千冬だ。君たちの担任を務めることになる……一年で君たち新人を使い物にすることが私の仕事だ。容赦なく鍛えるからそのつもりでいろ……以上だ」

 

余りに不愛想な挨拶。ただ、クラスの生徒たち(一部を除く)にはそうではなかったようで……

 

「キャー!! 千冬様、本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです! 屋久島から!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

……このありさまである。

一夏とエメラダも、ドイツから帰国後に千冬がIS学園で教鞭をとっていることは知らされていたが、此処まで人気だとは露にも思わなかったのか、半ば茫然としている。

 

「……毎年毎年、何故こんなに私のクラスに馬鹿者が集まる? なんだ? むしろ私のクラスに敢えて集中させているのか?」

 

「流石です、お姉様!」

「きゃあああああっ! お姉様! もっと叱って! 罵って!」

「踏んで! 縛って叩いてぇ!」

「蹴って焦らして吊るしてぇぇぇぇ!!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾をして~!」

 

「……はぁぁぁぁぁぁ」

「えっと、その、頑張ってください! 織斑先生!」

 

────何だこのカオス。

一夏は引きつった顔を解す努力をしつつもこの惨状に苦笑いを浮かべる。

 

「……それより、だ。織斑への質問は後にしろ……休み時間にでも聞け」

「ちょっ……!? 千冬姉───」

「織斑先生と呼べ、馬鹿者筆頭」

「───あだぁっ!?」

 

そう、勢いのついたチョップを浴びせられる一夏。そして、そのやり取りを見て、またもや周りがざわめきだす。

 

「……織斑って、やっぱり……」

「千冬様の、弟……!!」

「なんてっ、羨ましいっ!!!」

「流石はお姉様です!」

 

「───喧しいぞ。さっさと授業を始める……返事は聞かん」

 

そう言いつつうんざりした顔で授業を始めようとする千冬。流石に慌てたのか、クラス全員が一斉に授業へと意識を向ける中……

 

「…………」

 

ただ、ひたすらに一夏へと複雑な視線を向けるものが一人、居た……

 

 

 




千冬「そこ、授業に集中しろ」(チョークを投げつつ)

???「…………っ、───っ!?」(悶絶)
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