インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~ 作:夏梅ゆゆゆ
IS───正式名称、インフィニット・ストラトス。
その専門学校と言っていい立ち位置にあるのがIS学園である。
そして、ここで一つ考えてみよう……ISに関するイレギュラーで、尚且つそれを引き起こしたのが未成年者の場合どうなるだろうか。
その答えが一夏……そしてエメラダである。
一夏は言わずもがな、世界初の男性IS操縦者として世界中の関心を惹かざるを得ない。例え、本人がそのことを隠そうとしてもまず無理……国の力を借りたとしても数年が限界だろう。
よって、中学時代にIS適性が分かってしまった彼はどういう扱いを受けるか……その行く先は管理である。
だが、彼の背後には無視のできない存在がいた。
『世界最強』と『天災』……このネームバリューが一夏の扱いを左右したのである。
徹底的な管理は二人の不興を買い、かといって放置など到底できない……その結果、決まった処遇がIS学園への強制入学。
IS学園は、多くのISやISの国家代表候補者等、機密事項が群れを成しているような場所である。当然、各国は情報の漏洩を恐れた。
そこで、定められた特記事項が『IS学園在学中は全ての国家に帰属せず、またそれらの外的介入を禁ずる』というものである。
……簡潔に言うと、一夏の問題は先送りにされたのだ。
在学さえしてしまえば、三年は猶予が得られる……さらに言えば、そこで一夏がどこかの国家に所属するなどして確固たる立場を確立してくれれば儲けもの───そういった考えで一夏の存在はIS学園へ入学できる適齢期まで最低限秘匿……その後のこの入学へ繋がったというわけだ。
では、エメラダはどうなのか。
彼女の場合はさらにシンプルである……単に、技術向上のために会社から入学を命じられたのだ。
それに、エメラダの機体『クレスケンス』は性能やスペックこそこの数年で詳細に分かったが、その出自などは未だ不明……もちろん、エメラダ自身にも分かっていない。
そういった事情もあり、あらゆる状況を検証する為、といった意義も含まれている。
加えて、一夏と近しい存在……本人の意思も相まって国からも身辺の警護という役割をもぎ取った結果、晴れて『強制』の二文字が付くこととなったのである。
さて、ここまで入学までの経緯を辿っていったわけだが、ここで一つ問題がある。
IS学園と言うのは一般的に超エリート校として知られている学校である。当然、その入学の敷居も授業の質も高い。
その学園に例え強制入学と決まっているからと言って何も知らないド素人を通わせて良いものか……ならいっそ、入学までに積み込めるだけ積み込めば良い───それが国の出した答えだった。
一夏のことを詳細に知ることが許されたのは幸運にも当時住んでいたドイツとIS学園のある日本のみ。結果、二人は入学まで国が用意した最高級の学習環境でみっちりと学んできたわけである。
「…………」
そう、はっきり言って
一人は確固とした頑張る目標があるからこそ死ぬ気で頑張り、一人は持ち前のスペックの高さからスポンジのように知識を吸収する。
それを見た教育者たちもさらにやる気を出し、報告を受ける国もそれならば、と一段と調子に乗っていく……悪(?)循環である。
「……なあ、エメラダ」
「……なに、イチカ」
「……これってさ」
「うん……二年くらい前にやった内容だね」
……その結果、二人はめでたく三年生相当の学力を身につけたのであった。
「あぁー……うん、まあ考えたってどうしようもないか───」
「───ちょっといいか」
「……え?」
目の前にたなびくポニーテール。その先を辿って目に入ってきたのは平均的な身長であるのに、どこか長身を思わせる雰囲気を持った女生徒であった。
そして、一夏には彼女……特に、その髪型には覚えがあった。
「……もしかして、箒……か?」
「───っ! ようやく気付いたかこの鈍感め…………」
「ん? 今なんか言ったか?」
「…………別に何でもない」
小学生の時通っていた道場の娘であり、クラスメイトでもあった所謂、幼馴染……それが、この篠ノ之箒という少女であった。
「それで……話が、あるのだが……」
「ん? ここじゃ話せないことなのか?」
「それは…………」
何かを言いたそうにちらちらと周り……特にエメラダの方を見る箒。
「……屋上、とか行ってみれば?」
「え…………」
「エメラダ? でもな……」
「今は休み時間……屋上まではそんな離れてないし、話するにはちょうど良さそう」
「ふむ……箒はそれで良いのか?」
「あ、ああ……問題ない」
そう言うや否や、箒を先導して屋上の方へ進む一夏。それを戸惑いながらも追いかける箒。
そして、その出来事全てに聞き耳、のぞき見、ガン見をしていた生徒たちの中で、エメラダは二人を見送っていった。
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「で、話って何だ?」
「それは……だな。えっと……」
屋上へ着いた二人。一夏はすぐに話を切り出そうとするが、箒はもじもじと何かを言いたそうにするだけで何も答えない。
「……箒?」
「~~~っ! 一夏っ!!」
「お、おう!?」
「あのっ、その……ひ、久しぶりだな!」
「お、おう?」
「って、そうじゃなくてっ……」
またもや煩悶する箒。一夏は、そのやり取りにどこからしくないとは思いつつも、懐かしいものを感じて苦笑する。
「六年ぶりだったか……あれから元気でやっていたか?」
「む、無論だ!」
「そっか……それより、驚いたぞ? まさかIS学園に居るなんてな」
「それは、当然だろう」
「あ……」
篠ノ之───その名字の意味するところは一つ、かの『天災』の血縁であるということだ。
篠ノ之束の妹である箒には幼少期より政府の『重要人物保護プログラム』が施されている。
その事をISについて学ぶまで一夏は知らなかったが、それが原因で小学生の頃彼女は転校することになり、一夏とは別れてしまったのだった。
そして、そのプログラムを受けている箒がこの学園と言う最高の保護環境に居ないはずが無いのだ。
「…………それよりも、聞きたいことがある」
「……なんだ?」
「あのエメラダとか言う生徒とは……その……どういった関係なのだ?」
「へ? エメラダ?」
「いいから……こ、答えろ」
「いや、どういうって…………家族としか言いようがな───」
「───か、家族!?」
愕然とした表情を浮かべる箒。彼女はどこか焦ったかのように一夏に詰め寄る。
「か、家族とは一体どういうことだ!!」
「それは───」
──────キーンコーンカーンコーン──────
「───まずっ、箒! 急いで戻るぞ!」
「え? ちょ、ちょっと待っ……」
休み時間終了のチャイムが鳴り響き、一夏は箒の手を取って走り出す。
「ま、まだ話は───」
「あ、そうそう……箒!」
「な、何だ!?」
「───ポニーテール、やっぱ似合ってるな。一目でお前だって分かった」
「っ!? ~~~~っ!!!」
……その後、教室まではひたすら無言になった箒であった。
モッピー知ってるよ。イッピーが思ったよりカッコ良くなっていてうまく話しかけられなかったってこと。
モッピー何だって知ってるよ。近くの女が気になるのは恋する乙女のサガだってこと。
イッピー強化されすぎで御座候の巻。
本作のイッピーは書いているうちにいつの間にか原作よりパゥワーアップしてしまっております。