インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~   作:夏梅ゆゆゆ

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決闘 白と蒼の円舞曲

「負けるなよ、一夏」

「……頑張って」

 

「ああ、勝ってくる」

 

……試合当日。

一夏は箒とエメラダの激励を背に、ピット内からアリーナへ飛び立とうとしていた。

この試合まで一夏がしたことと言えば箒やエメラダとの肉体での訓練のみ……というのも、調整から帰ってきた彼の愛機を慣らすのに少々時間がかかったからだった。

しかし、そうかといって、無様に負ける気はさらさら無い。

 

「──織斑一夏、『ヴェルトール』……出ます!」

 

切り替わる視界、そうして目に入るのは……蒼。

 

「───逃げずに来たことは、評価しましょう」

「───御託は良い……さっさと始めようぜ」

 

闘志を体へ漲らせる一夏。それを見て静かに嘆息、しかしながらも流麗なその機体を操作し、その手の銃口を一夏へ向けるセシリア。

 

「ふぅ……せっかちな殿方は嫌われますわよ?」

「よく言う……喧嘩を吹っ掛けたのはそっちだろ?」

「あら、そうでしたっけ?」

 

とぼけたようにそう嘯くセシリア。

 

「まあ、そんなことはさておき……そろそろ始めましょうか?」

 

瞬間、彼女の機体からいくつもの小さなビットが射出される。

 

「───さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットと『ブルー・ティアーズ』の奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

「───生憎、ダンスは不得手でね……エスコートは期待するなよ!」

 

二つの機体が、唸りを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぇぇ……二人ともすごいですねぇ……」

「ふん、まだまだひよっこにすぎんがな……」

 

そんな二人の試合を一組の担任二人と……そして、先ほど一夏を見送った二人はピットで見守っていた。

 

「一夏……すごいな」

「『ヴェルトール』……また機動性が上がったんだ」

 

特に一夏の動きは二人の……いや、その試合を見るもの全てを驚かせただろう。

一夏の乗機、『ヴェルトール』───正式名称『ヴェルトール・V(ヴァイス)』はあの時……そう、ドイツに居た時に一夏が起動し、そのまま専用機となったISである。

エメラダのクレスケンスを解析し、その構造を元として作られていた試作機……それを専用機とするため、シェバトの技術者たちが総力を上げて強化・改修したものがこのヴェルトールだ。

……その技術者の中に兎の耳が見えた等の噂もあったりする。

それはさておき、その性能はご察しの通りだ。機動性、耐久性、いずれの面を取っても高水準なこの機体を駆る一夏はセシリアの放つビットからの攻撃をことごとく躱している。

 

「だが、ここまではお互い様子見のようだな───」

「あ、でも織斑くんが動くみたいです!」

 

その山田先生の言葉通り、一夏はその手に武器を現出させる───それは、『刀』だった。

 

「あれは……『雪片』!?」

「違うな、あれは『雪片弐型』……完成させていたのか」

 

雪片……それは、現役時に千冬が使っていた近接ブレードの名称である。千冬の代名詞とも言えるその武器は再現不可能と言われるほどの性能を秘めており、その発展型であるあの武器……弐型の製作にはシェバトも難航していたと千冬は聞いていたのだが……

 

「あの駄兎…………」

 

……雪片の製作者である某兎の高笑いが聞こえた気がした千冬であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大体分かりましたわ」

「なにがだ、っと」

 

武器を呼び出した一夏であるが、いまだ攻め切れずにいた。

ビットからの攻撃が激しくなっていたのである。それに加え、セシリア自身の放つ狙撃も時間が経つにつれて精度が上がってきている。一夏の動きを分析しているのだろう。

 

「その機体……射撃武装がありませんわね?」

「……ご名答」

 

そう、ヴェルトールには射撃武装……というより、雪片弐型以外の武装はほとんど積んでいない。というのも、ヴェルトールの基本的な機体性能を上げた結果、拡張領域が極端に容量を食われてしまっているのだ。

もちろん、無理をすれば積めないことは無いのだが、いかんせん一夏の射撃の腕は驚くほど悪かった……才能が無いとかそんなレベルでは無く、下手くそだったのだ。

そのうえで、無理するくらいなら近接武器一本で十分……そう言った考えになったのだが、一本で戦うにも武器の耐久という壁がある。

その点、かの雪片は使用者の無茶な使用に答える為、無類の頑丈さを誇っていた。それを参考に、雪片の発展型として一本で戦える頑丈な武器を作ろう、というシェバトの考えでこのような武装選択に相成ったわけだが……

 

「(やっぱり、射撃型には相性悪いな……)」

 

そう、攻めあぐねているのはそう言った事情も含まれているのだ。

 

「逃げまどっているだけではわたくしに勝つことなどできませんわ!」

「わかってる、よ!」

「では、あがいてみなさい! 行け、ティアーズ!」

 

その言葉と共にブルー・ティアーズ……機体と同じ名を持つレーザービットが一夏の四方を囲み、追い立てるように絶え間なく光を発射する。

 

「ぐっ……」

「このままではすぐに終わってしまいますわよ……さあ、どうします?」

 

確かに、このままでは近づくことも出来ずに終わってしまうだろう……しかし、セシリアはそこで多少の油断を許した。

射撃武装は無いと言ったが、遠距離攻撃(・・・・・)の手段が無いわけでは無いのだ。

 

「だったら……こうする! 行くぞ、『指弾』!」

 

構えられる両手、瞬間、その両手から光の奔流がセシリアに向かって殺到した。

 

「は……?」

 

唖然とするセシリア。直後に正気に戻り、回避行動に移るが、多少のダメージを受けて動きが止まる。

 

「っ……な、なんですの? 今何か手から光線が……」

「───やっと、捉えた」

「……!?」

 

動きが止まる一瞬……その一瞬はビットの動きすらも止めていた。一夏はその隙を逃さず、一気に肉薄する。

 

「くっ……インターセプター!」

「おぉぉぉぉ!!」

 

刃がセシリアへ届く寸でのところで呼び出した短剣での防御が間に合う……しかし、一夏の剛剣はそうそう長く持ちこたえられそうにない──それほどの質量を持っていた。

 

「流石にっ、舐めすぎまし、たかっ……!」

「男も、まだまだ捨てたもんじゃないだろ?」

「ええ、ですが───この勝負はいただきますっ!!」

「なっ!?」

 

───超至近距離からのミサイル発射。

ブルー・ティアーズと呼ばれる兵装群の中でも異色の武装……それがミサイルビットなのだ。

超至近のため、自分にも幾らかのダメージは来るが、一発でゲームエンド級の破壊力を持つ切り札……セシリアは勝利を確信した。

 

「────甘いッ!!!」

 

だが、一夏はミサイルごと薙ぎ払った(・・・・・・・・・・・)

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

「ど、りゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

───閃光。

そうして、爆炎が晴れた後に見えたのは……シールドエネルギーの尽きた両者(・・)だった。

 

「くぅぅ……いってぇ……」

「いってぇじゃ……ありませんわ……無茶、し過ぎです…………」

 

機体を地面に降ろしつつ、そんな風にぶつくさ言っていると、アナウンスが聞こえる。

 

『えー、っと……モニターで確認した限り、同時にシールドエネルギーが零になりましたので……ひ、引き分けです!!』

 

「あ、ははは……引き分けみたいだぞ」

「…………もう、なんだっていいですわ」

 

なんだかグダグダな結末を迎えた決闘。

二人はお互いの妙に疲れたような顔が印象深かったそうな………

 

 

 




やっと一章も終盤……二章からはエメラダが主体になっていくので頑張りますー。

というか、エメラダ主人公と言うより一夏とのダブル主人公になってきた感。
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