インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~   作:夏梅ゆゆゆ

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開戦 二つの戦い 前編

待ちに待った大会当日。

その戦いのフィールドとなるアリーナでは、白い全身装甲のISと肩部が巨大な赤紫の装甲を持つISが空中で対峙していた。

 

『───これより、第一試合を開始いたします。対戦者は準備を───』

 

「はぁ……ホント、なんというか……」

「ははは……まあ、こればっかりはなぁ……」

 

代表戦、一試合目……アリーナに居るのは一夏と鈴であった。

 

「それにしても早すぎない? あんなに啖呵切っといて初っ端とか……」

「クジで決まったんだから仕方ないだろうに」

「そんなのわかってるわよ……」

 

一回戦の一試合目で一夏と当たるなんて思いもしなかった鈴である。頭でわかっていても、割り切れないものもある。

 

「───あー、もう! 考えててもしょうがない!」

 

両手で頬をパシッと叩き、一夏に向き直る鈴。

 

「この『甲龍(シェンロン)』の威力を見せてあげる! 本気で行くわよ、一夏っ!!」

「それはこっちのセリフだぜ、鈴!!」

 

『───では、試合開始!』

 

───そうして、開始の合図が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席。

そこでエメラダは一夏たちの試合を見ていた。

 

「ふぇ~、おりむーもリンリンも速いね~」

「流石の専用機持ち……」

「…………」

 

周りの一組から聞こえる声を耳にしつつも、エメラダの視線はフィールドに固定される。

 

「(近接は互角……いや、イチカが若干上回ってる)」

 

そう、開始直後に一夏たちは互いに肉薄し、一夏は刀で、鈴は両刃付きの青龍刀で切り結んでいるのだが、やはりヴェルトールが超至近戦に特化した機体である以上戦況は徐々に一夏へと傾いてきている。

 

『へぇ……! やる、じゃないっ!!』

『まだだぜ!』

『……っ!!』

 

強烈な斬り上げ……それに不意を突かれた鈴は体勢を崩す。

 

『ぜぇぁぁあ!!!』

『まず……!?』

 

───間髪を入れず、二連の斬撃。

体勢を崩していた鈴はこれを避けきれないと悟り…………自分から避けることを放棄した。

 

『あぐっ……!!』

 

そう、青龍刀の柄で受け止めたのである。だがしかし、とっさの行動な為に片手での防御となってしまい───アリーナの壁に思いっきり叩きつけられる。

 

「おお~!」

「ジャパニーズケンジュツですわ……!」

「……あれは篠ノ之流剣技の一つ、『天雲』だ。そのような似非っぽいものでは無い」

 

『げほっ……やってくれるじゃない……!』

『どうした、もう終わりか?』

『上等……今度はこっちから───行くわよ!!!』

『…………っ!?』

 

鈴の纏うIS『甲龍』の肩部が回転したかと思った瞬間、一夏に衝撃が襲い掛かった。

 

『なん……だっ、それ!?』

『ほらほらぁ!! どんどんぶっ放すわよ!!!』

 

「なんなんだ? 急に一夏が吹き飛んだが……」

「ふむ……あれは甲龍の第三世代型兵器の『衝撃砲』ですわね」

「衝撃砲?」

「空間自体に圧力を掛けて砲身を生成、余剰で生じる衝撃そのものを砲弾化して打ち出す……簡単に言えば、物凄く強力な空気砲のようなものですわ」

 

周りのクラスメイトから感心するような声が上がる……それに気を良くしたのか、続けてセシリアが解説し始める。

 

「あの兵器の特性上、『弾が視認出来ない』というこの上なく厄介な性質を持っていますわ。その上、砲身すらも見えないのですから弾道を予測することも不可能に近いでしょう……一夏さんが近接戦しかできない以上、あの攻撃を攻略しない限り、勝利は無いとも言えます」

 

その最後の言葉に、周りの生徒たちは一斉に不安げな顔をアリーナへと向ける。

 

「がんばれー! 織斑くーん!!」

「どうにかして勝って!! お願い!!!」

「デザート~!」

「…………」

「あら、箒さんは応援しなくていいのですか?」

「……ふん、信じているからな」

「その割には凄くそわそわしていますが」

「…………ふんっ!」

「おおっとぉ! ……うふふ、このセシリア・オルコットに同じ手は二度も通用しな───っ!?」

「…………ふん」

「ちょ……脇腹……肘で……強すぎます、わよぉ…………」

 

そんな喧騒の中、エメラダは自身のISに通信が届いているのに気付く……相手は、不明と出ている。

 

「(不明……?)」

 

不思議に思いつつ繋げるか悩むものの、強制的にプライベート・チャネル───使用者同士にしか聞こえないISの通信法───で通信が開かれる。

 

『はろはろ~! えーちゃん元気? 皆のアイドル束さんだよーん!!』

『た、タバネ……?』

『やーやー、ちょいと君のISにハッキング掛けて通信繋いでるから回線切らないでねー?』

『え、う……うん』

『ここをこうして……よし、送信完了っ! さて、今とあるレーダー情報をえーちゃんに送ったんだけど……届いた?』

 

直後、クレスケンスにレーダー反応が浮かび上がる……その中には四つの光点が点滅しており、それらは───ここ、IS学園へと真っ直ぐに向かってきていた。

 

『これは……?』

『……この光点は、ISだよ。それと同時に───』

 

声の調子を一転させ、真剣味を帯びた声で言い放つ。

 

『───敵だよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む……? エメラダはどうした?」

「あら? 先ほどまでこちらに座って……」

「……まったく、一夏が戦っているというのに何をしているんだ」

「まあまあ、すぐに戻ってきますわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『───相手の目的は不明……だけど、完全武装の上にステルスまで掛けてるんだからまず間違いなく害のある相手だよ。でも、この場で対処できそうなのはえーちゃんか、ちーちゃん位……でも出来れば、ちーちゃんには内緒で居て欲しいんだ』

「…………」

 

太平洋上……束の指示のままに、エメラダはクレスケンスのブースターを噴出させ続けていた。

 

『……君に頼むのも筋違いだっていうのも分かってるんだ』

「…………?」

『本当は私が動ければいいんだけど……迂闊に動くわけには───』

「別に、構わない」

『へ…………?』

「タバネは恩人。あたしをイチカ達に会わせてくれた」

『…………』

「それに……イチカとリンが戦ってるのを邪魔させるわけには、いかない……!」

『……ふふふ、これはこれは……』

「……?」

 

───思ってたより、成長していたんだね……何よりも、心が。

 

『んーん! 何でもないない! さぁてさてさて、そろそろ来るよ……お邪魔虫さんたちが!! 』

 

言葉に反応し、ブースターを止める。

 

『カメラや衛星、ありとあらゆる映像を残すものはぜーんぶ私が掌握済み!』

 

トルネードハンドを武装として呼び出し、手足に装着させる。

 

『相手のステルスも……今だよ!』

「ん……!」

 

合図と共に放たれた『リグ・オメガ』……エーテルによって生成された幾線もの雷が、辺り一面を焼き尽くすかのごとく降り注ぐ。

ISのハイパーセンサーをもってしても欺かれるほどのステルス……それはかなりの繊細さで成り立っているものだったらしい。避けきれず、雷撃に掠めてしまった四機はその姿を露わにせざるを得なかった。

 

『よし、これで……!』

「後は…………!」

 

『「叩き潰すだけっ!!!」』

 

───そうして、もう一つの戦いが幕を上げた。

 

 




メモ書き

・『天雲』
某眼鏡をかけたゼノギアス最強キャラの刀技から拝借したもの。
篠ノ之流が技少なすぎるのが悪いんや……

・『リグ・オメガ』
『リグ・ダーム』の広範囲版。もちろん消費も倍プッシュ。




1VS4のはずなのに、束さんが味方に付いているというだけで安心できてしまうのが天災クオリティ。
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