インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~   作:夏梅ゆゆゆ

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段々と戦闘を長く書けるようになってきました。
ということで、VS鈴です。


開戦 二つの戦い 後編

「さっきの威勢はどうしたのかしら、一夏!」

「くっ……」

 

エメラダが束の指示で学園を出たころ、一夏は苦境に立たされていた。

 

「(とにかく……あの見えない砲撃をどうにかしないと不味いな……!)」

 

そう、近接戦闘は世界最強の姉に一年ほどみっちりと手ほどきされた一夏である。その地力は鈴を上回っているだろう……ただ、『近接戦闘に持ち込めれば』という但し書きが付く。

 

「まだまだ、こんなもんで終わりって訳じゃあないでしょうっ!!」

「ぐ……!」

 

一発の衝撃砲が肩を掠める。

鈍い感触が今だに体を駆け回っている中、一夏は思考をめぐらす。

 

「(くそっ……! このままじゃ本当にジリ貧だ!)」

 

近づこうとすると集中的に衝撃砲が襲い、それの対処に手間取っている間に鈴が青龍刀で吹き飛ばし、距離を離される……今のところはこれの繰り返しであった。

近接戦闘で勝ち目がないと踏んで、咄嗟に戦法を変えてきた鈴はやはり一筋縄ではいかない相手ということだろう……おまけに、衝撃砲をそんなにボンボン撃っているところを見ると、発射の燃費もすこぶる良いということになる。弾切れを待つ間に削り切られるのが落ちだ。

 

「(そうなる前に……一気に攻め切るしか、無い!)」

「っ! 突っ込んできた!?」

 

衝撃砲の直撃を受けながらも一気に一夏は鈴の元へと肉薄する。

一撃で決める────そう気合を込めた一閃を、鈴は抵抗せずに受け止めた(・・・・・・・・・・)

 

「なっ……!?」

 

驚いたのは一夏である。

雪片の軌道上に青龍刀を合わせ、防ごうとするまではまだわかる……しかし、彼女はそのままなされるが儘に吹き飛んでいったのだ。

一夏の頭の中に疑問が浮かんでいき……次の瞬間、その疑問は氷解した。

 

「────お返し、よっ!!!!」

「しまっ……!?」

 

吹き飛ばされた先に視線を向けた一夏が見たものは、衝撃砲の発射体勢にある鈴だった。鈴は、無理に一夏の一撃を避けるよりも最低限の致命傷だけを避けるために、敢えて受け止めるだけ(・・)に留めておいた……そう、その攻撃を受けた鈴は必然的に後方へと距離が離れることになり───

 

「───攻撃後で無防備なあんたを狙い撃ちってわけね」

「ははっ、やって、くれるぜ……」

「……まさか、まだ墜ちないなんて思ってはいなかったけどね」

 

両肩の衝撃砲二門、それも最大出力でぶっ放したものに直撃して未だに倒せないとは思っていなかった鈴は、素直に驚きを口にする。

 

「はっ、こんなもんで終わってたまるかよ」

「へぇ……なら、もっと足掻いてみなさい!」

 

再び放たれる衝撃砲の弾幕。

その見えない弾幕の中、一夏は必死に機体を動かし続ける。

 

「(……啖呵を切ったは良いが、不利な状況は変わらない)」

 

エネルギーの消費を恐れずに気弾を放って近接へ持ち込む、といったセシリア戦の時に使った戦法も考えた……しかし相手はセシリアとは違い、純遠距離型ではなく中距離型である。それで肉薄できたとしても、先ほどのように逃げられるか、そもそも直接の斬り合いにエネルギーの少なくなった機体が耐えきれないかの二択であろう。

 

「(くそ……! 万事休すか……!?)」

 

そんなことを考えていた時だった。

 

「…………」

 

───ふと、鈴と目があった。

その目には勝利を望む、鋭い光があったと同時に…………どこか、一夏に期待するかのような色が見えたのだ。

一夏はそれを見て─────覚悟を決めた。

 

「(すみません、ニコラさん……あれ、使います!)」

 

一夏の脳裏に二コラの声が思い出される。

 

『良いかい? この機能はエーテル機関と同じようにシールドエネルギーからエネルギーを供給して発動するものだ。でも、君やエメラダのエーテルから放たれる現象とは違ってその消費量は膨大……まあ、MAXの時に使ったとしても一分が限界だろうね』

 

「今の残量から考えて、リミットは十秒……」

「(一夏の動きが止まった? ……何か仕掛けてくるのかしら)」

「だけど……やるしか、ないよな!」

 

一夏の動きが止まり、それを鈴が訝しんだ瞬間……ヴェルトールの各部から蒸気が噴出され始めた。

 

「なっ……!」

「───ブースター、駆動!!」

 

───10───

 

一夏が何か言葉を紡いだのを視認したと同時に、彼我の距離が半分にまで縮んでいた。

かつてないほどの急加速……しかし、鈴は冷静にそれに対処しようと、衝撃砲を一夏に撃ちこみつつ、後方へ移動し続ける。

 

───9───

 

「(瞬時加速……? にしては……)」

 

……しかし、それらの砲撃は全て寸でのところで回避される。

 

───8───

 

「(……小回りが利きすぎている!?)」

 

そう、瞬時加速の性質として単純な直進でしか無いことが挙げられる。仮に瞬時加速だとしたら、今の一夏のように衝撃砲をかわせるはずがないのだ。

 

───7───

 

「───追い、ついたっ!!」

「くぅ……!」

 

───6───

 

一気に鈴の位置にまでたどり着いた一夏はその勢いのまま斬りかかる。

鈴も先ほどのように衝撃を利用して距離を取ろうとするが、それを圧倒的なまでの一夏のスピードが許さない。

 

───5───

 

「まだ、まだぁぁぁ!!!」

「ぐっ……引き離せない!?」

 

そのスピードでぴったりと鈴の機体に追い縋ってくる一夏に、切り結ぶことを強制されてしまう。

しかし、近接は一夏の方が上だ……段々と、鈴の方にもダメージが蓄積されていく。

 

───4───

 

「これで、決めるッ!!!」

 

そう気迫を込めると、一夏は最下段から一気に弧を描くかのような軌道で鈴を強かに斬り付ける。

 

───3───

 

最初の一撃が直撃する瞬間、一夏は高速で刃を振動させ続ける……すると、余りの空気摩擦により刃が熱を帯び始める。

その状態のまま、一夏は一撃目で完全に体勢を崩した鈴に同じ軌道で斬り上げを放つ。

 

───2───

 

「く……ぁ……っ」

「奥義───」

 

そうして振り切られた二撃目はその勢いを殺さずに、渾身の力を込めつつ、最後の半月を描く。そうして放たれる三撃目……三撃の間振動を受けた雪片のその刃は、鈴に叩き付けられる度に起こる火花によって炎と呼んで差支えのない、灼熱を纏い……

 

───1───

 

「────火精刀気、朧ッ!!!!」

 

……そうして、灼熱の剣は、鈴を斬り裂いた。

 

───0───

 

 

 

 

 

『───シールドエネルギー残量0! 勝者、一組代表……織斑一夏!!』

 

ブーッというブザー音とともに伝えられるその言葉が、アリーナに鳴り響いた。

しばしの静寂……しかし、数拍後には盛大な歓声がアリーナを覆い包んだ。

 

『シールドエネルギー残量4……ブースター解除します』

「……すっげぇ、ギリギリだったな」

 

正直、一夏にとってこれは賭けだった。

相手がこちらを近づけないことを目的としている以上、スピードが出せると言っても逃げに徹されてしまえば『ブースター』……シールドエネルギーを湯水のごとく使って機体の基本性能を底上げするこの機能は一夏の負けを早めるだけとなっていただろう。

そのデメリットの大きさから出し渋っていた一夏であったが、結果的にその渋ったのが功をなした。鈴もまさかここまでの隠し玉を持っていたとは思わなかったのだ……中盤戦までの膠着状態が良くも悪くも、鈴から警戒心を薄れさせていた。その結果、不意打ち気味にうまく決まったと言って過言では無い。

 

「あー……負けた負けたぁ!!」

 

下の方……エネルギー残量が切れ、地上へ不時着した鈴がそうヤケクソ気味に声を上げる。

 

「うあー……一夏ぁ!!」

「な、なんだよ?」

「これで、勝ったと思わないでよね!? 次は、ぜったいぜったい、ぜーったいに勝ってやるからっ!!」

「……はは、楽しみに待ってるよ」

「───それとっ!!」

「ん……?」

 

声を続けようとして、少し詰まり、顔を背ける。

不思議に思った一夏が聞こうと……したところで、目の前の少女からプライベート・チャネルが届く。

 

『た、ただいま……それと……ありがと』

 

───自分の心を今まで支えてくれて、本当にありがとう。

直接それを言葉には出していなかった。傍から聞けば前者はともかく、後者は意味不明な言葉だろう……しかし、一夏は少女に答えを返す。

 

『……おかえり、それと……どういたしまして』

 

そう囁いて、一夏は微笑んだ。

 

 




メモ書き

・火精刀気-朧-
原作の刀技で最高威力の超必殺技のうち一つ。
謎パワーで炎を纏った三連の下から弧を描く斬撃を放つ技だが、本作では再現のために物理法則を無視したそれっぽく聞こえるトンデモ理論でこれを出す。
さらに篠ノ之流奥義の一つである。篠ノ之流ってすげぇ!!
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