インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~   作:夏梅ゆゆゆ

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金と銀 波乱を運ぶ転入生 中編

「お、お兄ちゃん……だと……!?」

「あらあら、随分と似ていない兄妹ですわね……」

「いやいやセシリア、違うと思うよ? ってかそもそも人種が違うし」

 

クラス内は混迷を極めていた。

先ほど投げかけられた一言はそれほどまでに影響力のある一言だったのだ。

 

「ッククク、中々に面白いことになったな」

「ラウラ、お前なぁ……」

「なに、ただの軽い挨拶……」

 

「───いい加減にしろ、馬鹿ども」

 

「「あいだっ!?」」

 

愉快気な表情を浮かべたラウラと困ったような表情を浮かべた一夏の両方の頭に出席簿が落とされる。

 

「やれやれ……二人の席はあそこだ。とっとと座れ、授業を始める」

「は、はいっ!」

「……りょ、了解」

 

少し怯えたようなシャルルとラウラが指定された席に赴く。シャルルはどうやらエメラダの隣の席のようで、席に着くと微笑みを浮かべて挨拶をしてくる。

 

「あ、さっきも言ったけど僕はシャルル。よろしくね?」

「ん……あたしはエメラダ、よろしく」

 

「───今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。各人は着替えて第二グラウンドへ行くように。以上」

 

千冬が連絡を終えて教室を後にすると、俄かに室内が騒がしくなる。

 

「おーい!」

「えっと、僕?」

 

そして、それと同時に一夏がシャルルに声を掛けてくる。

 

「ああ、先生から同じ男子同士面倒を見てやれってさ……俺は織斑一夏、一夏でいいぜ」

「あ、うん……僕もシャルルでいいよ」

「よし! じゃあとっとと行くぞ!!」

「へ? 行くって……うわぁ!?」

 

シャルルが疑問を呈しようとした瞬間、一夏はその腕をとってクラスから一目散に出て行った……何しろ、男子の更衣室は遠く、他クラスの女子につかまって時間を食う可能性もある。一組の女子はこれからの話す時間をクラスメイトという枠により確保できている為に焦りは無いが、他クラスともなれば別だろう。それによって時間に遅れでもしたら千冬の怒りを買うであろうことは想像に難くない。

 

「むっ、どうした? 着替えないのか、エメラダ?」

「……今着替えるけど」

 

そう言いながら制服の上を脱いだ状態でこちらに歩いてくる銀髪……ラウラの姿が目に入った瞬間、自身の目がじとっとした感じになる。

 

「そう睨むな。久しぶりに会ったんだ、ハグの一つでもしてきたらどうだ?」

「……来るんなら連絡の一つでも寄越せばいいのに」

「ふむ、こういうサプライズが日本では喜ばれると聞いたのだが……違ったか?」

「またクラリッサの入れ知恵か……」

 

ラウラが所属している部隊の副官である女性がどや顔を決めながらサムズアップしている姿を幻視し、そこはかとないイラつきを感じる。

 

「あ、あの……」

「……なんだ?」

 

そうして着替えていると、後ろから癒子がおずおずとラウラに声を掛ける。

 

「あの、ボーデヴィッヒさんはエメラダとも知り合いなのかな……?」

「ふむ、先ほども言っただろう? 私は織斑一夏の妹だ。つまり、こいつの姉であるということだな!」

「え、えぇぇ……?」

「はぁ……」

 

一応、気を使ってくれているのだろうか。

確かに、自分たちの生い立ちからしてお互いの関係性を説明するのは難しいのは分かる。かといって、煙に巻くためとはいえこの回避方法はどうにかならなかったのだろうか。

 

「…………」

 

……それと、先ほどから箒の視線を感じる。あれは『どういうことなのか説明しろ』という合図なのだろうか。お兄ちゃんのショックは大きかったらしい……が、残念ながらその時間は無いようである。

 

「エメラダさん、早く行きますわよ? ほら、転入生の貴女も」

「ん、わかった」

「ほう、イギリスの……まずはこの授業でお手並みを拝見したいものだな」

「あら? 余裕ぶってると足元を掬われますわよ、ドイツの候補生さん?」

 

ヨーロッパの候補生はバトルジャンキーしか居ないのであろうか。金髪と銀髪の間に挟まれながら、ドナドナと連行されていったエメラダであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、まずは初めに模擬戦を行ってもらう……そうだな、凰とオルコットは前に出ろ」

 

グラウンドに集まり、千冬が授業を始めるとすぐに二人が呼び出される。

 

「こうして一対一でお話しするのは初めてですわね、鈴さん」

「そーね、まあ……代表候補のあんたの力、見せて貰うわよ?」

「ふふふ、了解ですわ。それで、織斑先生……相手はどなたですか? 鈴さんとやれというわけではなさそうですし」

「まあ待て……対戦相手は───」

 

その時、キィィィィンといった風を切る音が段々と近くなってくるのがわかる。

 

「っわわあ、皆さん退いてくださぁ~い!?」

 

俄かに慌ただしくなるグラウンド、そして音の正体……ISを装着した山田先生が思いっきりブースターを逆噴射し、強烈な風を周囲に撒き散らしつつ着地した。

 

「山田先生……」

「ご、ごめんなさい織斑先生! ちょっと推進関連の調整が終わってなかったらしくって……」

「まあ、いいでしょう……さて、お前らの相手をするのはこの山田先生だ」

 

それを聞き、二人は微妙な顔をしている……まあ、今のやり取りを見せられたら誰だってそんな顔をするだろう。

 

「なんだその顔は……山田先生は元代表候補生だ、貴様らが束になっても敵わんから胸を借りるつもりで挑んでみろ」

「え、えぇぇ……そ、そんなに持ち上げないで下さいよぉ……」

 

山田先生が腕を胸の前で組み、上目遣いで千冬を見上げる……その結果、腕に押されて形を崩したその豊満な胸に『胸を借りる』という千冬の言葉もトリガーとなり、その場の全員の目が集中する。

当然、一夏の目もそこに行っているのがエメラダも分かったのだが……何故か、先ほどクラリッサに抱いたよりも大きな苛立ちを感じた。

 

「くっ……絶対に一泡吹かせるわよ! セシリア!!」

「え、ええ……というか、どうしてそんなに急に張り切りだしたんですの……?」

「うっさい! あんたには分かんないわよ!」

 

若干涙目になった鈴が吠える。鈴よりは有るにしても、セシリアや箒とまではいかないエメラダにとってその気持ちはある程度理解できるものである。

 

「では、これより模擬戦闘を始める……戦闘開始!」

 

そういった千冬の声と同時に、三機が空へと飛びあがる。

 

「ふむ、ただ観戦しているだけではなんだな……デュノア、山田先生の機体について説明しろ」

「あっ、はい」

 

怒りに身を任せて突撃した鈴をセシリアが後方から援護する姿を見ながら、解説をし始める。

 

「山田先生の使用されているISはデュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。第二世代開発最後期の機体ですが、そのスペックは初期第三世代型にも劣らないもので、安定した性能と高い汎用性、豊富な後付武装が特徴の機体です」

 

突撃した鈴は果敢に山田先生へと切りかかるが、その動きを読んでいたかのように放られるグレネード。彼我の距離は離されてしまう。

 

「現在配備されている量産型ISの中では最後発でありながら世界第三位のシェアを持ち、七か国でライセンス生産、十二か国で正式採用されています」

 

そうして離れた瞬間に始まる銃撃の雨。山田先生から放たれるそれは、鈴の武装、機体、そしてセシリアのビットさえも悉くを寸分違わずに撃ち抜いていく。

 

「特筆すべきはその操縦の簡易性で、それによって操縦者を選ばないことと多様性役割切り替え(マルチロール・チェンジ)を両立しています。装備によって格闘・射撃・防御といった全タイプに切り替えが可能で、参加サードパーティーが多いことでも知られています」

 

流石は名字からしてデュノア社の関係者と言ったところであろうか、教科書に載っている以上のことをすらすらと答えていく。

 

「いったんそこまでで良い、決着が着くぞ」

 

そう言ったところで、丁度空で大きな爆発が起こる。どうやら、射撃によって追い詰められていった鈴が後退、セシリアと位置が近くなったところを一斉にグレネードで爆破されたのだろう。先生を伴って鈴とセシリアはシールドエネルギーを無くしてゆっくりと降下してくる。

 

「……わたくしも、まだまだですわね。こんなに近くに狙撃の名手がいらしたとは」

「い、いえいえ! オルコットさんもとっても良い腕を持っていますよ! まだまだ成長できますし、絶対に私なんかよりも上手くなれますよ!」

「ふふふ、ありがとうございます。また今度、射撃について訓練をしていただけませんか?」

「は、はい! もちろんです! いつでもお付き合いしますよ!」

「その時はよろしくお願い致しますわ、先生」

 

和やかな雰囲気を出す二人。一方で鈴はというと……

 

「……くっ」

 

……喋りながらもたゆんと揺れる、ISスーツによって強調された山田先生の胸へと親の仇を見るような目線を送っていた。

 

 




72を書いているんでしょうね(錯乱)
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