インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~ 作:夏梅ゆゆゆ
IS適性の概念にかなりの改変を加えています。
その過程で登場人物の適性ランクが変化しているので注意。
とうとう分割もナンバリングが入ってしまった(白目)
IS適性というものがある。
それは、言うなれば『どれだけISを動かす才能が有るか』の指標だ。
適性が高ければISとの感応力は高く、操縦者の行動をラグ無く反映してくれる。しかし、そうでないものは少なからずラグを強要される。そして、それはIS戦において致命的なものだ。
その他にも適性の影響力は高い。
ISのワンオフ・アビリティーや二次移行などの発現も、実例こそ少ないもののいずれの搭乗者もA以上の適性を保有している。これらにも適正は大きく関与していると言っても過言ではないだろう。
……そして、その中でも最低ランク、適性Cの称号を持っているのが中国の代表候補───鈴の相方である少女、マルーというわけなのだが。
「───さあ、張り切っていきましょう」
「ああ、援護は任せる───私はただ、相手を斬り払おう」
「はん、速攻で落とされても文句言うんじゃないわよ───アンタたち!」
セシリア・オルコット、適性Aランクの代表候補。
篠ノ之箒、適性Aランクかつ剣道部の期待の星。
凰鈴音、適性Aランクの代表候補。
「……場違いにも程が有るって」
「ほら、何ぶつぶつ言ってるのよ! シャンとしなさい!」
「わ、わかってるよ……」
そう言って、アリーナを騎乗するラファールの視界で見渡す。
観客の多さに眩暈のようなものを感じるが、あまり弱音ばかりはいっていられないのも事実だ。
「ボクだって、頑張ってきたんだから……!」
そう、ただこの試合を座して待っていたわけでは無いのだ。
鈴指導による地獄のような特訓がマルーの脳裏に浮かんでは消える。
気を失うまで近接戦闘(組み手)を行ったこともあった。
手が上がらなくなるまでライフルを撃たされ続けたこともあった。
気絶するまで攻撃をただひたすら回避する訓練だって……!
「(そう、ボクだって……やれるはずっ!)」
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「そう思っていた時期がボクにもあっだぁ!?」
「マルーッ! ボサボサしない!」
「へ? ……うひゃあ!?」
見事に横っ腹へブルー・ティアーズのビットレーザーを受けたマルーは、鈴の言葉で咄嗟に身を反らし……鼻先をライフルから放たれた高出力レーザーが通過する。
「あらあら、外してしまいましたわ」
「だが、こうして隙は出来た……!」
鈴が意識を逸らした一瞬を捉え、箒とその乗機の打鉄が刀を振りかぶりながら、突進する。
「はぁぁぁッ!!」
「づっ!? なんて、重さ、してんのよ……!」
回避を諦めた鈴は手の両刃刀でそれを受ける……が、量産機とは思えないほどの力に苦悶の表情が浮かぶ。
「り、鈴! くそっ……これだ!」
マルーに与えられたチームでの役割は援護と妨害。
故に、側面からアサルトライフルを撃ち込もうとするのは定石であった。
「───させませんわ」
───ライフルをビットレーザーに貫かれなければ、の話だが。
「う、うわっ!」
熱でぐにゃりと砲身が歪んだライフルをマルーは取り落とす。
そして、その隙を逃すセシリアでは無い。
「行きなさい……!」
「……ッ! あま、いっ!!」
ビットのうち半分が鈴の方へ向かい、死角から偏差射撃を行う。
鈴は獣じみた直感でそれを辛うじて回避する。
「だが、こちらが留守だッ!!」
「く、きゃあ!?」
一閃。
鍔迫り合いから解放された直後、箒は叩き落すかのような上段からの斬撃を鈴にぶち当て、吹き飛ばす。
その勢いのまま地面に叩きつけられる……寸でのところで逆方向にバーニアを展開、後方へそのまま距離を取りながら両肩の衝撃砲を乱射する。
「くっ、小癪な!」
「……っは、詰めが甘いのよ!」
「抜かせ……!」
「あら、ビットが今ので1機破壊されてしまいました……箒さん、少し様子見───など、出来そうもありませんわね」
まさしく、次元が違う。
わかってはいたが、自分の弱さをはっきりと再認識させられる。
「……っ」
もう一丁のアサルトライフルを呼び出し、距離の離れたブルー・ティアーズへ肩部ミサイルポッドを掃射する。
「───あら」
そして、そのままミサイルの後に続きながら接近。ミサイルが爆発したところでアサルトライフルを撃ち込めば……!
「中々、面白いことをしますわね……ですが」
アサルトライフルのロックを外し、ずれる照準を無理やり合わせ……
「───そこは、わたくしの距離です」
……目の前で、ミサイルが弾けた。
「───うわぁ!?」
爆発の煙が視界を覆う。どうやらセシリアのビットにミサイルをことごとく撃ち落とされたようである。
そして、その煙は切り裂かれるようにして晴れる。
「……斬ッ!」
「かっ、ぁ……!?」
煙の先から現れたのは打鉄。
苛烈な声と共に繰り出された斬撃は、ラファールの胸部を見事に打ち据えていた。
「……っ、マルー!!?」
そのままマルーはアリーナの地面へ激突する。
鈴の声がラファールを通して聞こえてくるも、体がうまく動かない。
衝撃でマヒした頭を必死に動かし、ISの様子を確かめる。
……シールドエネルギーはまだ残っている。
ということは、やはりこれは自分側の問題なのだろう。
「っ、あ、くっ……!」
「───これで、まずは1人目です」
目前にはビットがレーザーをチャージしながら迫っている。
鈴は懸命に声を上げながらこちらを援護しようとしているが、箒に阻まれてこちらへとたどり着けない。
「(あ、はは……これは、詰んだかな……?)」
せめて、足手纏いにはなりたくなかったけど、結局こうなっちゃったな…………そう、諦めて眼を閉じる。
そして、その身をレーザーが────貫かなかった。
「……えっ?」
再び開いたその瞳には───
「なんだ……あれは……!?」
「IS……なのですか?」
「ったく、なんなのよ一体……!」
「………………」
───空から飛来する、紅の巨体が映っていた。
因みに、エメラダのランクはA。一夏のランクはBです。