インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~   作:夏梅ゆゆゆ

46 / 47

中々書く時間が取れないせいで文量が短くなってきてますね……
結果ナンバリングも増えることに……


克己 守られるだけの少女 中編3

 

エメラダが辿り着いた先……学園上空。

そこで、彼女を待ち受けていたのは二機のISだった。

 

「(あの機体……!)」

 

そう、その片方には見覚えがあった。

以前学園を襲撃しようとした四機のIS……その内の一機である。

 

「……今の状況、作り出したのは貴方たち?」

『そうだと言ったら?』

「───っ!?」

 

エメラダは驚きに目を見開く。

まさか言葉を返すとは思わなかったからだ。

その声自体は電子音交じりの作られた声であったが、見知らぬほうの機体から響くその声には確かに、人の残滓を感じさせた。

 

「今すぐ、貴方たちを取り押さえて、止める」

『面白い……!』

 

エメラダは武装を呼び出し、相手は大振りの西洋剣を構える。

 

『やっぱり、こうなるのね……』

『これも良いテストになる、だろう?』

『絶対に最初からこのつもりだったわね……まあ良いけど』

『後、分かってるとは思うが……』

『はいはい、手出しは無用ね。私はあの子の様子を見てみるわ』

 

「お喋りなんて、ずいぶん余裕……!」

 

エメラダは二機の会話を遮り、一息に相手の懐へ飛び込む。

 

『そいつは───失礼したッ!!!』

『……っ!』

 

だが、懐で放たれた拳はその西洋剣の腹で受け止められる。

そして、そのまま剣を振りかぶり───エメラダを投げ飛ばすように振り払う。

 

「……なんて、パワー」

『雪辱戦に機体をパワーアップして臨むのは基本だろう、羽根付きのIS』

「雪辱戦……?」

 

そう言ってこちらを凝視する正体不明機。

その視線……全身鎧で隠されてはいるものの、それには覚えがあった。

そう、あの四機のうち、最後に残ったあの機体だ。

 

『そうだ、羽根付き! 私と、このブレードガッシュが! お前を落とすッ!!』

 

剣を上段に、相手は斬りかかってくる。

 

「(……速い!?)」

『何処を見ている!』

「っ! ぐっ……!!」

 

剣を弾こうとした拳は空を切り、返す刃が腹部を切り裂く。

 

『さあ、闘争はまだ始まったばかりだ』

「…………っ」

 

追撃をせず、ただ中空を漂う相手……ブレードガッシュ。

エメラダはただ、思考するしかない。

相手のスペックは自身を上回っているかと言われれば、それはNOだ。

機体上のスペックはパワーこそ劣るが、クレスケンスの持ち味であるスピードではこちらが圧倒的に有利。

ならば、何故攻撃を受けきれなかったのか。

 

『考え事とは悠長だな───!』

「……!!」

 

再び迫る刃。

身を捩り、今度は回避を試みる。

 

『───甘いッ!!!』

 

刃はエメラダがコンマ数秒前まで存在していた場所を斬り裂き───その流れのまま追尾するような軌道で二撃目を放つ。

 

「───ぁぁぁああッ!!!」

 

寸でのところ、残り数センチも無いような刃との距離。

エメラダはその刃を下から撃ち上げ、その反動で上体を反らす。

そうして刃が通ったのは鼻先。

シールドバリアの表面との摩擦で弾ける火花を目前に、エメラダは最良の一手を打つために動く。

 

「(最大、出力……!)」

 

トルネードハンドの出力を最大に、そして自身を横に回転させる。

猛烈な勢いでエメラダの体は宙を舞い、そしてその体の延長線上にいたブレードガッシュをその遠心力のままに───蹴り飛ばす。

 

『な、に……!?』

「……ッ」

 

当然、自身でも体の制御が利かない程の出力……その反動は並大抵のものではない。

ただし得るものはあった。

それは、思考時間。

 

「(……あの剣の動き、かなり洗練されている)」

 

距離をとれたことで生まれたその思考時間で、機体性能を埋めたソレを探し出す。

 

「(あの剣筋は……)」

 

そう、エメラダは何度か目にしたことがある。

日本の剣道とはかけ離れていて、実戦的。そのくせシステマチックに相手を責め立てる動き。

 

「軍の、剣術」

『……ほう?』

 

その声にはこちらを称賛するかのような色があった。

 

『だが───気づいた所で、どうにもなるまい』

 

ブレードガッシュは剣先をこちらに向ける。

この剣でお前を貫き、殺す───濃密な殺気と共に、暗に告げる。

そして、殺気に比例してエメラダの思考もまた冷たく、冷徹に変わる。

如何に損害を少なく、相手を■す───ただ、それだけを求めるかのようなその姿は、まるで……兵器のようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ……機体名まで漏らしちゃって』

 

深い溜息と共にケルビナは二人の戦闘を見やる。

 

『まあ、良いでしょう。こちらはこちらの仕事をするだけ……』

 

そうして、ISのディスプレイに表示されるのは学園内、アリーナの映像。

 

『……あの子は調子良く稼働しているようね』

 

ディスプレイの映像はアリーナで暴れる紅い巨体……それに取り付けられた内蔵カメラにより映されたものだ。

カメラから送られる映像の中で、ケルビナは巨体と戦う生徒達───気付かずテスターの役割を果たしている彼女たちへその目を向ける。

そして、気付いた。

 

『……まさか』

 

そう、三機のISの後ろ……戦場に委縮して身をすくませるその姿は、資料で見たとおりの姿。

 

『はぁ……仕事が増えたわね』

 

本当に、灯台下暗しとはこのことだろう。

彼女たちが所属する組織……彼らがかかわっている内紛。

それこそが今現在、巷で話題のアヴェ王国内乱。

シャーカーン宰相側への援助を行ってきた組織であるが、その実戦況は悪くなる一方。

そうした組織が逆転の一手として目を付けた存在。しかし、その消息を追い切れずにいた存在。

 

『マルグレーテ・ファティマ───こんな大物がここに居るなんて、ね』

 

そう、アヴェ王国の同盟国……ニサン法国が象徴として崇める大教母。

その立場から公務で国内外にその顔を出すことも極端に少ない、一国家の要石。

そして、アヴェ王国第18代国王の息子にして次期国王……バルトロメイ・ファティマ。

彼の────従妹である。

 

 

 

 





メモ書き

・マルグレーテ
マルーとは仮の名。愛称をそのまま使っているだけとも言う。
原作でも大体同じ立場。ただ、とある事情で身体的成長は遅く、口調も少年的なものとなっている。

・バルトロメイ殿下
原作でのPCの一人。
原作では苦境に立たされていた側であったが、ぶっちゃけISなんてものがあるご時世にクーデターなんて割と難易度が高いものは早々に成功しない。故に殿下の陣営は優勢である。

・ブレードガッシュ
全身装甲。大振りの西洋剣を主武装とする機体。
剣には特殊な加工が施されており、強度は桁違いに高い。それにISのパワーアシスト、搭乗者の高い技術があれば大抵のモノは両断又は叩き潰すことが出来るだろう。
遠距離武装も搭載されているが、搭乗者の卓越した剣技により、出番は少ない。
機動性、耐久性、火力が全て高水準な機体である。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。