インフィニット・ストラトス ~緑翠の人魚姫~   作:夏梅ゆゆゆ

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遅くなったのでまとめがてらあらすじを……

・箒&セシリア、鈴&マルーの試合中、紅い巨体の乱入
・エメラダ、異変を感じて単騎で出撃。外部に居た謎の機体と戦闘に
・マルー足手纏い。3機で巨体に挑むことに
・千冬、一夏、ラウラ、シャルロットの介入決定←今ここ


克己 守られているだけの少女 後編1

 

「こんの……デカブツがぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ガキン、と紅い巨体の装甲に弾かれる。

 

「くっ……」

「───鈴さんっ!」

「……!」

 

巨体の胸部に収束するエネルギー。セシリアの声でソレに気付くも、攻撃後の硬直で避けることは叶わない。

 

「まず……っ」

 

───直後、エネルギーの奔流が鈴に向かって放たれた。

 

「っ…………?」

 

衝撃に備えて咄嗟に目を瞑る鈴。しかし、想像した衝撃は一向に鈴の体へ届かない。

 

「……っ、箒?」

「気を抜くな……とは言っても、仕方の無いことか」

 

気付くと、鈴は箒の打鉄に抱えられて離脱していた。何とか寸でのところで救出されたらしい。

しかし、鈴が危機的状況に陥ったのには理由がある。

現在までの戦闘時間は既に平均の二倍ほど掛かっているからだ。救援を待って居るのもそうだが、なによりも相手の装甲が異様に硬い。

結果、ひたすらに長期戦となってしまっている。集中力が途切れてしまうのも致し方ないだろう。

 

「私の打鉄では奴に決定打を与えることは出来ん、何か方法は無いのか?」

「あったらとっくにやってるわよ……!」

「可能性としてはわたくしのミサイルですが……それでも、一撃で倒せるかどうかは分かりません。使い切りな以上、慎重にならなくては……」

「あーもう……! そんなことは分かってんのよ! 今問題なのは、奴が一向に隙を見せ無いことでしょーがっ!!」

 

巨体の戦法はシンプルなものだ。危険になりそうな攻撃は防ぎ、それ以外は装甲で受け、反撃する。しかし、現状こちらの攻撃手段に有効打が一つしかない以上、無策に撃っても対処されるだけ……故に、先ほどから隙を見出すために尽力しているのだが、いかんせん相手の防御力が高すぎる。攻撃を無視される影響で隙を作るための攻撃が逆にこちらに隙を出してしまう始末である。

 

「……やはりここは救援を待つしかないか」

「そのようで……!?」

 

その時、紅い巨体の挙動が変化を見せる。

今まで反撃に徹していた巨体が各部の砲門を一斉に開いたのだ。

 

「皆さんっ、避け────」

 

そして、アリーナが光と爆風に包まれる。

紅い巨体から放たれた胸部から放たれるエネルギー波……重力を純粋な破壊力へと変換した重力砲はアリーナに張られたバリアに乱反射して地面を抉り、体の至る所から発射された50にも昇るマイクロミサイルがアリーナ内を蹂躙する。

先ほどまでの戦いとはまるで違う、単純な「力」による蹂躙。ISの兵器としての側面を極限まで煮詰めたモノ。

見るもの全てにその印象を植え付ける威容は、まさしく暴力の化身と言える代物だろう。

 

「……げほっ、ぶ……無事ですか皆さん……?」

「何とか、な……奴が碌に狙いも定めないおかげで助かった」

「ですが、何故そのような……」

「……ッ!!」

「り、鈴さん!?」

 

土煙が蔓延する中、無事を確かめ合う。

しかし、鈴は弾かれたように土煙の真っただ中に突入する。

 

「マルーっ、無事!? 何処に……!」

 

そう、アリーナの後方にはマルーが居た。

アリーナの全方位に向けられた攻撃。あの大火力に彼女が巻き込まれていたらどうなるか……鈴は悪い想像を振り払うかのように一心不乱に彼女を探す。

そして、視界の端、煙の切れ目からマルーの姿を見つける。

 

「……けほっ、けほっ」

「マルー! 良かった、無事───」

「……っ!? 鈴、後ろ!!」

「────なっ……!?」

 

煙をかき分け、背後に現れたのは紅い巨体。

完全に意識の外から現れた巨体は鈴の矮躯をハンマーのような腕部で撥ね飛ばす。

ダメージこそISのバリアに阻まれて軽減されるが、搭乗者への衝撃は計り知れたモノでは無い。

10tトラックに正面衝突されたかのような衝撃を全くの不意打ちに近い形で受けることになった鈴は、声すら上げることが出来ずにアリーナの壁にクレーターを作りながらその身を沈めることになる。

 

「鈴!?」

 

駆け寄ろうとするマルー。

しかし、紅い巨体はその行く手を阻み、首元を締め上げるようにして掴み上げる。

 

「がっ……」

「マ、ルーっ……!」

 

もがけども、その鋼鉄の腕はピクリとも動かない。

そして、紅い巨体はマルーを掴んだままゆっくりと上昇を開始。侵入口からそのまま去ろうとする。

 

「待ち、なさ……っ!」

 

声を上げた瞬間、巨体の空いているほうの手からフィンガーミサイルが発射され、鈴は壁にさらに強く叩き付けられる。

 

「り、ん……!!」

 

その蒼い瞳から涙を流すマルー。

しかし、無情にも巨体は上昇を続け────中途で、その動きを止めた。

 

「えっ……?」

「っ、かはっ、はぁっ……」

 

巨体が動きを止めた所作で、腕の拘束からマルーは解き放たれる。いや、動きを止めたのではない……動きを止められた(・・・・・・・・)のだ。

鈴が目をやるその先。アリーナの外部……そこに佇む3機のISの姿。

 

「───一夏、シャルロット……やれ」

「ああ───言われなくても」

「一夏、合わせるよ!」

 

眼帯を外し、金色の眼を露わにした銀髪の少女……ラウラは二人にそう言い、一夏、シャルロットの二人はその手に武器を構える。

 

「行くぞ、ヴェルトール……!」

「着いて来て、ラファール!」

 

シャルロットの手に持つ巨大な盾……その装甲は既に開かれており、中から射出される杭がバリアを穿つ。

そうして出来た綻びから、ヴェルトールは一気にアリーナ内へと侵入する。

 

「ブースター、駆動」

 

目に入るのは壁に満身創痍といった状態でもたれ掛る鈴の姿。

 

「篠ノ之流、終の太刀」

 

装甲の各部が損傷しているセシリアに箒、苦しそうな表情のマルー。

 

「─────」

「墜ちるのは、お前だけだ……!」

 

そして、飛び込んでくる一夏に対して両腕の砲門を向ける紅い巨体。

湧き上がる怒りを燃料に冴えわたる雪片の切っ先は、その砲門を一刀の下に斬り伏せる。

 

「奥義────」

 

返す刃、一瞬の閃き。

雪片の切っ先は既に一夏の腰元へ降ろされ、一夏は先程の体勢で固まる巨体に背を向ける。

 

「────冥月」

 

瞬間、大きく何かが軋む音がした。

音の発生源は紅い巨体……その巨体が腰から斜めに両断されていたのだ。

一瞬の静寂がアリーナを包み、そして、地面に鋼鉄がたたきつけられた鈍い音がその静寂に終わりを告げる。

 

「終わった、のか……?」

「ですわね、流石は我らのクラス代表といったところでしょうか」

「鈴……!」

 

安堵の息を吐く箒とセシリア。

そして、自由の身となったマルーは鈴の元へと急ぐ。

 

「鈴、鈴! 大丈夫……!?」

「るっさい……頭に響く……」

「ご、ごめん……でも!」

「あたしはへーきだから、自分の心配をしなさいよ……」

「よかった……! よかったよぉ……!!」

「だからうるさ……!」

 

視線の先、沈黙していた紅い巨体の腕がこちらに伸ばされている。

そして、鈴は気付いてしまった……その巨体は、まだ機能を停止していないことに。

 

「マルー……!!」

「……っ!」

 

砲門が斬られていた所作で数発が暴発、見るも無残な状態に腕は成ったが、その砲門から放たれたミサイルは文字通り全ての残弾と言わんばかりの量。数発など大した問題とならない。

 

「ラウラ!」

「分かっているッ!!」

 

ラウラの金色の瞳が再び輝く。

AICで幾つかの弾を止め、シャルロットはその隙に撃ち落とそうとするが、一手遅い。

 

「間に合わない……!?」

「くっ……マルー、逃げなさいっ!!」

 

鈴は声を荒げる。しかし、彼女は一向に動こうとしない。

それどころか、鈴の前で盾を掲げ、ミサイルに相対している。

 

「マルー……!?」

「ボクね、悔しかったんだ」

「何を……!」

 

マルーは依然として動こうとしない。

 

「いつも守られてばかりで、大切な人だけが傷つく。そんなのはもう嫌だから」

 

鈴が何かを叫ぶ。マルーはそれがどこかおかしくて、くすりと笑う。

足は先程から震えている。

指先は盾を取り落とさないように必至だ。

唇は言葉がうまく紡げているのが不思議なくらいで、色も真っ青。

 

「怖いけど……」

 

大切な人がまた傷つくより────

 

「────怖くない!」

 

そうして、マルーの視界は白く染まった。

 

 

 

 





中々執筆時間が取れない環境+軽いスランプでかつて無いほど遅れました(土下座)
これからも遅々たるモノですが何とか更新しますので許して許して()
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