風紀の狂犬   作:モノクロさん

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狂犬復活

 風紀委員会本部に、とある荷物が届いた。

 

 それを受け取った小鳥は、満足気に笑みを浮かべながら、ダンボールの封を開け、中身を確認する。

 

「ははぁ〜届いた届いた届きました。待ちに待ちましたよ本当に」

 

 小鳥の手には鳥の嘴が付いた様なマスク。少し前に、便利屋68との戦闘で破損した為、新しく注文していた物だ。

 

 小鳥はそれを装着してフィット感を確認しながら、近くにいたイオリに声をかけた。

 

「イオリちゃんイオリちゃん、どうですか? 似合ってます? 似合ってます?」

 

「ん、似合ってるんじゃないか?」

 

「えへへ〜そうですか〜。イオリちゃんに褒められると照れちゃいますねぇ」

 

 書類作業中のイオリは、ちらりと小鳥に視線を向け、簡素に応える。

 

 しかし、小鳥はマスク越しでも分かるぐらい嬉しそうに笑みを浮かべ、マスクを外してから様々な角度から鑑賞し始めた。

 

 そんな小鳥の様子を気にすることなく、イオリは目の前の書類にペンを走らせていた。

 

「それで、最近はどうなんですか? 不良生徒達の取り締まりの方は」

 

「最近は、そこまで大きな騒動は起きてないな。まぁ、油断出来ないけど」

 

 美食研究会は突発的に暴走するし、温泉開発部も一時的に活動が下火に見えたが、最近また活動を再開したらしい。

 

 部長の鬼怒川 カスミが脱走したという噂は本当だったようだ。

 

 他にも、本能に忠実なゲヘナ生徒らしい事件や問題行動が毎日報告され、その対応に追われている。

 

「小鳥ちゃん、明日は活動に参加するんだろ?」

 

「ですです。明日はこのマスクのお披露目会をかねて、じゃんじゃん取り締まってやりますよぉ」

 

「あまり、やり過ぎるなよ」

 

「はいはーい。分かってますって〜」

 

 本当に分かっているのか不安になる間延びした返事だ。しかし、そんな返事にもイオリは慣れた様子で、それ以上は何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、風紀委員会として活動を再開した小鳥は、偶々近くで別件で動いていたヒナと合流し、温泉開発部達を取り締まる事となった。

 

「いやぁ、まさかヒナ委員長とご一緒できるとは、小鳥ちゃん大感激ですな」

 

 元々は報告を受けた小鳥とその他の風紀委員達で対処する予定だったが、ヒナから近くにいるから合流しようと連絡を受け、急遽、ヒナと小鳥の2人での部隊で温泉開発部を前後から挟撃する作戦に変更した。

 

 結果、ヒナの姿を確認した温泉開発部は応戦する事なく撤退……しようとした所を、小鳥率いる風紀委員達の挟撃を受け混乱。

 

 更に運が悪い事に、ヒナと小鳥に苦手意識を覚えていたカスミは、2人の姿を見た途端に戦意を喪失。

 

 まともな指揮系統が副部長であり、現場班長の下倉 メグだけとなった温泉開発部は抵抗らしい抵抗も出来ぬまま、その多くが拘束された。

 

 そして……。

 

「カ〜ス〜ミちゃ〜ん」

 

「ひっ…ひっ……っ!!」

 

 戦意を喪失し、パニック状態となっていたカスミを連れて、その場から逃げ出そうとした温泉開発部のメンバーを1人残らず殲滅した小鳥が、腰を抜かしてへたり込むカスミに、ゆっくりと近付いた。

 

「お久しぶりでありますなぁ。脱走したとは聞いてましたが、こうしてまた会えて、私はとても嬉しく思いますよぉ」

 

「う、ううぅ……」

 

 ニコニコと笑みを浮かべ、カスミの目と鼻の先でしゃがんで目線を合わせる。

 

 しかし、その笑みが逆に恐怖を煽り、カスミは目に涙を浮かべながら小鳥から後ずさろうとするも、小鳥がすかさずカスミの両頬を両手で包み込む様に掴み、逃げ道を塞いだ。

 

「どうして、逃げますかなぁ?」

 

「ひぅっ……!!」

 

「あぁ、別に怒ってる訳じゃないんですよぉ。今、私はとても気分が良いのです」

 

 便利屋68との戦闘で破損したマスクを新調した事。

 

 温泉開発部が活動していたすぐ近くで、ヒナが別件で動いていたから、合流して事にあたることが出来た事。

 

 他にも様々だが、特にこの二つが小鳥の気分を高揚させていた。

 

「カスミちゃんも、久し振りの温泉開発楽しんだでありましょう? 爆弾をバンバンさせて、さぞ気分が良かったでありましょう?」

 

 親指の腹の部分でカスミの頬を優しく撫でる。しかし、マスクから覗く目は捕食者のそれだ。

 

 それを間近で見たカスミの心境は穏やかではない。

 

「私も、自慢の愛銃で相手をバンバンするのが大好きであります。これって、同じ趣味を共有しているみたいで嬉しく思うでありますよ」

 

 『の』の字を描くように、カスミの頬を撫で回し、ゆっくりと親指を唇へと近付ける。

 

「カスミちゃんも、私と同じであります。とても、良い趣味であります。そんなカスミちゃんに、私からお願いがあります」

 

「ひっ……ひっ……」

 

 声を詰まらせ、涙と鼻水と涎で顔がぐしゃぐしゃになったカスミの耳元に口を寄せ、優しく囁いた。

 

「その可愛いお口、その口の中をバンバンしちゃって良いですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、風紀委員会の本部にて、『私は風紀委員会に所属しているにも関わらず、不適切な発言をしました。ピエン』と書かれたプラカードを首から下げて正座する小鳥の姿があった。

 

「小鳥ちゃん、今度は何をしたの?」

 

 呆れ気味に問い掛けるイオリに、小鳥はしゅんとした表情で答えた。

 

「ちょっとお灸を据えるつもりの発言だったでありますよ。それをヒナ委員長に聞かれて……」

 

「あー……それで怒られたのか」

 

「はい……とてもピエンでありますよ」

 

「成程ね。委員長と一緒に行動できて、嬉しかったの?」

 

「……はい」

 

「それで、何時も以上に張り切って、失敗しちゃったと?」

 

「……はい、その通りです」

 

「成程ね。まぁ、取り敢えず、その反省の気持ちは次に活かせば良いんじゃないかな?」

 

「はい……次にいかします」

 

 余程ショックだったのか、何時も以上に大人しい小鳥に調子が狂いつつも、イオリはポンポンと肩を叩いた後、再び仕事に取り掛かった。




おまけ
反省中の小鳥ちゃん
(´-﹏-`)「反省しています……」




沢山の感想・評価、本当にありがとうございます!!
とても励みになっています。これからもこの作品を楽しんで頂けたら幸いです。
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