これも全て、閲覧して頂き、感想を沢山頂けたからこそのものです。
本当にありがとうございます。お盆にリクエストして頂いた作品がまだ執筆途中ですが、そちらも必ず投稿しますので、もう少しだけお待ち下さい。リクエスト更新後、改めてリクエストを募集する予定ですので、何かリクエストがあれば、ハーメルン専用のアカウントにてマシュマロを設置していますので、そちらにご希望内容を投稿してください。
今後の彼女達の処遇は、小鳥が一存で決める事ではない。故に、彼女達の返答を待つ事にした小鳥は、片付けの途中で食糧の備蓄が尽きかけている事を思い出した。
レンと2人だけなら問題無かったのだが、今はかなりの大所帯。今日の夜までなら何とかなるのだろうが、明日以降の食糧とついでに彼女達用の医療キットは確保しておきたい。
他にも衣類などの日用品も揃えておきたい所だ。特に下着に関しては、小鳥とレンを基準にして揃えている事もあり、彼女達……その中でもサオリのようにスタイルが良いメンバーやヒヨリのようにでっか……格差社会が深刻な子達は窮屈な思いをしている筈だ。
レンからは『泣くな小鳥』と励まされたのが少しショックだったが、そのお礼に『私よりも、幼女趣味の神秘に気に入られたレンちゃんこそ……えへへ』と返してやった。
レンは、小鳥の返答にショックを受けたらしく、暫く隙を見ては脛を蹴ってきたが、室内育ちの柔足では、小鳥の鍛えられた脛にはダメージは皆無といっていいだろう。
話は逸れたが、買い出しが必要になったという事だ。小鳥は、それを彼女達に提案する事にした。
彼女達に提案した後、買い出し組と留守番組に別れる事となった。
人数が人数だ。全員で行動すればそれだけ目立ち、追手の目に留まるリスクも高まる。
そして、話し合った結果、買い出し組は小鳥とレン、そしてサオリとヒヨリの4人となり、残りは全員留守番だ。
場所は近場のそこそこ大きいスーパーに決まった。此処なら彼女達の衣服も用意出来る。これから行動に移すにしても、服が1着しかないのは流石に大変だ。衛生的な問題もあるし、不必要なトラブルに巻き込まれる危険もある。
本来なら、彼女達の自衛の為に弾薬の補充も視野に入れたのだが、まだそれは早い。
弾薬の補充は一種の境界線だ。それを踏み越えるか否かは彼女達の決断を待ってからの方がいい。
サオリもその事は理解しているのだろう。弾薬の補充を要求しないのは彼女自身も、それが境界線だと判断している節がある。
後は、外に出てから黒服に連絡しよう。彼女達の処遇や取引に関しても、それらを含めて報告と相談をするべきだ。
サオリにも、この事は話しておく必要がある。何故なら彼女にも知る権利はある。サオリは彼女達のリーダー的存在だ。他の生徒達を纏める為にも、情報共有は必要だろう。
自分を含め、準備を整えると、留守番組の皆に見送られながら、小鳥達は出発した。
「必要なものは食料と医療用キット、衣類……後は下着も何着か。とりあえずこんな所ですが、他にも欲しいものがありましたら報告して下さい」
「あ、あの……缶詰以外にも食糧を選んでも良いんですか?」
ヒヨリがおずおずと手を挙げながら質問する。良い質問だ。二度に渡り、彼女達には缶詰を提供したのだが、あれはあくまでも小鳥とレンが料理を作れないからであり、缶詰が必須というわけではない。
あくまでも、今というタイミングであれば、消費出来るものに限り、購入する事を許可する事にした。
ヒヨリも含め、彼女達の料理スキルは不明だが、自分達で料理出来るのであれば、必要な具材を購入しても良いだろう。
小鳥が許可すると、ヒヨリは嬉しそうに買い物かごを持って、レンと一緒に欲しい物を物色し始めた。
「サオリさんは良いんですか? 折角ですし、何か欲しいものがあれば、遠慮しなくても良いんですよ」
そう提案するも、サオリは首を横に振る。彼女は、小鳥の隣で静かに周囲を見渡していた。その眼差しは、何かを警戒しているようにも思える。
追手を警戒しているのだろう。それなら問題ない。少なくとも、此処にはレンがいる。彼女の神秘ならば、危険が迫れば、直ぐにでも対応する事が出来るだろう。
「ご安心下さい。此処にはレンちゃんがいます。追手の危険性があれば直ぐに気付きますよ」
小鳥がそう言うと、サオリは一瞬目を見開き、そして、何かを確認するようにレンに視線を移した。
「……小鳥とは別のタイプの神秘という事か?」
「詳しい事は伏せておきますが、そんな所です。恐らく、留守番をしている彼女達の事も、問題無い筈ですよ」
「そうなのか?」
サオリが、小鳥の返答に意外そうな表情を浮かべる。彼女は、レンをただの子供として見ていたようだ。
確かに見た目は幼く、体躯も華奢で頼りない。それでも、その神秘は小鳥とは違う意味合いで有用だ。
サオリは、レンの神秘を目にしていない。だから、彼女の反応も無理はない。
しかし、その事をサオリに伝える必要はないだろう。あくまでも、神秘の内容を提示するのは本人次第。本人の許可なく話すのは、小鳥の流儀に反するからだ。
サオリも、小鳥のレンに対する信頼を感じ取ったのだろう。それ以上は追及せず、静かに視線を前方へと戻した。
そんなやり取りの中、レンとヒヨリの2人は、自分が食べたい物や、留守番組がリストアップした品々を次々と手に取っている。
レンとヒヨリ、小鳥とサオリの両名の距離が離れている状態だ。今なら、サオリだけに黒服の話をする事が出来るだろう。
「サオリさん」
「なんだ?」
「今から話す事は他言無用……という程ではありませんが、他の子達に気取られないように気を付けて下さい」
「どういう事だ?」
小鳥の言葉に、サオリは訝しげな表情を浮かべる。彼女からすれば当然の反応だろう。そんなサオリの疑問に答えるように、小鳥は言葉を続けた。
「恐らくですが、私が今、身を寄せている拠点の持ち主と、貴女達アリウス分校の生徒達を従えているマダムという人物は、同じ組織に所属している可能性があります」
「っ……それは本当か?」
小鳥の言葉に、サオリは困惑する。それも無理はないだろう。
それでも、平静を保とうとしているのは流石と言わざるを得ない。
「はい。恐らくとは言いましたが、私としてはほぼ確定だと思っています。ですが、前もって言っておきますが、私は貴女達をマダムとやらに引き渡すつもりはありません。それを踏まえた上でお話を聞いて下さい」
「……分かった。話を続けてくれ」
サオリが先を促す。警戒心が強くはなったが、許容の範囲だろう。小鳥は、そんなサオリに頷き返すと、話を続けた。
「私は、マダムと同じ組織に所属する黒服という人物と協力関係にあります。あくまで対等な形として、その上で、私は彼等と、多少は交渉する事が出来る立場にあります」
交渉材料となる内容は伏せておこう。追求されたら色々と面倒だ。
「その上で、私は黒服を介して、マダムに取引を持ちかけたいと思っています。私が要求するのは勿論……」
「待て、何故お前がそこまでする必要がある。私達は敵同士だった筈だ」
小鳥が言い終える前に、サオリが言葉を遮る。彼女の疑問は尤もだ。一時的にとはいえ、食事と寝床を提供された。負傷した仲間の手当てもしてくれた。
それだけでも、十分過ぎる程の待遇だというのに、それに加えて、仲介人を通してマダムと取引をしようと言うのだ。
サオリが警戒するのも無理はない。しかし、小鳥はそんなサオリに、静かに首を横に振ると、その答えを口にした。
「えぇ、私と貴女達は敵同士です。今でも私は、貴女達を許す事は出来ません。これが私の本音です。いくら謝罪の言葉を並べようと、いくら贖罪の道を歩もうと、貴女達が犯した過ちは消えませんし、絶対に許す事はありません。ですが……」
小鳥はそこで言葉を止める。そして、サオリに視線を向けた。
サオリは、小鳥の言葉の続きを待っているのだろう。静かに彼女を見つめ返している。そんなサオリに、小鳥は言葉を続けた。
「見てしまっては仕方がありません。仲間に追われる貴女達を見てしまったのです。あれは……私にとっては凄く辛い」
昨日までは仲間だった筈の子達から銃口を向けられたサオリ達を見てしまった。その姿に、己の過去を不謹慎ながら重ねてしまった。
友人がいた。しかし、たった1つの出来事で関係が崩れ、孤独となった。
それでも、小鳥にはヒナがいた。アコがいた。イオリやチナツ、風紀委員会の皆がいてくれた。彼女達のお陰で救われた。
しかし、サオリ達はどうだ?
彼女達に手を差し伸べる者は何処にいる?
それを思い出し、あの時、サオリ達を見捨てようとした己を恥じた。情け無い。私情で差し伸べられた筈の手を引いたなんて、恥知らずもいい所だ。
これは自己満足であり、ただの偽善だ。それ以外のなにものでもない。
サオリはそんな小鳥の返答に、静かに目を伏せ、そして、レンとヒヨリへと目を向ける。
レンとヒヨリの2人は、買い物に夢中でこちらには気付いていない。それを確認した後、サオリはゆっくりと口を開いた。
「小鳥……お前は難儀な性格なんだな」
色々と気を遣っての言葉選びだったのだろう。それでも、その返しに小鳥は思わず笑ってしまった。
「えぇ、本当に難儀な性格です。ですが、それが私にとって、凄く嬉しい事なんです」
小鳥達が拠点とするマンションの周囲を、ガスマスクを装備した集団が包囲する。各々が小型の機械を背負い、周囲を警戒しながら、リーダー格である人物が通信機を手にした。
「マダム、部隊の配置、整いました」
『そうか、では、作戦通りに』
「了解。目標は秤 アツコ。他の反乱分子は排除します」
手短に通信を終えると、ハンドサインで連携を取り、背負っていた機械を地面に下ろす。
反乱分子を匿った人物の中に、索敵能力に優れた者がいる。オカルト的な力との事だが、それを妨害する機械のお陰か、彼女達に気付かれずに済んだようだ。
これも文明の利器とやらかと思いながら、彼女達はマダムの指示のもと、行動に移すのであった。
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