訂正させて頂きました。
ートリニティ自治区ー
「アリウスの自治区に行くには、トリニティ地下のカタコンベを通過する必要がある」
移動の最中、サオリはアリウスの自治区に向かう為の条件について小鳥に説明していた。
カタコンベの入り口は、確認されているだけで300か所あり、その内、本当の入り口は限られているという。
カタコンベの内部は一定の期間で変化し、足を踏み入れる度にルートが変更され、ある種の迷宮と化しているという。
これまで、アリウスの自治区がトリニティに発見されなかった理由が、この迷宮にあるとサオリは語った。
任務の際は、迷宮のルートは暗号として伝えられているが、そのルートも、今日の深夜の0時には変更されて、それを過ぎれば、アツコの救出は不可能となる。
襲撃班がアツコを攫ったタイミングが早かったのは、これも理由として挙げられるのだろう。
彼女達からしても、時間に制限がかけられている以上、悠長な事はしていられない。
同じく、監視として派遣された部隊も、今日の深夜0時がタイムリミットといった所か?
(それなら……最悪、警戒中の部隊と監視部隊の挟撃も視野に入れた方が良さそうですね)
サオリに視線を向けると、彼女も同じ事を考えているらしく、時折背後を警戒しながら、アリウス自治区へと歩みを進めている。
「恐らくマダムは、入り口周辺に部隊を展開しているだろう」
「私達の侵入は折り込み済みという事ですね
「あぁ。だが、突破する」
「言っておきますが、手加減は出来ませんよ」
「分かっている。その上で頼む。私達をアツコの所まで連れて行って欲しい」
その言葉に、小鳥はニヤリと笑みを浮かべた。
「良いですねそれ。私はマダムの仲間と協力関係にありますからね。アリウスの生徒を自治区まで護衛するのも吝かではありません」
小鳥の言葉に、サオリもハッとなり、思わず笑みを浮かべた。
「あぁ、助かる」
「2人とも、お喋りはそこまでにして、見えてきたよ」
サオリと小鳥の話を遮るように、ミサキが口を開いた。ミサキの視線の先には、カタコンベに繋がる地下の通路がある。その周囲には武装したアリウス分校の生徒達が警戒にあたっており、此方に気付くと同時に、警戒の色を更に強めた。
「新調した武装の試し撃ちには丁度良さそうですね」
小鳥はそう言うと、消失した世界で購入したマスクの類似品を被り、愛銃の持ち方を近接専用に切り替えた。
「陣形を崩します。ミサキさんは援護して下さい。サオリさん、行きますよ!!」
「あぁ、了解した!!」
サオリと小鳥は頷き合うと、同時に地面を蹴った。それに反応するように、アリウスの生徒達が銃を構え、一斉に発砲する。
弾幕が飛び交う中、射程外からミサキのRLが飛来し、着弾と同時に爆炎が巻き上がった。
小鳥は一直線に爆炎の中を突っ込み、サオリは回り込む形で追随。
熱風が身体を撫で、チリチリと皮膚が焼かれる感覚に、小鳥は再び笑みを浮かべた。
敵の攻撃が止んでいる。視界が悪い中、無闇に攻撃する事を避け、防御に徹しているのだろう。
その隙を逃さず、小鳥は地を蹴りアリウスの生徒達に肉薄すると、リーダー格らしき人物目掛けて銃床を叩きつけ、そのままの勢いで他の生徒達を薙ぎ倒しながら突き進んだ。
アリウスの生徒達は、小鳥の予想外の攻撃に反応が遅れている。そして、指揮系統が混乱している今こそ、最大の好機。
皆の意識が小鳥に向けられる中、回り込んで来たサオリが、その勢いのまま弾丸をばら撒き、敵陣の防御に綻びを生じさせた。
意識が小鳥とサオリの両名に分散され、更に混乱が広がる。その混乱の隙を縫い、ヒヨリは2人から離れた位置にいるアリウスの生徒達を狙撃し、ミサキはHGに切り替えてからは、アリウスの生徒達が放つ弾幕の雨を潜り抜けながら、1人ずつ確実に仕留めていった。
時間にして僅か数秒。通路を警備していたアリウスの生徒達は、碌に抵抗も出来ないまま全滅した。
カタコンベに繋がる通路は、先程までの喧騒が嘘のように静まり返る。
小鳥はマスクを外して周囲を見渡して伏兵がいないか確認すると、ふぅと息を吐きながら愛銃に銃弾を装填した。
「悲しいですねぇ。私はただ、皆さんの仲間を自治区に送りに来ただけなのに。これはもう、正当防衛じゃないですか」
そう愚痴りつつ、倒れたアリウス分校の生徒達から予備の弾倉を回収し、それをサオリに投げ渡す。
この先も敵はいるのだ。補充するに越した事はない。サオリは小鳥から投げ渡された弾倉を銃に装填しつつ問い掛ける。
「相変わらず凄いな。あの爆炎の中、物怖じせず突き進むとは」
「ははは、ゲヘナでは日常茶飯事でしたからね。あの程度、どうという事はないですよ」
「そうなのか? それは物騒だな」
「えぇ、物騒でいて、それなりに楽しい所ですよ」
と、トリニティよりもゲヘナを憎む先達者達からの教えを受けたサオリからすれば、眉唾な話だろう。
思わず苦笑を浮かべるサオリに、小鳥は肩を竦めながら、マスクを装着し直し、入り口へと歩みを進めた。
幾つかのポイント事に、アリウスの生徒達が待ち構えていたが、小鳥達はそれを苦もなく返り討ちにし、地下道を進んでいく。
「この先には訓練されたエリート兵が待ち構えている筈だ」
「という事は、此処からが本命という事ですね」
「あぁ、だが問題ない。強行突破する」
「分かりました。ヒヨリさんとミサキさんは引き続き援護をお願いします」
「はい、任せてください」
「了解」
ヒヨリとミサキが頷くのを確認すると、一行は更に地下道を進んでいった。
「あれがそうですね」
暫く進んでいると、入り口を警戒していたアリウスの生徒達とは装備の違う集団を発見した。
全員強い。その中でも特に、後ろに控えるMGを装備した人物は別格だ。
訓練されたエリート兵。それが意味するのは、アリウス自治区に繋がるカタコンベ入口の防衛を任される程の実力を持つという証明に他ならない。
「……来たか」
MGを携えた人物。装備越しでもわかる屈強な肉体とそれに裏打ちされた自信。その風格は、各校の強者に通ずるものがある。
「自治区までの防衛を任されるだけあって、中々強そうですね」
「あぁ。だが、此処で止まる訳には行かない」
サオリはそう言うと、リーダー格であるMGを装備したエリート兵に向かって銃口を向け、引き金を引いた。
放たれた銃弾は吸い込まれるようにリーダー格のエリート兵に被弾するも、その尽くが弾かれた。
「無駄だ。私の身体は皮膚から筋肉、骨に至るまで金属と同等の強度を誇っている。その程度の弾幕では傷一つつく事はない」
「そう。それじゃあこれはどう?」
銃弾が駄目ならとRLを放つミサキだったが、それすらも片手で塞いだどころか、爆発すらも意に介さず、じっとサオリ達を見据えていた。
「成程。確かにこれは厄介ですね」
サオリと小鳥は、MGを装備したエリート兵の圧倒的な力の前に、思わず冷や汗を浮かべた。
「どうした? これで終わりか? ならば次は此方の番だな。行くぞ」
MGの銃口がサオリと小鳥を捉え、今まさに、引き金を引かんと指に力を込めた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ「邪〜魔♪」っ!!!!」
咆哮と共に、MGで小鳥達を蜂の巣にせんとしたそのタイミングで、何者かがリーダー格のエリート兵の頭を鷲掴みにし、そのまま勢いよく地面へと押し潰した。
リーダー格のエリート兵は、何が起こったのか分からず、一瞬だけ困惑した。
しかし、自身の身体に違和感がある事に気付き、そして驚愕した。
鋼の如く鍛え上げられた筈の肉体が、踏み潰されたアルミ缶のようにひしゃげていたのだ。
「な、何だ……これは……何が起こっ……っ」
そんな呟きがリーダー格のエリート兵の最期の言葉となった。彼女は訳も分からぬまま意識を刈り取られ、ヘイローが消失したのだった。
その言葉を最後に、辺りが静寂に包まれる。小鳥達も、そしてエリート兵達も、目の前で起こった事に理解が及ばず、茫然と立ち竦んだ。
何故、この時、このタイミングで、彼女がいるというのだ?
トリニティの三大分派の1つ、パテル分派のトップにして、生徒会のティーパーティーのメンバー。
聖園 ミカが何故、此処にいる?
「此処にくると思ってたけど、タイミングバッチリだったみたいだね⭐︎まぁ、でも、このタイミングだと悪役登場⭐︎って所かな?」
満面の笑みを浮かべて話し掛けてくるミカに、サオリ達の表情は困惑に染まる。
「聖園 ミカ……な、何故、此処に……」
思わずといった様子で問い掛けるサオリに、ミカは首をカクンと傾げた。
「何故だろうねぇ、でも、どうしたのかな? そんな……」
次の瞬間、ミカが纏っていた雰囲気がガラリと変わった。
「魔女でも見たみたいな顔しちゃって……」
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