風紀の狂犬   作:モノクロさん

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誤字報告ありがとうございます。
訂正させて頂きました。


最凶のお嬢様

 ミカの冷たい眼差しが、サオリを正面から見据える。敵意とは違う何かを含んだ視線に、サオリは思わず身を強張らせた。まるで、心臓を鷲掴みにされたような感覚。

 

 先程までの無邪気さは何処にもなく、得体の知れない何かでサオリ達を威圧していた。

 

 その圧を間近で感じたアリウスのエリート兵達は、身震いしながらも、一斉に銃口をミカへと向けた。

 

 リーダー格を失って尚、この対応の早さ。流石はアリウスの自治区を防衛するエリート兵と賞賛すべきなのだろう。

 

 放たれる銃弾は、寸分の狂いなくミカの全身を穿ち、本来ならそれで、終わる筈だった。

 

 しかし、ミカの肉体に、銃弾は傷一つ付ける事なく弾かれていく。その光景に、ミカの足元で折り畳まれるように潰されたリーダー格のエリート兵と同等の肉体強度を誇るのだと判断した1人が近接戦にてミカの排除を試みた。

 

 しかし、その判断は間違いだったと言わざるを得ない。銃の持ち手を変え、顎を的確に打つ事によって脳を揺さぶり、意識を奪わんと力の限り殴打する。

 

 その試みは、ミカの顎に銃床で殴打するという形を成す事に成功はした。だが、顎を殴打した時、エリート兵の腕に感じたのは、巨大な鋼鉄の塊を殴打した時のような感覚。

 

 如何に全力で衝撃を与えようと、鋼鉄の塊に守られた脳を揺さぶる事は不可能だ。

 

 恐怖に駆られたエリート兵は後退るも、ミカにガスマスクごと顔を鷲掴みにされ、その膂力によって足が地面から離された。

 

「もぉ〜痛いなぁ⭐︎」

 

「っ!! っっっっ!!!!」

 

 必死にもがくが、ミカの腕はビクともしない。それどころか、その細腕からは想像できない腕力と握力に、ガスマスクは音を立てながら砕け、エリート兵の顔面が露になった。

 

 恐怖に慄く顔を見て、ミカは再び首を傾げる。

 

「ねぇ、何で貴女も、私を怖がってるのかな?」

 

「ひっ!! や、やめ……っ!!」

 

 ミカは、酷く歪んだ笑みを浮かべると、そのままエリート兵の頭を前後に数回揺さぶり、パッと手を離した。

 

 解放されたエリート兵だったが、彼女の脳は頭蓋骨内で前後に激しく打ち付けられ、脳震盪を起こし、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。

 

 ミカの周囲にいたエリート兵は、その光景に恐怖し、一様に後退る。理解したのだ。自分達とミカの間にある圧倒的な力の差を。

 

 勝てない。どんなに弾幕を張ろうと、銃弾が直撃しようとも、ミカの肉体に殆どダメージは通らないだろう。

 

 近接戦も、彼女のフィジカルの前では超大型の獣を相手にするようなものだ。

 

 撤退すべきだ。このまま此処に留まれば、間違い無く全滅する。

 

 マダムに報告し、増援を要請すべきだ。皆の思考が一致し、1人がミカに背を向け走り出し、残ったエリート兵達は、時間を稼ぐ為に前に出た。

 

「お前達!! 覚悟を決めろぉ!!」

 

「「り、了解!!」」

 

 撤退する仲間から意識を逸らす為に、一斉に銃撃する。銃弾がミカの肉体を穿つ、まるで何事も無いようにその歩みは止まらない。

 

 悠然と歩いてくるミカに恐怖を抱きながらも、エリート兵達は攻撃の手を止めなかった。

 

 だが、そんな抵抗も虚しく、ミカは遂に、1人のエリート兵の目の前にまで接近した。その距離、僅か数メートル。

 

 まるで蛇に睨まれた蛙に視線を外す事も出来ず、恐怖に支配されたエリート兵はガクガクと身体を震わせる。

 

 ミカはその様子に肩を竦めると、そのエリート兵の首を掴み、そのまま片手で持ち上げた。

 

 持ち上げられたエリート兵の足が地面から離れ、ミカの剛腕によって首を絞められたエリート兵は、声にならない叫びを上げ、足をバタつかせる。

 

 だが、その足は虚しく宙を蹴り、ミカは笑みを浮かべてエリート兵を見つめた。

 

 その眼差しに恐怖し、声にならない悲鳴を上げるエリート兵だが、ミカは彼女から視線を外し、片手で銃口を他のエリート兵に向けると、

 

「ばいば〜い⭐︎」

 

 一切の躊躇なく引き金を引いた。放たれた銃弾がエリート兵の身体を穿ち、その意識を一瞬で刈り取っていく。

 

 訓練されたアリウスが誇るエリート集団。それが、たった1人の少女すら足止めする事も叶わず、一方的に蹂躙されてゆくなか、撤退したエリート兵は必死に走り続けた。

 

 後少しで離脱する事が出来る。そうすれば援軍を呼んで、奴等を始末する事が出来る。仲間の仇を必ず……。

 

 エリート兵は、そう考えながら必死に走り続ける。そして、戦線から離脱する事が出来たと、安堵した刹那、背中に強い衝撃を受け、身体を逆くの字に曲げながら吹き飛ばされた。

 

 エリート兵は、衝撃を受けた瞬間に意識を飛ばし、何をされたかすら理解出来ず、地面へと倒れ込む。背後から攻撃を受けた事で、ガスマスクが外れており、エリート兵の泡を吹いて失神する素顔が露になっていた。

 

 抵抗するエリート兵達を一掃したミカは、片腕で締め上げて失神したエリート兵を持ち直し、撤退するエリート兵に向かって投擲。

 

 銃弾程の速さではないが、野球のボールを豪速球で投げる速度と同等の速さで投げられたエリート兵は、勢いを落とす事なく撤退するエリート兵に被弾。エリート兵の集団は全滅した。

 

 1分と経たない内に、アリウス自治区へと繋がるカタコンベ入口の防衛はミカ1人で崩壊したのだった。

 

 小鳥達がその様子を呆然と見守る中、漸く一息ついたミカは、サオリ達に視線を向けた。

 

「うんうん、やっと邪魔者はいなくなったね。それじゃあ……話の続きをしよっか⭐︎」




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