風紀の狂犬   作:モノクロさん

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誤字報告ありがとうございます。
訂正させて頂きました。

今回は少し短めです。


小休止

「……大丈夫か。小鳥?」

 

 ミカの追跡がやんでから暫くして、漸く一息つく事ができた。

 

 先を走るサオリが、遅れて走る小鳥を気遣って声を掛けたのだが、当の小鳥は、腹部を押さえ、苦悶に顔を歪めながらサオリに言葉を返した。

 

「……大丈夫ですよ。とはいえ、思っていたよりも、回復が遅いのが驚きですがね」

 

 走る分には回復したとは言ったが、思った以上に回復が遅い。

 

 エデン条約での弾道ミサイルによる爆発の余波によるダメージも、普段なら直ぐに回復する筈が、ダメージを残した状態でアリウスと一戦交える事となった。

 

 とはいえ、あの時は瓦礫に押し潰されて折れた骨が、ある程度回復した事から、回復力としては常人のそれとは異なるのだろう。

 

 それでも、ある一定以上のダメージを受けた場合、回復するのに時間がかかるというのは、小鳥自身も知らなかった事であり、この機会に知れた事はある意味、好都合だったのかもしれない。

 

 己の能力を過信してはいけない。身を以てそれを知れたのは、良い経験だったと言えるだろう。タイミングとしては、この上なく最悪な事を除いてはだが……。

 

「……少し休もう」

 

「何を言ってるんですか。貴女は私よりもアツコさんを優先して……」

 

「優先した上で休んだ方が良いと言っている。アリウスの自治区につけば、自ずと戦闘になる。万全の状態でなければ、部隊全体が危険に晒されるからな」

 

「それは……っ」

 

 サオリの言葉に、小鳥はミサキとヒヨリを見る。2人共、言葉には出さないが、サオリに賛同しているのだろう。

 

「すみません。ムキになってました。そうですね。少しだけ休ませて下さい」

 

「分かった。もう少ししたら訓練場がある。そこなら警備の手が薄い筈だ」

 

 サオリの言葉に従い、訓練場に侵入した。幸いな事に警備の数は少なかったのか、それとも自治区に回しているのか定かではないが、訓練場には警備のアリウスの生徒達の姿は見られない。

 

 ミサキとヒヨリが周囲を警戒する為の偵察に行き、サオリは小鳥の怪我の具合を確認する為に、小鳥の腹部を触診した。

 

 変色した腹部に、サオリは顔を顰める。エデン条約にて、小鳥と一戦交えたからこそ、彼女の身体能力……それも、耐久性に対して、ある程度の理解があった。その小鳥が、たった一撃で此処までのダメージを受けた事に、サオリは動揺を隠せなかった。

 

 小鳥をもってしてもこれなのだ。狙われていた自分が同じような状況に陥ったら、これだけでは済まなかっただろう。

 

 小鳥の腹部に触れながら、サオリは己の不甲斐なさを呪った。

 

「すまない。私が不甲斐ないばかりに、お前にこれだけの怪我を負わせてしまった」

 

 サオリの謝罪に、小鳥は首を横に振った。

 

「違いますよ。これは私の慢心と不甲斐なさが招いた結果です。貴女の落ち度ではありません」

 

 それに、あの場において、自分が盾になる事が最適解だったのだ。やるべき事をやった。適材適所というものだ。しかし、サオリは納得のいかない表情を浮かべている。

 

「その顔は2人が戻る前に直して下さいね。貴女はリーダーなんですから」

 

「しかし」

 

「上に立つ者がそんな顔を見せると、士気を下げる原因となりかねません。それは貴女が一番分かっている筈でしょう?」

 

 サオリは押し黙り、そしてゆっくりと頷いた。そんなサオリに小鳥は満足そうに微笑んだ。

 

「ご安心下さい。今は回復に専念出来るのです。こうして休んでいるだけで痛みも落ち着いてきますし、直ぐに復帰出来ますよ」

 

 サオリの不安を払拭させるように、小鳥はそう言った。実際、回復は遅いが痛みは少しずつ引いてきてはいる。この調子なら、1時間もすれば回復できるだろう。

 

 小鳥の言葉に、サオリは漸く表情を和らげて微笑んだ。

 

「そうか、それなら少し仮眠を取ると良い。ミサキ達が戻ったら、今後の事を話しておく」

 

 サオリの提案に、小鳥は頷いて答えた。身体の痛みから落ち着いてきた事により、ほんの少し眠気も感じていたからだ。

 

「分かりました。何かあったら直ぐに起こして下さい」

 

「あぁ、了解した」

 

 小鳥が横になって数秒もしない内に、寝息が聞こえてくる。大分疲弊していたのだろう。サオリは小鳥を起こさぬよう立ち上がると、周囲の警戒をしているミサキとヒヨリの元へと向かった。




おまけ 
夢という名の謎空間(本編とは何の関わりもない)
小鳥:おや……此処は……?

アリウスの自治区で仮眠を取っていた筈だった小鳥は、何故か自分が、黒服が提供したマンションの居間にいる事に気付き、首を傾げる。

小鳥:此処は……マンション? どういう事ですか? 確か私はアリウスの自治区に……それに、部屋が元のままだ……

小鳥:あ〜これは、夢というやつですね。凄いです。貴重な体験です。夢を自覚しながら夢の中にいられるなんて

夢を夢と自覚出来ずに目が覚めるか、夢と自覚すれば、何かをする前に目が覚めるものなのだが、夢を自覚しながら止まる事が出来、小鳥は感激した。

きっと、身体に負担がかかった事が夢に影響を与えているのだろう。

何気なしに自分の部屋ではなく、レンの部屋へと足を運んでみる。もしかしたら夢の中にレンがいるかもしれない。

夢なら……全てが合法である。

期待を胸に、レンの部屋の扉を開けると、そこにはレンではない別の人物が立っていた。

小鳥:え……貴方は……?

人の形を成してはいるが、輪郭が朧げで性別すら判断がつかない。夢特有の謎人物かと思ったが、此方に気が付いたそれは、小鳥に振り返るなり、爽やかな声で話しかけてきた。

⁇?(クロノス):おはようじょ〜!






現実
小鳥:う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!

サオリ:ど、どうした小鳥!! 何があった!!

ミサキ:敵の攻撃? でも、何処から?

ヒヨリ:う、うわぁぁぁぁぁあああん!! 小鳥さんがやられてしまいました!! もうおしまいです!! 私達は何も出来ないまま終わってしまうんです!!

錯乱した小鳥を抑え付けながら何事かと狼狽するサオリと、周囲を警戒するミサキ。そして、もうお終いならと、密かに持ってきた蟹の缶詰に手を出すヒヨリ。小鳥達の声がする方角へと走り出すミカ。それぞれの思惑と困惑が入り混じる中、物語は終盤へと差し掛かるのであった。



セクシーフォックス:ーーーーっ!! ーーーーっ!!(あれ、私の出番は?)




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