風紀の狂犬   作:モノクロさん

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狂犬は先生に会いたい

「シャーレの先生…で、ありますか?」

 

「うん、なんか最近、キヴォトスの外から赴任してきたらしいよ。この間、チナツさんがヒナ委員長に話しているのを聞きました」

 

「ふむふむ、それでその、シャーレの先生とやらは一体どんな人なんですか?」

 

「さぁ? 私も詳しい事は分かりません」

 

 風紀委員の子も、ヒナとチナツの会話を耳にした程度で、詳しい事は分かっていない。

 

 ただ、先生が赴任して来てからキヴォトス内の各校の勢力に動きが見られるようになったと、噂になっているのだ。

 

「どんな人なんでしょうねぇ〜」

 

 風紀委員の子と別れた後、噂話から情報部、様々な角度から先生の情報を精査していくも、その詳細は分からずじまいだった。

 

 なんとなく、ある程度の権限が与えられた中立的な立ち位置の人物。

 

 それくらいの認識で良いのかもしれないと思いつつ、脳裏にエデン条約がチラついてくる。

 

(まっ、それもこれも、実物を見てからですかねぇ〜)

 

 もしも、シャーレの先生とやらが、エデン条約に異を唱える者ならば……。

 

「小鳥、どうしたの?」

 

「おっと、失礼しましたヒナ委員長。なんでもないでありますよ」

 

「……そう」

 

 ヒナは、小鳥が何を考えていたのか、なんとなく理解していた。

 

 当然だ。最近、情報部や他の風紀委員にシャーレの先生の話を聞いていると報告があった。

 

 大方、シャーレに先生が赴任した事で、起こり得る変化に、警戒をしているのだろう。

 

 しかし、その件を問い詰めても意味はないと知っている為か、それ以上の追及はなかった。

 

「そういえば、今日のパトロールは何処のエリアを?」

 

「そうね……。先ずは、近郊の廃ビル周辺をお願い」

 

「了解であります。ではでは、不肖、不死川 小鳥。パトロールに行ってまいります」

 

 ヒナに敬礼した後、小鳥はマスクを被り、パトロールへ出掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パトロールの最中も、小鳥は上の空だった。シャーレの先生。情報が少ない事もあり、その素性が全く分からない。

 

 直接会う事が出来れば、その有り様を知る事も出来ただろうが、今の所その機会がない。

 

 下手に接触すれば、きっと面倒な事になる。それが自分だけの問題なら構わないが、風紀委員会の、ひいてはヒナに迷惑が掛かるかもしれない。

 

 それは小鳥にとっても不本意な事だ。

 

 それでも、シャーレの先生という人物への興味は、抑える事が出来ない。

 

「あぁ、一体どんな人なんでしょうねぇ〜」

 

 廃ビル周辺の巡回を終え、小鳥はシャーレの先生の事を考えながら帰路に就いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、シャーレの先生がアビドスに?」

 

 翌日、風紀委員会の本部にて、情報部から、シャーレの先生がアビドス高等学校に来訪していると聞かされた。

 

 アビドス高等学校の事は知っている。砂漠化の影響で廃校寸前の学校だった筈だ。

 

 あそこには今、数人程度の生徒が残っているだけで、学校としての機能は果たしていない。

 

 しかし、シャーレの先生はそこに訪れた。これはどういう事か?

 

(少し、調べてみますかねぇ)

 

 先生の事もそうだが、小鳥はアビドスの事を詳しくは知らない。

 

 先生が訪れた理由、それを知る事が出来れば、何か先生の情報を摑めるかもしれない。

 

 そう思い、小鳥はアビドスに関する情報を集める事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アビドスの事を知る度に、先生の人柄が形を成していく。

 

 借金をかかえた廃校寸前の学校。その借金を返済する為に活動している対策委員会。組織だった敵対者の襲撃。そして……。

 

(助けを求められたから助けに行った。何故だ? 連邦生徒会にも見捨てられた学校を。何かしらメリットが……)

 

 情報は多岐にわたり、きな臭い香りも感じ始める。

 

 これは唯の廃校寸前の学校という問題だけではない。

 

 組織だった敵対者……カタカタヘルメット団なる集団の裏に何かある。

 

 直感的にそう感じた小鳥は、その件も含めて、接触するメリットとデメリットを天秤にかける。

 

 やはり安易な接触は危険か。それでも、会う事によって得られる情報に価値を見出せるか。

 

「悩むなぁ」

 

 テーブルに肘を突き、手を組んでそこに額を当てて考え込む。

 

 先生に会うか、会わないべきか。

 

 気になる。シャーレの先生。どんな人物なのか、凄く気になる。会ってみたい。純粋に興味がそそられる。

 

「…………」

 

 会ってみたい。会わなくても良い。会った方が良い。会わなくても良い。会って、話をしたい。話をしたくない。会ってみたいか、会いたくないか。

 

「……よし」

 

 小鳥は決意を固めると、マスクを置いて、荷物を纏める。

 

 風紀委員会の本部へ足を運び、非番だったイオリを見つけると、その背中へ声をかけた。

 

「イオリちゃん、ちょっと出掛けてきますねぇ〜」

 

「え、今から? あぁ、いってらっしゃい」

 

 小鳥は、イオリに軽く挨拶を済ませると、アビドス自治区を目指して出発した。




おまけ
小鳥(ただの一般生徒として、アビドス観光に来た生徒として会えたら御の字だ。大丈夫、カタカタヘルメット団との面識は無い筈。知り合いにさえ会わなければ大丈夫!! いける!! 勝ったなガハハ!!)

後は……極力迷惑をかけない様に立ち回ろう……
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