訂正させて頂きました。
小鳥達がアリウス自治区に向かってから少しして……
黒服に保護され、無事に新しい拠点となる住居に辿り着いたレンは、負傷したアリウス分校の生徒達をベットやソファーに寝かせるよう黒服に頼み込み、漸く一通りの作業を終え、一息ついていた。
「取り敢えず、これで一段落だなぁ〜」
黒服が用意した飲料水を口にしつつ、レンはそう呟いた。
小鳥達の事は、神秘によってある程度の状況を把握している。幸いな事に、アリウス自治区から離れた場所まではレンの神秘は問題なく機能しており、小鳥達が何処にいるかは、レンにも把握する事が出来た。
しかし、問題はアリウス自治区内だ。神秘によってアリウス自治区の状況を見ようと試みるも、襲撃されたマンションの時と同じく、レンの神秘が機能していない。
恐らく、マダムが何か仕掛けを施しているのだろう。
「はぁ……妨害電波とかよぉ、結界みたいな機械でも仕掛けてんのか〜?」
溜め息をつきながらも、レンのやるべき事は変わらない。隣には携帯を手にする黒服の姿。これからある人物に連絡を入れる予定なのだ。
「それじゃあ、頼んだぜぇ〜黒服〜」
「契約とはいえ、よくよく考えたら、小鳥さんに恨まれてしまいそうですね」
「大丈夫だぜぇ〜そん時はよぉ〜私が抱き枕なりなんなりされっから、黒服は何も気にせずやっちまいなぁ〜」
それに……と、レンは複雑な表情になりながらも、黒服に視線を向けた。
「クロノス……私の神秘ともよぉ〜約束しちまったからなぁ〜頑張ったらご褒美やるってよぉ〜あいつ、鼻息荒くしながら頑張りゅって言ってたかんな〜」
「それは……ご愁傷様と言いたいですが、私としては研究の対象が……あぁ、いや、そうですね。ご愁傷様です」
「やめろ〜同情すんな〜」
嫌そうな表情でレンがそう呟くと、黒服は無言で目を逸らす。貴重な神秘の顕現者として重宝してはいるが、肝心の神秘が少し残念な性格をしている。
とはいえ、レンのお陰で研究が捗り、助かっている事も事実。それに見合った報酬を提供するのも、協力者として、友好的な関係を築く為にも必要な事だ。
「それでは、彼と連絡を取りましょう。そうすれば自ずと……」
「お〜キヴォトス最強格の助っ人が登場するって寸法だぜぇ〜」
未来視による情報では、アリウスの自治区に侵入する前に、トリニティの生徒と遭遇する。
彼女が、どの程度の実力かは分からない。しかし、少なくとも、キヴォトス全体で見れば、上位に位置する力を有している事は間違いないだろう。
単純な実力では、小鳥やサオリ達が連携して漸く五分の勝負。後のアツコ救出に支障が出る事は間違いない。
だからこそ、彼女に協力してもらう必要がある。未来視で確認すれば、彼の側にいる事は確認出来た。
今なら間に合う。小鳥達が相対する最凶に対し、此方もまた最強の戦力をぶつけるのだ。
黒服が携帯の端末を操作し、彼と連絡を取っている。相手は黒服からの電話に困惑している様子だが、黒服の口からアリウスやゲマトリア、そしてトリニティのミカについて説明を受けると、困惑の声色から一変して、普段の口調へと変化した。
成程、彼が小鳥が一目置く大人の先生か。その声色を聞いているだけで、何処か安心してしまうのは、彼の持つ人柄ゆえの事なのだろう。
(……落ち着け〜クロノス〜そんなんじゃねぇ〜ぞ〜)
あまり聞き入ってると、クロノスがヘソを曲げてしまう。自身の神秘を宥める中、粗方の話を通したのか、黒服はレンに視線を向けた。
「レンさん。後はお願いします」
「お〜任せな〜」
レンは黒服から携帯を受け取ると、ゆっくりと深呼吸をし、電話先の相手に簡素な言葉を送った。
「あのな〜小鳥がピンチなんだ〜助けてやってくんね〜か〜?」
何処の誰かも分からない相手からの、突拍子もない内容に対し、電話先の相手は、二つ返事で了承した。
「ありがとな〜目的地までは、私がナビゲートすっからよ〜頼んだぜぇ〜」
そう言って、電話を切る。これで準備は整った。後は2人がアリウスの自治区に到着するまで、道のりをナビゲートすれば良い。
それまでは僅かに時間がある。
此処から先は、レンにしか出来ない事。ならば、今の内にやれる事は全てやっておかねばならないだろう。
「なぁ〜黒服〜」
「なんですか?」
「おめ〜がマダムって奴と共有した私の情報ってよ〜何時くらいのもんなんだ〜」
「……時期的には、小鳥さんと協力関係になった辺りですね」
「そっか〜ならよ〜」
レンはニヤリと笑みを浮かべた。小鳥が黒服のもとを訪れてからそう日が経っていない。そして、共有した情報は、つい最近のものだ。
いくらレンの神秘が特別だとしても、短時間で更新される筈がない。
それが常識の範囲ならば……
「良いもんみせてやんぜ〜新記録更新ってやつだ〜」
レンの意思に呼応するように、彼女の神秘が膨れ上がる。データ上では、今の数値が最高記録だ。そこから更に上の数値を更新するとなると、それ相応の年月を有するだろう。
それでも、レンの神秘は更に膨れ上がり、黒服の予測を遥かに超えた数値を表示した。
「これは……まさかっ!!」
「驚いたか〜? これが私の神秘だぜぇ〜」
黒服は、目を大きく見開きながらレンの神秘を解析する。機械によって、神秘を数値化する事に成功し、新たな研究の一歩を踏み出そうとしていた黒服にとって、それは感動的な瞬間だった。
「機械で妨害だか何か知らねぇけどよぉ〜少し舐めてたんじゃねぇか〜マダムってやつはよぉ〜」
レンの神秘が、更に膨れ上がる。その数値は……黒服ですら予測出来ない程だった。
「さぁ〜て、見せて貰お〜かぁ。おめ〜が隠し通そ〜としてたやべぇやつってのをよぉ〜」
マダムが仕掛けた幾重もの警戒網すら、レンの神秘を前には児戯にも等しい。
マダムがひた隠しにしようとした秘密が徐々に明るみになり、それが何かを理解した瞬間、レンは目を見開いた。
「おいおいマジかよ〜黒服〜これはライン越えってやつだぜぇ〜」
レンが見たもの。それは、レンの神秘を以てしても、その詳細を知る事は出来ない未知の力だった。
おまけ
レンとクロノスのほのぼの日常
レン:なぁ、クロノスよぉ……おめぇの希望ってのは、このベットで寝るだけで良いのかぁ?
レン:おぉ、そっかぁ……まぁ、それだけなら全然いいけどよぉ。あぁ、あれだな。私がベットで寝た後、ほら、匂いとか嗅ぐやつ。おぉ、小鳥が時々、後ろから抱きしめてた時によく髪の毛の匂い嗅いでたやつ。それするつもりだろぉ。おいおい変態さんだなぁ……
レン:え、違う? ノータッチロリ? おぉ、そっか……
レン:え、ベットの空間を隔離して永久保存?
レン:なぁ、クロノスよぉ、知ってっか? それはそれでよぉ。気持ち悪ぃんだぜぇ……
レン:いや、褒めてねぇからな。なんで照れてんだよ。
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