訂正させて頂きました。
バシリカへと続く地下の回廊を駆け抜けるサオリ達一行。
ミカの一撃をまともに受け、致命傷を負ったサオリだったが、小鳥の咄嗟の機転により、彼女の神秘の一端である『再生』の権限を内包した銃弾によって、傷は癒された。
とはいえ、致命傷から深手の一歩手前程度にしか回復しなかった事から、ミカの攻撃の破壊力を物語っていた。
顔に装着していたマスクは外し、血を拭った後の口からは荒い息遣いが聞こえる。
呼吸器官にダメージを受けたのだ。無理に身体を動かせば、それだけで身体に負担がかかる。
しかし、それでもサオリは倒れる事無く、駆ける事を止めなかった。
小鳥に託されたこの機会を失うわけにはいかない。
ミサキはRLを破損し、予備のHGを手に辺りを警戒している。
ヒヨリはミカの奇襲から庇う事が出来た為、事なきを得たが、そのせいでサオリが負傷した事を気に病んでいるのか、チラチラと心配そうに見つめていた。
サオリはヒヨリに視線を移し、柔らかな口調で語りかける。
「大丈夫だヒヨリ。あの時、小鳥が助けてくれた。この通り、身体はまだ動かせる。だから、そんな顔をするな」
ふと、幼い時も、部屋の隅で泣きじゃくっていたヒヨリを慰めた時の事を思い出す。
ヒヨリもまた、その感覚が懐かしかったのか、彼女は思わず涙ぐみながらも、力強く頷いた。
「……話している途中、申し訳ないけど、敵が来たよ」
ミサキの言葉で、全員が足を止める。ミサキとヒヨリが遮蔽物に身を隠しながらSRとHGを構え、サオリはARを手に、行手を遮るユスティナ聖徒会の複製目掛けて銃弾を放った。
被弾したユスティナ聖徒会の複製が消し炭となり、その場に崩れ落ちる。ヒヨリは後方から迫る複製達へと狙いを定め、ミサキはサオリを援護するように周囲の複製達を牽制する。
「リーダー、大丈夫?」
ミサキの問い掛けに、サオリは頷きながら応える。
「ああ。まだ動ける」
まだ倒れるわけにはいかない。例え身体が限界を迎えていようとも、目的を果たす為に進まなければならない。
サオリは再び駆け出す。銃弾のリロードを挟み、新たな弾倉を銃に装填すると、再びユスティナ聖徒会の複製達へと銃口を向け、引き金を引いた。
数が多い。
マダムの……ベアトリーチェならば、バシリカで迎え打つとばかり思っていたのだが、思いの外、彼女の思惑から外れた状況に、焦りが生じているのかもしれない。
そもそも、ベアトリーチェは通信越しとはいえ、アリウスの生徒達とユスティナ聖徒会の複製を多数手配し、そこで此方の戦力を消費させようとしていた筈だ。
しかし、ミカというイレギュラーの登場により、ベアトリーチェの思惑は崩れ、旧校舎までは、小鳥を含めて皆が無事に到着。
サオリ達も、ミカを足止めする為に、小鳥という戦力を欠く事になったが、それでも、こうして無事にバシリカに繋がる地下回廊まで駆け抜ける事が出来ている。
これが、ベアトリーチェの思惑の外ならば、少しでも戦力を減らそうと、更に兵を投入する筈。
果たして、バシリカに到着するまでに、全員無事でいられるだろうか?
そんな不安が、一瞬過ぎった刹那、サオリの銃撃を潜り抜けたユスティナ聖徒会の複製の1人が、サオリの目の前に躍り出た。
しまった……咄嗟に銃口を向けるも、間に合わない。
「リーダー!!」
ヒヨリが叫ぶ。それと同時に、サオリに襲い掛かったユスティナ聖徒会の複製の眉間に、銃床が深々とめり込み、後方へと吹き飛ばされながら塵となって消滅した。
「何とか追いつきましたが、これは中々凄い状態ですね」
ユスティナ聖徒会の複製を退けた人物はそう言いながら銃を持ち変え、引き金に指をかける。
「とはいえ、これだけの兵力。ベアトリーチェは余程焦っていると見ました。果たしてそれは、私達が原因か、それとも別の要因か……まぁ、両方でしょうね」
放たれた散弾はユスティナ聖徒会の複製達を穿ち、消滅させた。
「小鳥……何故ここに? ミカは?」
「援軍が来てくれたんですよ。とっても頼りになる援軍が……恐らく、ベアトリーチェも、予想外の援軍に焦っているのでしょう。実際、私も驚いたわけですからね」
そう言いながら、小鳥は銃を構えて通路の先を見据える。
「さぁ、行きましょう。この先にバシリカがあるのでしょう?」
何故こうなった?
バシリカで小鳥達を迎え打つべく待ち構えていたベアトリーチェは、小鳥達と接触した後に、別の侵入者がいた事に気付き、動揺を隠せずにいた。
今の今まで、反応が無かった筈なのに、小鳥との忌々しげな遣り取りを終えた後、『対シャーレ』を想定した切り札が漸く完成したと思った矢先の出来事だった。
それを彼女達にぶつける予定だったのだが、まさか当のシャーレの先生と、その護衛としてゲヘナの風紀委員長がアリウスの自治区まで侵入を許す事になるとは夢にも思わなかったのだ。
何時からこのアリウスの自治区に?
私の目を掻い潜って侵入する事は不可能な筈。
いや、これはまさか、黒服達が……。
様々な憶測が脳裏に過るも、今は目の前の事を対処する事が先決である。
想定外ではあるが、ベアトリーチェにとってはチャンスでもあるからだ。
シャーレの先生を護衛しているヒナはミカとの戦闘で互いにボロボロの状態だ。
そこに、本来の使い道であった切り札を投入し、ヒナとミカを退け、そしてシャーレの先生を亡き者にする。
そして、サオリ達はアリウスの生徒達とユスティナ聖徒会の複製達で足止めし、シャーレの先生を片付けた切り札を呼び戻し、挟み撃ちにすれば全て解決する。
なんて事ない。ちょっとしたハプニングはあったが、この程度の事は全て想定の範囲内だ。
聖徒会において、最も偉大な聖女と謳われたバルバラ。
彼女が予定通りに完成したのであれば、強力な兵器として運用する事が出来る。
シャーレの先生を亡き者とし、地に伏すサオリ達の前でアツコを生贄とする儀式を執行する。己の無力を呪い、絶望に染まった彼女達の表情を高みから眺めるのは、きっと甘美な一時となる事だろう。
ベアトリーチェが口元を歪ませながら思考を巡らせ、そして切り札であるバルバラを起動した。
おまけ
Q.先生とヒナを無事にベアトリーチェの警戒網を掻い潜り、アリウス自治区に侵入させた人物は誰?
A.本気を出したクロノス
クロノス:アッハッハ!! ガバガバなセキュリティでしたぞ!! まるでベアおばの『ピーーーーーーーーー(放送禁止用語)』
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