風紀の狂犬   作:モノクロさん

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誤字報告ありがとうございます。
訂正させて頂きました。


賽は投げられた

「……来ましたね」

 

 ユスティナ聖徒会の複製達に守られながら、ベアトリーチェは小鳥達と相見えた。

 

 小鳥達が此処に来るまでに、幾重にも渡る交戦が重なり、手持ちの予備の弾倉も少ない。

 

 更に、ミカとの交戦で負傷した小鳥とサオリの2人は、何とか平静を保ってはいるものの、身体の方は限界に近付いていた。

 

 それを、気取られるわけにはいかない。ハッタリ上等。不敵な笑みと余裕のある態度で、彼女達を迎え撃つ。

 

「こうして直接会うのは、初めてですね。改めてご挨拶をベアトリーチェ。私は不死川 小鳥と申します」

 

 小鳥はそう挨拶しながら一歩前へ出る。対するベアトリーチェは、片手をあげ、ユスティナ聖徒会の複製達に小鳥に銃口を向けるよう指示する。

 

「挨拶は基本ですよ。その基本すら出来ない程に追い詰められているようですね。まぁ、私達からすれば、その方が都合が良いのですが」

 

 銃口は自分に向けられている。先ずは狙い通りだ。

 

 ミカによって、身体はボロボロだが、ユスティナ聖徒会の複製達による銃撃ならば、ある程度は耐える事が出来る。自分が囮になり、サオリ達がその隙にベアトリーチェを仕留める。もしくは……

 

 小鳥の視線が、ベアトリーチェを捉えながら視界の端に映る磔にされたアツコへと向けられる。アツコの救出がこの作戦において重要なポイントだ。ベアトリーチェを始末するのはその後でも遅くはない。

 

 アツコの意識はない。しかし、僅かに胸が動いている事から生きてはいるようだが、早く助け出さなければ、手遅れになる。

 

 焦ってはいけない。そう己に言い聞かせながら、ベアトリーチェの行動を観察し、その一挙手一投足を見逃さずに観察する。

 

 ベアトリーチェと、その周囲を固めるユスティナ聖徒会の複製達。

 

 その陣形は守りに徹しており、その事は小鳥だけでなく、サオリ達にもその違和感が伝わっていた。

 

 彼女の性格なら、この局面で守りに徹する事はありえない。何か思惑があるのは間違いない。

 

 と、ベアトリーチェの思考を読み取ろうとした最中、遠くから地響きが鳴り響いた。

 

 音の方角は旧校舎方面。一瞬だけ意識がそちらに向けられるも、ベアトリーチェから発せられる雰囲気が変わった事に、小鳥は警戒を強めると共に、彼女の思惑を察した。

 

「手負の私達よりも、そちらを優先しましたか」

 

 小鳥の言葉に、ベアトリーチェはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「えぇ、不安要素は早めに対処するのは当然の事でしょう? 手負でボロボロ。1人は主要武器を損失した貴女達と、空崎 ヒナ、聖園 ミカ。そしてシャーレの先生。どちらが危険か、考えるまでもないでしょう?」

 

「それで本丸の守りが手薄になっては本末転倒ではないでしょうか?」

 

「貴女達と同じく手負の2人程度、私の作り上げた聖女をもってすれば始末するのに時間はかかりません。そして、今此処に、アリウスの全兵力を集結中。その時間を稼ぐだけで、私の勝利は揺るぎないものになります」

 

 守りに徹した陣形はその為か。

 

 アリウスの兵力がどれほどか把握出来ていないが、無限に増え続けるユスティナ聖徒会と合わせて、切り札と称する聖女が戻るまでの時間稼ぎ。

 

 全ては聖女とやらがヒナ委員長を倒す事を前提とした作戦に、小鳥はやれやれと肩を竦め、そして……。

 

「では、その作戦はご破算ですね」

 

 そう、断言した。ベアトリーチェの笑みが強まる。

 

「今、何と言いましたか?」

 

「聞こえませんでしたか? ならば、もう一度言います」

 

 小鳥は笑みを浮かべながらも、その瞳を真っ直ぐに見据え、淡々と事実を告げた。

 

「その作戦はご破算です。貴女の切り札が如何に自信作であろうとも、ヒナ委員長が遅れを取る事はありません」

 

 ヒナ委員長を誰よりも信頼しているからこその発言。自分を送り届けてくれた彼女が、負ける筈がない。そう確信しているからこそ、断言出来た。

 

 その言葉にベアトリーチェの笑みが強まる。

 

「面白い事を言うのですね。ならば、せいぜい理想を夢見ていなさい。理想が崩れ、絶望に染まった時、貴女はどんな顔をするのか。今から楽しみです」

 

「ご心配なく。その必要はありませんから」

 

 小鳥のヘイローが再び音を立てて割れると共に、小鳥の手に銃弾が握られる。

 

 神秘を内包した銃弾。『死』の概念が内包された銃弾を装填し、小鳥はベアトリーチェに狙いを定めた。

 

「まぁ、私達が貴女を倒すか、ヒナ委員長が切り札を倒すのが先か。それだけの違いなんですけどね」

 

 そう言いながら、SGの引き金を引く。轟音が轟き、弾丸はベアトリーチェに向けて放たれる。

 

 ベアトリーチェはそれを躱す事もせず、悠然と構えていた。

 

 着弾の衝撃で床が砕け、射程範囲にいたユスティナ聖徒会の複製達が消滅する中、同じく被弾したベアトリーチェはクツクツと笑みを零した。

 

「無駄な事を……貴女と辰巳 レンの情報は私達の中で共有されているのですよ。なんの対策も無しに、私が待ち構える筈が無いでしょう?」

 

 その言葉に、レンの神秘のみならず、フェネクスの神秘すらも対策を取られていた事に、彼女の周到さを感心しつつも、チラリと視線をサオリに向け、合図を送った。

 

 サオリは静かに頷き、そっとHGに手を添える。ベアトリーチェは2人の遣り取りを気にも止めず、自身の技術が小鳥の神秘を上回った事を確信し、堪らず笑みを浮かべ続ける。

 

 そして……、

 

「不死川 小鳥。私の技術は貴女の神秘を凌駕しました。72柱の悪魔など恐るるに足りず、私の生み出した聖女が、貴女を希望を砕き、絶望の淵へ叩き込むでしょう」

 

 ベアトリーチェは自ら、己の運命を破滅へと導く禁句を口にした。

 

 それは、小鳥ですら予想の外にあった、最悪へと至る絶望の引き金。

 

 その運命のカウントダウンを自ら口にした事を知るのは、その様子を傍観していたレンただ1人。

 

(バカだな、ベアトリーチェってやつは。本当に大バカ者だ)

 

 神秘には意思がある。黒服はその事を伝えなかったのか?

 

 いや、知った所で同じ運命を辿ったと考えれば、これは必然であったと言えるだろう。

 

 ベアトリーチェは自ら破滅の道へと足を踏み入れた。レンは、それを見届けた上で、アリウスを取り巻く運命が大きく変わる瞬間を目撃した。

 

 恐怖で押さえつけていた感情が、小さな汚点として芽吹く瞬間を。

 

 如何に堅牢な城壁であろうとも、小さな穴があればそこから崩壊は始まる。そして、その穴が広がれば広がる程、崩壊の時は早く訪れるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、本当にやるの?」

 

「当たり前だろ。マダムの命令なんだ。アリウススクワッドは……サオリ姐さんはアリウスを裏切ったんだから」

 

「でも、姐さんは……サオリ姐さんは、私達にパンを分けてくれたんだよ」

 

「…………」

 

「教官から私達を庇ってくれたのは、サオリ姐さんなんだよ」

 

「…………よせ」

 

「ねぇ、このまま私達はマダムの命令に従うままで、本当に良いの?」

 

「…………やめろ」

 

「希望のないまま、終わりたくない。ずっと昔の事を引き摺り続けるくらいなら……」

 

「…………っ」

 

「私は……明日が欲しい」

 

「っ…………私だって」

 

 この感情は、時を司る神秘が見せた有り得たかもしれない夢の世界。

 

 アリウスの生徒達の、誰もが描いた未来の姿。

 

 恐怖で支配するのなら、暴力で支配するのであれば……

 

「私だって……明日が欲しい……」

 

ーベアトリーチェというアリウスの主人は、詰めが甘いにも程があるー

 

 後の事は、悪魔と天使……そして人の意思に任せるとしよう。




おまけ
クロノスから見た悪魔達
フェネクス:愉悦部出身の性悪悪魔。だけど礼儀も弁えてるから面倒臭い。

フェネクスの神秘でレンが撃たれた時
クロノス:あんのファッキンクソバード!! 私のレンちゃんを撃ちやがったなこの野郎!! させねぇかんな!! うぉぉぉぉぉぉぉ全部肩代わりしてやる!! 私はレンちゃんのお姉ちゃんでありお兄ちゃん(ネットリ)だぞ!!

結果、クロノス99.9、レン0.1の割合ダメージ


ヒナの神秘:あの悪魔はヤバイので、出来れば関わりたくないです。でも、レンちゃんの為なら、お兄ちゃん(ネットリ)頑張る!!


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