風紀の狂犬   作:モノクロさん

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誤字報告ありがとうございます。
訂正させて頂きました。


明日の希望

 ベアトリーチェの命令の下、ユスティナ聖徒会の複製達は一斉に引き金を引いた。

 

 銃声が木霊する中、引き金を引き続けるユスティナ聖徒会の複製から、肉体を弾丸に穿たれる痛みに耐えながら、小鳥は敵陣の中央へと向けて駆け出す。

 

 ベアトリーチェを守るべく、ユスティナ聖徒会の複製達は守りを固めて小鳥の行動を妨害するも、轟音と共に先頭に立つユスティナ聖徒会の複製の頭部を穿ち、その後方に控える彼女達諸共消滅させた。

 

 ヒヨリによる援護射撃。小鳥が注意を引き付けている間に、ヒヨリが位置を変えつつ、周囲のユスティナ聖徒会の複製を撃ち抜いていく。

 

 ミサキのRLが破損した中、一撃の火力が高いのがヒヨリだ。彼女の火力を突破口に、ユスティナ聖徒会の複製達の防御網を突破する。

 

 だが、当然彼女達も黙って見ているだけで済む筈がない。数は向こうが圧倒的に優位だ。

 

 数に物を言わせ、ベアトリーチェの後方に控えるユスティナ聖徒会の複製達がヒヨリに銃口を向け、引き金を引く。

 

 咄嗟に遮蔽物に隠れ、その銃撃を凌ぐも、絶え間無く続く銃撃に、攻めあぐねている。

 

 ミサキも同様だ。此方が数発撃つ毎に、その数百倍を超える銃弾の雨が降り注ぐ。遮蔽物も削られ続ければいずれは限界を迎える。

 

 サオリも同様に、遮蔽物に身を隠しながら周囲のユスティナ聖徒会の複製達を無力化していくも、状況は此方が不利なのは変わりない。

 

 唯一の攻略の糸口は、最前線でユスティナ聖徒会の複製達を相手に、銃弾の雨をものともせずに薙ぎ倒す小鳥だ。

 

 ユスティナ聖徒会の複製を突破するには、小鳥の突破力が必要不可欠。

 

 しかし、今の彼女の状態ではそれもままならない。数は減らず、無限に沸き続ける兵力を相手に、小鳥は1人孤独に戦っていた。

 

 それでも、彼女は諦めずに前進し続けた。それを、ベアトリーチェの目からはどのように映っただろうか?

 

 銃撃に晒されながらも、傷は再生し、獅子奮迅が如く苛烈に切り込むその姿は、さぞ不愉快に感じたのだろう。

 

 しかし、それを表に出す事なく、彼女はアリウスの自治区に仕掛けた神秘を無力化する機材を起動し、それらの標的を小鳥へと定めた。

 

「っ!!」

 

「小鳥っ!!」

 

 攻めに転じていた小鳥の足が止まり、苦痛に顔を歪める。それを目にしたサオリは愕然とした表情を浮かべながら、小鳥を援護しようと試みるも、それをユスティナ聖徒会の複製達が許さない。

 

「お遊びは此処までです、不死川 小鳥。神秘を封じられた貴女は無力。地べたを這い蹲り、虫のように踏み躙られて死になさい」

 

 ベアトリーチェが指を鳴らせば、小鳥に向けてユスティナ聖徒会の複製達の銃口が一斉に向けられ、引き金が引かれる。

 

 何発もの弾丸が小鳥を穿ち、身体ををズタズタに引き裂いていく。

 

 痛みと衝撃に、それでも悲鳴を噛み殺し、銃弾が穿った箇所から鮮血が噴き出した。

 

 視界がボヤけ、意識が遠退き始め、今にも倒れそうな身体を奮い立たせながら、小鳥は己のヘイローから『死』の概念が内包された銃弾を生成しようとし、形作られた銃弾が虚しくも砕け、雲散して消えた。

 

 無駄な足掻き、無駄な努力。滑稽にすら感じる小鳥の愚行に、ベアトリーチェはクツクツと笑いを堪えながら、醜態を晒す小鳥に見下ろしながら、最後の言葉を送った。

 

「今の貴女は、神秘を行使する事すら出来ませんよ。このアリウス自治区に設置した私の技術の粋を結集させた神秘封じを総動員させているのですから」

 

「神秘を封じる……技術……」

 

 ベアトリーチェの言葉をオウム返しに呟く小鳥。絶望に染まりながら膝をつく小鳥に、ベアトリーチェは嘲笑を浮かべながら、その真実を告げた。

 

「このアリウス自治区に設置した神秘封じの機材をもってすれば、貴女の『死』の概念を防ぐ事も、それらを銃弾として生成する事すらも無効化します。全ての機材を総動員すれば、貴女の身体にすら影響を及ぼす事も可能。そして……」

 

 遠くから聞こえる足音に、ベアトリーチェはアリウスの生徒達の援軍が来た事を察し、勝利を確信した。

 

「援軍が来たようですね。さて、それではそろそろ幕引きといきましょうか」

 

 そう言って、先ずは小鳥を始末するべく、ユスティナ聖徒会の複製達に指示を送ろうと手を掲げた次の瞬間。

 

 1発の銃声が、バシリカに響き渡った。

 

 銃声の元を辿れば、それはサオリの手に握られたHGより放たれたもの。

 

 小鳥にばかり、気を取られていたが、たかが銃弾1発程度でどうにかなるほど、現実は甘くない。

 

「全く、いつから聞き分けの悪い駄犬になったのでしょうか。サオリ。貴女にはつくづく失望しましたよ。仕方がありません。貴女には罰として、目の前でアツコが贄となる様を見届けさせる事としましょう」

 

 全ては虚しいと、改めて知らしめる為に、サオリ達を絶望の淵に追いやる事に愉悦を感じながら、ふと、サオリの眼光に絶望の色がない事に気付いた。

 

 何を考えている?

 

 その目はなんだ?

 

 何故、この状況にありながら、まだ諦めていない?

 

 ベアトリーチェは、サオリの目に宿るその光に不快感を示し、その真意を問いただすべく、口を開こうとした瞬間。

 

「アツコっ!!」

 

 サオリの口から、アツコに向け、彼女の名を口にした。

 

「一体……何を?」

 

 その疑問に、ベアトリーチェの視線がアツコへと向けられ、そして漸く気付いた。

 

 サオリが放った銃弾は、アツコの身体に被弾していたのだ。そして、その被弾した箇所を中心に、アツコの身体から傷が癒え、サオリの声に、アツコの意識が覚醒し、瞳が僅かに開いていたのだ。

 

「……まさかっ」

 

 ベアトリーチェの脳裏に1つの仮説が過ぎる。アリウス自治区に仕掛けた神秘封じは完璧なものだ。それを無効化する術はない。

 

 小鳥達からすれば、既に神秘を封じる機材を所持している事は周知の事なのだが、その効果がどれ程のものかまでは把握出来ずにいた。

 

 下手に扱えば警戒され、対策を講じられてしまう。ならば、小鳥に全てのヘイトを集中させれば、起死回生の一手となり得る手段を用いる事が出来る。

 

 このタイミングで、アツコの意識が覚醒した理由が、予め『再生』の概念を内包した銃弾をサオリに渡していて、ベアトリーチェの意識と全ての機材が小鳥に向けられたタイミングでアツコに使用したのだとしたら、盤面がひっくり返されてしまう。

 

 それだけは阻止せねば。

 

 しかし、ベアトリーチェが何かしらの対策を講じるよりも早く、サオリはアツコに向けて、思いの内を紡いだ。

 

「明日を手に入れるぞアツコ!! 頼む!! 協力してくれ!!」

 

 それは、小鳥達の拠点で思い描いた夢の話。過去にばかり目を向けていた自分達が、初めて明日を夢見た夢物語。それをサオリが、アツコに向けて叫び、願った。

 

 無邪気に思い描いた夢物語を……サオリが願った夢の話を聞き届けたアツコは……。

 

「うん……分かった」

 

 ゆっくりと、それでいて確かな意思を持って頷き、アツコはベアトリーチェが喚び出したユスティナ聖徒会の複製達すらも凌駕する軍勢を召喚した。




お知らせ
此処まで閲覧して頂き、本当にありがとうございます。
恐らくですが、後数ページくらいでエデン条約編が終了となります。
エデン条約編が終了した後は、お盆の時に募集した作品を書きますので、本作は少しお休みします。此処まで遅延してしまい、申し訳ありません。

そして、募集した作品を更新した暁には、改めてリクエストなどがありましたら募集をかけたいと思いますので、その時は宜しくお願い致します。


おまけ
今のフェネクス
ステイステイ……まだだっまだだっ!!




感想ありがとうございます。
凄く励みになりますので、引き続き、感想や評価、ここすきなどして頂けると、物凄くやる気に満ち溢れますので、宜しくお願い致します。
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