風紀の狂犬   作:モノクロさん

121 / 166
誤字報告ありがとうございます。
訂正させて頂きました。

今回の更新は短めです。


明日の代償

 サオリが放った銃弾により、ベアトリーチェの身体がぐらりと揺れ、地面へと倒れた。

 

 長きに渡り、アリウスを支配していた彼女の時代は、傲慢な性格が災いし、『死』という絶望の前に終焉を迎えたのだった。

 

 これで、アリウスに関わる因縁に終止符が打たれる事となったのだが、サオリは静かに、頭上に君臨するフェネクスへと視線を向けた。

 

 かつて、エデン条約の式典にて相対した時、その圧倒的な実力を前に、サオリは手も足も出ず、恐怖に打ちのめされたのは記憶に新しい。

 

 再び、かの悪魔の毒牙が、自分達に向けられるのではと、サオリは内心恐怖した。

 

 だが、フェネクスはベアトリーチェが倒れた事を見届けると、満足げに頷き、静かに瞳を閉じた。

 

 そして、その身体が光の粒子となって消滅する最中、小鳥は忌々しげに呟いた。

 

「あぁ……本当に最悪な気分ですよ」

 

 その言葉は、誰に向けられたものなのか。それを知る術はない。

 

 しかし、それとは別に、小鳥の意思とは関係なくこの世界に顕現したフェネクスは、サオリに変化を齎した事は間違いなかった。

 

 フェネクスが、サオリの内に何を見出したのか。そして、ベアトリーチェが残した最後の言葉の意味とは……。

 

『天使』

 

 ベアトリーチェは確かにそう言った。

 

 何を思い、その言葉を紡いだのか、それもまた、彼女以外に知る事はないだろう。

 

 ただ、小鳥やレンという、神秘を用いる2人の事を知るサオリ達ならば、そこから1つの可能性に至る事が出来る。

 

(私にも、神秘とやらが発現したのか? それも、アレの口ぶりからして、小鳥と同じ……)

 

 サオリは、フェネクスがこぼした言葉と、ベアトリーチェの最期の言葉を思い返しながら、その可能性に辿り着いた。

 

 もしもそれが事実ならば、自分は小鳥達と同じ立場となり得る。

 

 ゲマトリアと呼ばれる組織。ベアトリーチェが所属していた組織の研究対象。

 

 組織の人間が、サオリの神秘に興味を示し、今後狙われる事となれば、その被害は自分のみならず、アリウススクワッドのメンバーにも、そしてアリウス分校の生徒達にも危害が及ぶだろう。

 

(ままならないものだな。明日を手に入れたというのに)

 

 ベアトリーチェの支配から解放され、自由の明日を手に入れて尚、問題は山積みだ。

 

 今までは、彼女の命令に従い、その指示が例えどのような内容であったとしても、当然のものとして受け入れ、実行してきた。

 

 だが、これからは違う。自分で考え、悩み、そして、その判断には責任が伴う。

 

 初めは苦悩する事となるだろう。だが、その苦悩は人として己を成長させる糧となる。

 

 今までのやり方で全てが解決する事はない。これは、自分にとって良い機会なのだと、考えを改めた。

 

 先ずは何をするべきか。

 

 ベアトリーチェという恐怖でアリウスを支配した独裁者は倒した。その事をアリウス自治区の皆に触れ回るか、それとも……。

 

「……サッちゃん」

 

「……アツコ」

 

 いや、もっと大事な事があったじゃないか。これは、私達にしか出来ず、そして今、このタイミングでなければならない大事な事だ。

 

 サオリの元に、ミサキとヒヨリが集まってくる。皆、穏やかな表情を浮かべ、サオリを見つめていた。

 

 そして、2人の視線がサオリからアツコへと向けられると同時に、サオリは漸く穏やかな表情でアツコに告げた。

 

「おかえり、アツコ」

 

「……うん。ただいま。みんな」

 

 サオリの言葉に、アツコも笑顔で、その言葉に答えた。そして、3人の元に駆け寄り、抱きしめあった。




おまけという名の次回予告。
まだまだやるべき事が沢山残っているエデン条約編。
小鳥はヒナと相対し、互いに胸の内を吐露する。
そして、黒服の指示でレンちゃんは『時』を司る神秘を発動する事に……


感想ありがとうございます。
凄く励みになっています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。