風紀の狂犬   作:モノクロさん

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更新が遅くなり申し訳ありません。
そして、誤字報告ありがとうございます。
訂正させて頂きました。


ベアトリーチェの遺産

「不死川 小鳥さん。もし仮に、貴女が先生と敵対していた場合、貴女はどのような行動を取るのでしょうか?」

 

「……質問の意味を測りかねますが、それは、私がゲヘナの生徒としてではなく、ゲマトリアの一員。つまり、黒服さんと同じ立場だった場合と捉えても良いのでしょうか?」

 

「えぇ。貴女ならばどうするのか、少し興味がわきました。もしよければ、参考までにお聞かせ願いたいのですが宜しいですか?」

 

 廃墟となったビルが立ち並ぶ区画。その内の1つにある廃ビルの一室で、黒服から呼び出しを受けた小鳥が、彼の質問に対し、暫し考え込んだ。

 

「そう……ですね」

 

 腕を組み、首を傾げながら小鳥は口を開く。

 

「先ずは、メンバーの方々に相談したいと思います」

 

「相談……ですか?」

 

「はい。少なくとも、組織として動いている以上、私1人の勝手で動くのは得策ではないと思いますので」

 

「成程、ではその相談の内容は?」

 

「『目的の為に、先生という存在が障害と成り得る。私は敵として排除したいが皆はどう思うか?』……ですね」

 

「……成程」

 

 黒服は、小鳥の答えに納得する。個人的には排除したいが、他の者からすれば『利用価値がある』もしくは『共存したい』といった感情を持つ者がいるかもしれない。

 

 自分の目的を優先して、他者の考えを真っ向から否定する行動を取る事こそ愚策。

 

 後に、組織間の軋轢をうむ可能性がある以上、小鳥の出した答えは至極当然の答えであった。

 

「しかし、その質問に意味はあるのですか? 貴女が先生を敵と認識する以上、そこには必ず理由が存在します。皆が貴女とは異なる解答を出した場合、どうされるおつもりですか?」

 

 黒服の疑問に小鳥は、『そうですね』と前置きをした上で答える。

 

「私が先生を敵として認識した場合、そこには、私の目的を果たす上で、先生という存在が障害となる事が想定されます」

 

 それこそ、アビドスにて黒服の目的を妨害されたように、或いは、エデン条約時のベアトリーチェの取った行動のように。

 

「ですが、それは先生が『私と同じ舞台に立っていた』場合にのみ適用されます。私からすれば、先生は敵である。なので排除するという構図がイコールとして存在しないんですよ」

 

 黒服は先生と同じ舞台に立ったからこそ、目的を達成する事が出来なかった。しかし、ならば逆に、同じ舞台に立たせなければ問題ないという事になる。

 

「なので私は提案します。誰か1人でも、先生を擁護するのであれば『私の舞台から先生を遠ざけてくれ』と」

 

 先生に価値を見出しているのなら、遠ざける為に協力して欲しい。そうすれば、先生を排除する必要はなくなる。

 

 先生を排除するというのは、あらゆる手段を用いて、それでも排除しなければならないと判断した時の場合にのみ適用される、いわば最終手段。

 

 そこに至らないのであれば、無理に排除する必要はない。

 

 寧ろ、タスクが増える事によって、計画に支障が出てしまい、失敗してしまっては本末転倒だ。

 

 それくらいなら、協力を仰ぎ、先生を私の舞台から遠ざけて貰った方が良い。

 

 小鳥の答えに、黒服は頷く。成程、道理であると納得する答えであった。

 

「成程、大変興味深い答えでした。貴女にとって、組織のメンバーに借りを作る事は、計画に支障をきたさない。寧ろ、メリットの方が多いと判断するのですね」

 

「えぇ。まぁ、私の場合、先生との接点もありますので、解答としてはどうしても先生寄りのものになってしまいます。これが、先生との接点がない、まっさらな状態であれば、また変わった答えがあるのかもしれませんが」

 

「いえ、十分に参考になりました。ありがとうございます」

 

「……因みにこの質問、アリウスのベアトリーチェと関係があるのですか?」

 

「……何故、そう思うのですか?」

 

「貴方は無駄な事はしないタイプの人間です。であれば、この質問には何らかの意味があると考えるのは当然の事じゃないですか」

 

 大方、黒服含むメンバーとベアトリーチェの意見が異なっていたのだろう。

 

 先生を排除したいベアトリーチェと、先生を擁護する黒服達。

 

 意見は真っ向から対立し、そしてベアトリーチェは、独断で先生の排除に動いた。

 

 エデン条約時、サオリ達アリウススクワッドが先生を排除しようとしたのが何よりの証拠だ。

 

「そうですね。貴女の言う通りです」

 

「成程、それでは、件のベアトリーチェはどうしたんですか? あの後、サオリさん達から彼女がいなくなったと話を聞きましたが」

 

 あれだけ致命傷を負ったベアトリーチェが1人で逃げ出せる筈がない。

 

 そして、彼女を助けようにも、その場にいたサオリ達の目を掻い潜り、彼女を助けるのは不可能。

 

 あの状況で、唯一ベアトリーチェを救助できるとしたら、それはレンの神秘以外にないだろう。

 

 レンの意思、というよりも、黒服の指示で動いたといった方が良いのだろう。

 

 時を止め、その間にゲマトリアの誰かがベアトリーチェを救助し、そして……。

 

「……ベアトリーチェはあの後、どうなったのですか?」

 

「…………」

 

 小鳥の問いに、黒服は答えなかった。しかし、それが答えである事は明らかだった。

 

「……そうですか」

 

 超えてはならない一線を超えたのだろう。ゲマトリアのメンバーがベアトリーチェを始末したのであれば、これ以上此方からこの件を聞く必要はない。

 

 話があるからと、電話ではなく、直接呼び出された時点で何かあるとは薄々気付いていたが、所謂事後報告という事だろう。

 

 意見が合わなかったとはいえ、仲間を手にかけたのだ。思う所はあるのだろう。

 

 しかし、小鳥からすれば、アリウスの生徒達に行った所業を考慮すれば、同情の余地はない。

 

 加えて、直接手を出したのはアリウスの生徒達だが、彼女達に命令し、エデン条約を破綻させたのは彼女だ。2つの意味で、小鳥はベアトリーチェを許す事はないだろう。

 

 とはいえ、唯一の救いがあるとすれば、それは、ベアトリーチェを始末したのがゲマトリアのメンバーであり、小鳥やサオリ達ではないという所だろうか。

 

 重苦しい空気が部屋を包み込む中、不意に黒服が口を開いた。

 

「……小鳥さん、貴女に1つお伝えしたい事があります」

 

「何でしょうか?」

 

「これは、貴女とも共有していた方が良い案件と、皆で協議して決定したものです。どうか、最後まで聞いてください」

 

「……分かりました。聞かせて下さい」

 

 何か重要な事なのだろうと察した小鳥は、姿勢を正して黒服の言葉に耳を傾けた。

 

「これから話す事は他言無用です。ベアトリーチェが残した負の遺産。我々ゲマトリアにとって……いいえ、この世界にとっての敵となる存在……」

 

 『色彩』という存在を。




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