風紀の狂犬   作:モノクロさん

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更新が遅れてしまい、申し訳ありません。


色彩

『色彩』

 

 それは黒服達ゲマトリアと同様にキヴォトスの外に属する存在。

 

 その殆どは未知の存在であり、それが存在なのか、実体なのか、概念なのかすらわからないという。

 

 しかし、それは明確に、ゲマトリアにとっても、そして、シャーレの先生にとっても敵となるもの。

 

 ベアトリーチェは、『色彩』の事を解釈されず、理解されず、疎通されず、ただ到来するだけの不吉な光と定義した。

 

 そして、『色彩』の恐ろしい所は、生徒達の持つ神秘を恐怖に反転させるという所だった。

 

 それは、小鳥のフェネクスに似た概念であり、しかし、『色彩』によって反転させられた生徒は元に戻る事はないという。

 

 元々、ベアトリーチェも、この『色彩』に対処すべく計画を企てていたのだが、彼女は意図的に『色彩』を招き寄せ、この世界を『色彩』が認識したという。

 

 恐らくこれが、ベアトリーチェが踏み越えてしまった、一線だったのだろう。

 

 敵となりえる存在を招き寄せ、何を企てていたのかはわからないが、小鳥からすれば、余計な事をと言わざるを得ない。

 

 だが、話を聞く限りでは『色彩』は此方を認識しているのであれば、それには知性、もしくは本能が伴うという事になる。

 

「話を聞いている限りですと、その『色彩』とやらには知性……もしくは本能的なものがあるのではないでしょうか? でなければ、ベアトリーチェが『色彩』を招き寄せる事は不可能な筈です」

 

「……そうですね。小鳥さんの仰る通り、『色彩』は知性もしくは本能で動いている可能性があります。ですが、その件は長らくあり得ないだろうというのが、私達の認識でした」

 

 黒服がそこで言葉を切る。

 

「……その認識を改められる必要がありそうです」

 

 最悪を想定するのであれば、それが賢明だろう。

 

 ゲマトリアにとって、そして先生にとっての敵でもあれば、最大限に警戒する必要がある。

 

 例えそれが杞憂に終わろうと、何の対策もなしに、放置していい案件ではない。

 

「……先程の話にあったように、黒服さんの話した内容が真実ならば、『色彩』は、私にとっても許容出来ない案件です。その上でお聞きしますが、ゲマトリアのメンバーは『色彩』に対して、どう対処するつもりですか?」

 

 皆の意見が敵として認識しており、共存、共生は不可能と判断しているのなら、小鳥としても『色彩』を心置きなく敵として認識する事が出来る。

 

 自分の目的に害を与える存在として認識し、躊躇う事なく排除する事が出来るのだ。

 

「そうですね。我々は、『色彩』を敵として認識しています。貴女の目的の障害となるのでしたら、心置きなく敵対してもらって構いません」

 

「そうですか……では、今後『色彩』に関する情報が入り次第、その情報を共有して頂けると助かります」

 

「えぇ、勿論です」

 

「それと、この情報は先生も知っている事ですか?」

 

「いえ、情報の共有という意味では、私達の持つ情報は、先生にはまだ伝えていません。しかし、いずれ先生の耳にも入るでしょう」

 

 言い回しからして、『色彩』の情報を持ってはいるのだろう。しかし、それはゲマトリアの持つ知識とは別の形で入手したといった所か。

 

「成程、分かりました。それでは、今後も新しい情報が入り次第、逐一共有していくという形でお願いします。それと、『色彩』に知性がある事を前提とするのなら、狙われるのは間違いなく先生と貴方達ゲマトリアのメンバーです」

 

 小鳥が『色彩』ならば、脅威に感じるのは自分の事を知る先生とゲマトリアのメンバーだ。

 

 そして、最初に排除するならば、対抗手段を模索している黒服達ゲマトリアのメンバーになるだろう。

 

「護衛となる戦力は持っているのですか?」

 

「残念ながら、我々ゲマトリアのメンバーは、戦闘に特化しているとは言い難く、『色彩』の対処には向きません。それに、護衛と呼べる人材も、今はいないのが実情です」

 

 黒服の答えに小鳥は考える。

 

 『色彩』もしくは、『色彩』と共謀した存在がいた場合、それと戦闘になった時の対抗手段がない。

 

 護衛がいないのであれば、黒服達はなんの抵抗も出来ないまま、『色彩』の餌食となるだろう。

 

 仕方がない。護衛を出来る人材がいないのであれば、今ある人材で賄うしかない。

 

「では、私を護衛として、ゲマトリアのメンバーに同行させて下さい」

 

「小鳥さんを……ですか?」

 

「はい。流石に常に警護するのは不可能ですので、ゲマトリアのメンバーが集う時、私を同行させる形でお願いします。そうすれば、私が『色彩』に対処する事も出来るでしょうし、私に何かあった際は黒服さん達が対処する事が出来ます。一石二鳥といつやつです」

 

「『色彩』に意思があるのなら、私達が一ヶ所に集まるタイミングで襲った方が効率的。その場に限り護衛について貰えば、何かしらの対処は可能という事ですね」

 

「はい、その通りです」

 

「…………」

 

 黒服は顎に手を当てて考え込む。『色彩』の対処に小鳥を護衛として同行させれば、ゲマトリアが全滅するリスクは下がるだろう。

 

 何より、小鳥の神秘であるフェネクスの顕現は、ある意味では恐怖による神秘の反転に近しいものがある。

 

 『色彩』の持つ力に対抗出来る可能性がある以上、小鳥の提案を無下にする事は出来ない。

 

 それならば……。

 

「分かりました。今すぐに小鳥さんの提案を受け入れる……事は出来ませんが、検討はしてみます」

 

「他の方の意見を聞くためですね」

 

「はい。それこそ、私個人の判断で決める事が出来ない案件ですので。しかし、恐らくは大丈夫でしょう」

 

 小鳥が協力関係にある以上、リスクの軽減としては皆にとっても利益となる提案だ。それに、『色彩』が本当に知性を持つのであれば、ゲマトリアのメンバーが集まる場を襲撃する可能性は十分にありえる。

 

 最悪の場合を想定するならば、小鳥という戦力は魅力的だ。

 

「では、今はまだ仮定の話ですが、今後は私達が集まる場に、貴女を招待する時が来るかもしれません。その時は宜しくお願いします」

 

「えぇ、分かりました。私としても、『色彩』の対処が出来るのであれば、それに越した事はありませんので」

 

 こうして、『色彩』という未知の存在に対する情報の共有は、黒服と小鳥の間で交わされた。

 

 そして、この情報の共有は、後に大きな意味を持つ事になるのだった。




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