風紀の狂犬   作:モノクロさん

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狂犬と便利屋68と対策委員会

 拙い事になった。

 

 滝の様に流れ出る汗を全身に感じながら、私は全壊した柴関ラーメンの様子を見に駆け付けた対策委員会との不本意な接触に、内心狼狽していた。

 

 学校近くでの爆発騒動だ。彼女達が出向かない筈がない。

 

 彼女達からすれば、またカタカタヘルメット団なる集団の襲撃と、同じに見えるだろう。実際、状況だけ見ればそれもあながち間違いではない。

 

 冷静に考えれば、便利屋68が此処にいる理由は一つしかない。彼女達もカタカタヘルメット団同様、雇われたからだ。

 

 何故、他校の自治区で事を起こしたのだと思いつつも、意図したわけではないが、自分自身も自治区近郊で暴れたのは事実だ。言い逃れするのは難しい。というより不可能だ。それだけの弁が立つわけではない。

 

 アルやカヨコ、ムツキは対策委員会と接触済みらしい……というより、すでに一戦交えているのだろう。

 

 対策委員会と私の両陣営を警戒しながら、この場をどう切り抜けるか思案している様だ。

 

 ハルカは私がマウントを取って押さえ付けている状態なので、『アル様の敵!! アル様の敵!!』と言いながら、銃床で何度も下顎や胸周りをドスドスと殴り続けている。

 

 まともに力が入らない姿勢だろうに、思った以上に重たい一撃を与えなさる。

 

 それよりも何故、胸と顎、殴られてる場所が異なる筈なのに同じ音がするのだ?

 

 私の胸と顎は同じくらいの硬さなのか?

 

 ははは、色んな意味で涙が出てきそう。

 

 この状況、どう切り抜けば良い?

 

 何が最善なのだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハルカと小鳥が揉めている間に、騒動を聞きつけた対策委員会を前に、カヨコは小鳥と対策委員会の両名を見比べながら、少々気不味そうにアルにだけ聞こえる声量で呟いた。

 

「どうする社長。多分だけど、小鳥ちゃん、シャーレの先生に会いに来たんだと思う」

 

「え、そうなの?」

 

「多分ね。それに、私服で身分がバレないようにしているから、風紀委員会のメンバーとしてではなく、彼女個人の独断で。それも内密に」

 

「そ、それじゃあ私達……」

 

「まぁ、今回のはお互いに事故の様なものだし、態々小鳥ちゃんの肩を持つ必要もないけど、これが風紀委員会に知れたらちょっと問題かも」

 

 ゲヘナとトリニティ間で執り行われているエデン条約に、風紀委員会も一枚噛んでいると噂もある。

 

 小鳥個人の行動で、彼女は無論、上に立つヒナの立場も危ぶまれる可能性がある。

 

 そのリスクを承知で、身分を隠して先生に会いに行こうとしたら、運悪く便利屋68と遭遇し、騒動が起きてしまった。

 

 しかも原因は、穏便に済ませたかった小鳥よりも暴走した便利屋68側にある。

 

 つまり、シャーレの先生に会いに来た小鳥に非は無い。しかし、それは小鳥側の理屈であり、便利屋68や対策委員会には関係がない。

 

 対策委員会からすれば、自治区内で暴れた一般生徒と便利屋68。此方側の素性は割れているが、身分を隠した小鳥もまた、所属を問われる事になるだろう。

 

 下手に偽り、後に素性が明らかになれば……。

 

「社長、取り敢えずこの場は、小鳥ちゃんを置いて撤退するのもありかも。私達は兎も角、彼女は逃げたくても逃げられないから時間稼ぎには……」

 

「……それはダメよ。絶対にダメ」

 

 そう言いかけたカヨコを、アルが制した。そして、チラリと小鳥へと目を向けたアルはそのまま対策委員会の面々と向き合い、不敵な笑みを浮かべた。

 

「あら、思っていた以上に早い到着じゃない。此方としては、私達を追ってきた風紀委員を始末した後に、貴女達を相手にしようと思っていたけれども、手間が省けたわね」

 

「えっ? アル様?」

 

「社長!!」

 

「わぁお、そういう事にするんだね。クフフ」

 

 啖呵を切るアルに他の3人はそれぞれ異なる反応を示し、小鳥もまた、アルの言葉に目を見開いた。

 

 対して、対策委員会の面々からも様々な反応が返ってくるも、アルは『ふんっ』と鼻を鳴らして、こう続けた。

 

「此処はアビドスの自治区よ。私達は兎も角、風紀委員会に所属する者が、他所の自治区で事を起こせば、政治的な問題に発展するわ。まぁ、彼女からすれば、此処で私達に遭遇したのは不慮の事故でしょうけど」

 

 そして、柴関ラーメンの爆破も、全て自分達が行ったと、言い放ち、アルは対策委員会に聞こえない様に、小声で小鳥に話しかけた。

 

「元はと言えば、此方の不手際。貴女は巻き込まれただけよ。此処は私達が何とかするから、上手く立ち回りなさい」

 

「え、ですが……」

 

「それと、小鳥ちゃんが探してるシャーレの先生は、対策委員会の子達と一緒にいるスーツ姿の人よ。覚えておきなさい」

 

「っ!!」

 

 アルの言葉にハッとなり、対策委員会へと視線を移す。彼女達の傍にいるスーツ姿の男。彼こそがシャーレの先生。

 

 不足の事態での出会いではあったが、漸く会う事が出来た。

 

 それに安堵し、そして、自分を庇おうとしたアル達に感謝の気持ちを抱きながら、ふと上空を見上げた。

 

 此方に向かって降り注ぐ何か。

 

 それを知覚するよりも早く身体が動き、アルとカヨコの襟を掴んで自身の後ろに引き倒すと、上空から飛来したソレに向かって両手を広げた。

 

 その瞬間、便利屋68と小鳥に向かって降り注いだ何かは、爆音と共に彼女達を呑み込んだ。

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