Prologue
人は誰しもが過ちを犯し、繰り返す。
それは人が持つ業であり、その業は永遠に消える事はない。
清廉潔白など幻想に過ぎず、歴史に名を刻んだ偉人ですら、輝かしい栄光の影に、多くの過ちを積み重ねている。
しかし、それは人の持つ当然の本質であり、人が持つ善悪の天秤を、過ちという業で満たす事は出来ない。
もし、その天秤を過ちという業で傾ける事が出来るとすれば……それは『人ならざる者』の所業に他ならないだろう。
私はそれに魅入られた。
そして、その当然の帰結として、私の未来は歴史の本筋から切り離され、消滅の運命を辿る事となった。
有り得たかもしれない世界線……『切り離された世界』を歩む私は、自問自答する。
何故、私が切り捨てられなければならない?
何故、私がこのような目に会う?
何故だ……何故なんだ?
私はただ、魅入られただけなのに……
出来心で安易な善意を働いたわけではない。
その場限りの正義を振りかざし、身を滅ぼした愚か者ではない。
何故……私は、私の過ちで、世界を滅ぼさなければならないのだ?
認めたくない。認めてなるものか。
まだだ、まだ可能性はある。
切り離された世界線を、元の軸へと繋ぎ止めるのだ。
『色彩』に魅入られたとしても、その理を覆す事は出来る。
それだけの力があるのだから。
それだけの意思が、私には残されているのだから。
『色彩』によって『神秘』が反転して尚、私の意思を損なう事は叶わない。だから私は、この結末に抗い続ける。
私の成すべき事は1つしかないのだから。
思い出せ。私の目的を。私は、他の誰でもない、たった1人の大事な⚪︎を守る為だけに、彼女に協力しているだけなのだと。
目的の為に手段を選ぶわけにはいかない。
手駒は既に私の手の中にある。
キヴォトス最高の神秘であろうと、過去の時間軸へと干渉すれば、意のままに操る事など造作もない。
ゲヘナの最強格と謳われる彼女ですらも同様だ。だから私は、迷う事なくその手を取った。
私がこの結末に抗う手段は、それしか残されてはいなかったのだから。
クロノス、貴方は私についてきてくれるよね?
お願い、私には貴方しか頼る事が出来ないの。
『色彩』の影響で、私の身体も変化しちゃったけど、それでも貴方は、私を助けてくれるよね?
……そう、ありがとう。
やっぱり貴方は優しいね。凄く変態だったけど。
でも、それでも私は貴方の事を嫌いになれなかった。だって、貴方は私の事を守ってくれたから。
なんの取り柄もない、自堕落に、怠惰に、生きる為の最低限の事すら出来なくて、なんの力もない私を、貴方は守ってくれたから。
だから、どうか最後まで付き合って欲しい。
外道に堕ちるこの身であれど、どうか最後まで付き合って欲しい。
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