風紀の狂犬   作:モノクロさん

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誤字報告ありがとうございます。
訂正させて頂きました。


状況整理

「……すみません、少々、取り乱してしまいました」

 

 落ち着きを取り戻した黒服は、2人に謝罪しながら立ち上がり、そして自身の左手薬指にはめられた指輪に視線を移した。

 

「これが、改変された歴史の果てですか……やはり、クロノスの力は恐ろしいですね」

 

 何がどのような経緯でベアトリーチェと結婚に至ったのか……いや、その記憶も思い起こせば直ぐに出てくる為、黒服はそっと記憶に蓋をする。

 

 しかし、それ以外の部分。つまり、これまでの歴史が、自身の知る歴史とは大きく異なっている事が、黒服には分かった。

 

 それは、間違い探しにあるような些細なものではない。アビドス、エデン条約、そしてその後の各学園の状況。様々な所で大きな歪みが生じ、何時崩壊してもおかしくない状況だった。

 

 ほんの些細な綻びで崩壊する世界線。切り離されたものを無理矢理修復する為に、あらゆる手を尽くしたと言わんばかりの歪みは、早急に対処しなくてはならない。

 

 その為には、レンは兎も角、この世界にはもう存在しない小鳥に事情を説明する必要がある。

 

「先ずは、情報の擦り合わせをしましょう。この世界は、色彩に魅入られたレンさんの力で小鳥さんの知る世界とは大きく異なります。それを理解した上で行動していきましょう」

 

 先ずはそこからだ。そう考えた黒服の言葉に、レンと小鳥は頷きを返し、そして3人は情報の共有を始めた。

 

 先ず第一に、小鳥が既にこの世界にいない事である。

 

 原因は小鳥の幼少期、行方不明とされているが、その原因は色彩に魅入られたレンが原因である。

 

 歴史の分岐点ともなった小鳥の排除。それを幼少期に行う事で、分岐点の元となった時間軸よりも早い段階で処理し、分岐点そのものを消滅させるに至ったのだ。

 

 そして、そこから更に、一部の生徒を協力者にするべく、レンは動いていた。

 

 1人はアビドスの小鳥遊 ホシノ。

 

 そしてもう1人は、ゲヘナの空崎 ヒナである。

 

「この2人を選んだ理由はなんですか?」

 

「恐らくは、キヴォトス最高の神秘の持ち主と、キヴォトス最強格の人物、その両方を抑えておきたかったのでしょう。そして何より、自身を止める者がいるとしたら、それは小鳥さん、貴女だからです」

 

「……成程、歴史の改竄を止めたい私としては、2人は壁になりますし、何より私では2人に勝てない。抑えていて損はない人材といった所ですか。黒服さんの件も、此方側につく事は分かっていたでしょうから、その牽制としてベアトリーチェを……」

 

「…………」

 

「……いえ、すみません。別にあれですよ。変な意味では」

 

「いえ、分かってはいるのですが……その……」

 

 何か言いにくそうにしている黒服の代わりに、レンが答える。普段の間伸びした口調ではなく、少し真面目な雰囲気を纏わせ、レンは口を開いた。

 

「あのなぁ小鳥、それは違くて。私の干渉はあったけどな、2人は最終的に相思相愛ってやつでな」

 

 レンにとって、神秘の行使を妨害するベアトリーチェも障害となり得る存在だった。なので、それを未然に防ぐ為に行動した。

 

 その結果、アリウスの自治区を抑えたベアリトーチェはそこに所属する生徒達を洗脳するのではなく、愛情をもって育てるという方針に切り替えたのだ。

 

 いったい、何がどうやってベアトリーチェをそこまで改心させたのか不明だが、アリウスの生徒達はベアトリーチェの事を『信頼』以上の感情を抱く存在となり、彼女の神秘に対する研究に大きく貢献し続けたのだ。

 

 その最中に、黒服とベアトリーチェは、色々あって結婚したのだ。職場恋愛というやつだ。

 

 アリウスの生徒達から祝福と共にバシリカで愛を誓い合った2人は、アリウスの自治区に新居を構えて幸せな結婚生活を送っている。それがこの世界線の黒服とベアトリーチェなのである。

 

 その話を聞き、小鳥は、それはそれでアリウスの生徒達含めて幸せな世界線だなと思いつつ、それを口にする事はなかった。

 

 レンの話を聞く黒服は、冷静を保ってはいるが、内心はボロボロの状態だ。これ以上の失言は、彼の精神に致命的なダメージを与える事になる。

 

「黒服さんとベアトリーチェの事はさておきです、次は協力者となったホシノさんとヒナ委員長についてです。2人は今、何をしているのですか?」

 

 2人の名前を出した小鳥に、黒服は答える。

 

「……ホシノさんはアビドスを卒業したOBと共に『アビドス砂祭り』の準備をしています。恐らくはレンさんの指示がある時だけ協力する形になっているのでしょう。無論、ヒナさんも同様です」

 

 OBという単語に違和感しかないが、恐らくそこが歪みなのだろう。最悪の場合、此処がライン越えの可能性がある。色んな意味で地雷でもある事をしたのだと、そう思いながら、ホシノと同じく協力関係にあるヒナの情報に耳を傾ける。

 

「ヒナさんは、ゲヘナの風紀委員長という立場を辞して、今は違う組織に所属しています」

 

 此方も、大分改変されているようだ。あのヒナ委員長が風紀委員会を辞する程の事……まさか。

 

「あの、それって……もしかして……」

 

「はい、恐らく小鳥さんの想像通りです。ヒナさんは現在、シャーレの先生直属の護衛兼秘書という立ち位置で活動されています。記憶の中の情報ですが、遠目に見て、凄く幸せそうでした」

 

 なんだそれは幸せのハッピーセットか?

 

 ヒナ委員長が先生の直属で、秘書で護衛で……という事は、これはもう実質黒服とベアトリーチェじゃないですか。

 

「……すみません、小鳥ちゃんの冒険はこれにて終了です。次回からは『奥様はベアトリーチェ』をお送りします。それでは失礼して……」

 

「レンさん小鳥さんを抑えてください!! いいえ、銃を奪ってくださ……すみません無理ですよね!! 貴女は神秘以外、クソザコなんですから!!」

 

「安心しろぉ黒服。おめぇと違って口の中バンバンしたからって口内炎みたいなのが出来る程度だ。後、結構ひどい評価してたんだな。知ってたけど結構ショックだぞ」

 

 黒服が必死に抑え込むも、小鳥の膂力の方が遥かに上だ。そこにレンが加わったとしても意味がない。結局、一発のくぐもった銃声が響いたものの、口内を怪我して暫く悶絶する小鳥が出来上がっただけであった。




お知らせ
今後の風紀の狂犬ですが、来月のコミケに向けて、色々と準備(一般参加)がある為、更新がかなり遅くなります。本当に申し訳ありません。




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