更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
「…………すみません。少し冷静さを失っていたようです」
「おぉ少しってか、大分ってか、結構やばかったけどなぁ」
自販機で水を買ってきた黒服から水を受け取り、口内を濯ぎながら小鳥は謝罪する。
ほんのりと鉄の香りが鼻腔を擽り、口内を濯ぎ終えた小鳥は、喉の奥に散弾の名残りを残しつつも、一呼吸置いた。
「ふぅ……では、レンちゃんに黒服さん」
そして小鳥は、気を取り直すと再び言葉を紡ぐ。
「取り敢えず、ざっと話を整理しましょうか」
「だなぁ、現状じゃ情報が少な過ぎるしなぁ」
そう、今回の歴史の改竄は、あまりにも情報が少な過ぎるのだ。
唯一分かっている事は、色彩に魅入られたレンが敵である事。そして、レンの下にはキヴォトスでも最強格のホシノとヒナがいる事。ただし、その二人はあくまでもレンに召集されれば協力する関係であり、常にレンを守っているわけではない事。そして、黒服とベアトリーチェが結婚している事。
最後のくだりは必要ないかもしれないが、実はそうではない。
小鳥と黒服は対等な協力関係にあったが、この世界では、その関係が絶たれた状態である。つまり、表立って黒服の協力を得られないと言う事だ。
協力、特に資金面での協力を絶たれた事はかなりの痛手である。
レンの歴史改竄が何処まで影響しているかは判断出来ないが、小鳥が所持している携帯は使えない状態だ。
この世界に存在しない小鳥の携帯は使えない。これまでの世界であれば、小鳥という人物が存在するという定義のもとにある程度の自由はあった。しかし、肝心の小鳥がいなかった世界線もなれば、此処にいる小鳥は、自身の身元を証明するものは何もなく、一言で言えば無一文の状態となっている。
「……因みに、この世界線のお金の単位はどうなっていますか?」
そう黒服に問い掛けると、黒服は、少し間を置いてから口を開いた。
「……ゴールドです」
「……ゲームか何かの単位ですかね?」
「……どうやら、お金の単位も変わっているようですね。これでは、紙幣も小銭も使えないという事になります」
レンの携帯に残された電子マネーも使えない。そもそも、紙幣や小銭すら使えない状態という、完全に此方の資金が絶たれてしまっている状態となっている。
これは中々に前途多難だと思いながら、黒服と小鳥はこれからの事について話し合った。
「運がいい事に、私の財布の中身はこの世界線に適応しているみたいです。つまり、いくらかお金が使えると言う事になります」
「使える金額はいくらですか?」
「……2人が2、3日は宿泊と飲食に困らない程度の金額です」
「成程」
この世界の事は、まだ分からない事だらけだ。レンも必要な情報をあまり持ってはいない状況である以上、手探りで進めていくしかない。
「……先ずは、情報を集めましょう。協力者を探します」
「協力者? しかし、この世界はレンさんが改竄した世界ですよ」
「その改竄も完璧では無い筈です。無理矢理改竄した以上、何処かに歪みが生じます。その歪みを探れば、記憶に齟齬が生じて困惑している生徒や住民もいると思います」
「……成程。確かに」
その生徒や住民が協力的かは定かでは無いが、それでも、レンが改竄した世界に違和感を感じ、その歪みを正そうとする協力者を発見し、彼女達から協力を得られるかもしれない。
砂漠の中から目的の砂粒を探すような作業だが、それでもやってみる価値はあるだろう。
「黒服さんは一先ず家に帰った方が良いかもしれません。その……マダムの件もありますし」
「……そうですね。しかし、2人の身元を証明出来ない以上、ホテルの宿泊は……」
「まぁ、なんとかしてみせますよ。最悪、誰か捕まえてその子名義でホテルに宿泊すれば良いですし」
無論、そうなれば資金繰りも難しくなる為、安く済ませる事は出来ないが、仕方のない事だ。
「話は纏まりましたね。では、先ずは各自治区を回って情報収集と協力者を探してみます」
「それと、第一目標は色彩に魅入られたレンちゃんの捜索です」
レンが敵である以上、その行動には何らかの目的があり、そしてそれを達成する為の手段を必ず持っている筈だ。
最悪、色彩に魅入られたレンを無力化する事が出来れば、それだけでこの世界線を切り離し、正しい歴史に修正する事が出来るだろう。しかし、その為にはレンの所在を探さなくてはならない。
「私は各自治区を周り、情報収集と資金繰りをどうにかします。黒服さんも、合間合間で構いませんので情報収集を。連絡はレンちゃんに……この際、相手側のレンちゃんの名称も決めておきましょう」
此処に居るレンと色彩に魅入られたレン。基となったレンと変わらないので言い辛い。
「では、色彩に魅入られたレンさんを『レン・テラー』と呼ぶ事にしましょう」
レン・テラー。呼びやすく、分かりやすい。
「それでは、第1目的はレン・テラーの確保、もしくは無力化。その為にホシノさんやヒナ委員長が妨害するのであれば、私が対処します」
勝てる見込みはゼロに等しいが、2人と比べるとまだ勝てはしないが時間を稼ぐ程度の事は出来るだろう。
「その後は、状況に応じて判断しましょう。それでは、此処からは別行動となりますが……」
そう言って小鳥は黒服に視線を向けると、黒服も、その視線に答えるように口を開いた。
「……ご武運をお祈りします」
「えぇ、必ずレン・テラーを確保します。黒服さんも、お気をつけて」
目的と目標を定め、黒服は小鳥とレンの元を離れる。暫くは別行動だ。最悪、連絡も取れないと判断した方が良いだろう。
そして何より、これまでの話し合いの中で沈黙を貫いたレンに視線を向け、その表情を読み取る。
レンは隠し事をしている。
それも、今回の一件に関わる重大な事を。そしてそれが、今回の件の解決に導かれる事を知っている。
知っていて、レンは沈黙を貫いた。そこには理由があり、そしてそれが、レンが色彩に魅入られた事に関する事であるならば、小鳥はそれを追求する事が出来ない。
言いたくても言えない。いや、言いたくないのかもしれない。それがレンにとって、何を意味するのかまではまだ分からない。しかし、それを言う機会が出来た時、その時話してくれれば良いだろう。
そう判断した小鳥は、レンと共に行動に移す事にした。
嘘予告?
各自治区を巡り、情報収集に勤しむ小鳥とレン。見知った友人や知人が様々な形で歴史の改竄に巻き込まれている状況に動揺を隠す事が出来ない。
そんな中、何処にでもいる一般生徒が落としたグッズを拾った小鳥の言葉に、反応する少女がいた。
「すみません。ペロロ人形を落としましたよ」
「ありがとうございます。所で……」
ーなんで貴女は、ペロペロさんの事をペロロ様と正しく認識しているんですか?ー
次回、風紀の狂犬
『キヴォトス解放戦線ファウスト』
お知らせ
更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
これから、定期的ではありますが引き続き更新していきたいと思います。
そして、もう一つお知らせがあります。
この度、作者であるモノクロは今年の夏コミにサークル側として参加したいと思っております。現在、サークル申請をしている状態ですので、受かるかどうかの結果次第ですが、結果が分かり次第、改めてお知らせしたいと思います。
絵の方は不得手ですので、小説を出したいと思っています。そして、作品の表紙と挿絵は依頼で描いて頂いたので、後は受かり次第、製本の準備といった状態です。内容はヒナと先生の作品(r18)ですが、この件も、受かり次第、改めてご報告させて頂きます。
それでは、長文となりましたが、これからも風紀の狂犬を宜しくお願い致します。
評価や感想など頂けると幸いです。