風紀の狂犬   作:モノクロさん

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些細な変化

 黒服と別れ、各自治区を回る事になった小鳥とレンは、手始めに拠点となるホテルを確保すべく、ゲヘナの自治区を目指していた。

 

「なぁ、なんでゲヘナなんだぁ?」

 

「ゲヘナは治安が悪い事で有名ですからね。治安が悪いがイコールになって宿泊料が安く済むんですよ」

 

「いや、でもよぉ」

 

 レンは何か言いたげだったが、内容は大体分かる。治安が悪い所ではゆっくり寝泊まり出来ないのではと、レンは言いたいのだろう。

 

「大丈夫です。私がいますから」

 

「……いや、おめぇが1番心配なんだぞぉ」

 

「私が心配ですか?」

 

「おぉ、だってよぉ。ゲヘナっつったら、小鳥の出身校だろぉ。だったらよぉ、小鳥の知り合いがいるかもしれねぇじゃねぇか」

 

「そうですねぇ。確かにその通りですが、私が知っているだけで、今の彼女達は私の事を覚えてないから問題ないと思いますよ」

 

「いや、おめぇ。それは……」

 

 小鳥の言う事は事実だ。今の彼女達は、小鳥の事を知らない。しかし、レンはそうは思っていない。小鳥の言っている事は、言い換えれば『他人として接してください』と言っているようなものだ。

 

 小鳥にとってゲヘナの関係者は良くも悪くも大切な存在だ。そんな彼女達を前にして、小鳥が知らない他人として扱われた時の事を考えると、レンは何だかやきもきしてしまうのだ。

 

 しかし、小鳥の言う事も理解出来る。だがやはり、気が進まないのは確かだった。

 

「まぁ、なるようになるでしょう」

 

 そんなレンの気持ちを知ってか知らずか。小鳥はそう言葉を締めくくり、ゲヘナ自治区へと足を踏み入れた。

 

 そして……。

 

 

 

 

「ヒッ……ナ、ナンデ……ナンデ……?」

 

 機材の残骸の上に腰を下ろし、ガタガタと震える小動物こと鬼怒川 カスミを両膝の上に乗せ、その頭を撫でながら周囲を見渡す小鳥の姿があった。

 

「いや、なんでだぁ?」

 

「仕方がなかったのです。私の前で違法建築しようとしていたのですから。それに、良き協力者を確保出来ました。幸先が良いですよ」

 

 ゲヘナの自治区に足を踏み入れて早々、温泉開発部が公共施設の前で無許可に温泉を掘ろうとしていた所に出会した小鳥は、周りの住民やカスミ達の様子から状況を察し、数十人はいた温泉開発部を1人で壊滅。そして部長であるカスミを捕獲したのだ。

 

 温泉開発部は、この世界線でも温泉開発部のままだった。これなら安心して利用する事が出来る。

 

 主に宿泊場所を確保するという名目の為……と、言いたいが、立場的にはカスミもゲヘナ界隈ではテロリストみたいなものだ。そんな彼女に宿泊施設の関係者が部屋を提供する筈もない。

 

 つまり、温泉開発部を壊滅させ、カスミを捕まえた事に意味がないのだ。

 

 あるとすれば、恐らくは……。

 

(猫吸いならぬ、カスミ吸いってやつかぁ? ほんの一瞬で色々あったから、気持ちを落ち着かせたいって感じなんだなぁ)

 

 レンのその考えは、半分当たっていた。カスミのアタマを撫でながら耳元で何かを囁いている。いや、話しかけているといった方が良いのかもしれない。

 

 小鳥の問いに、カスミは戦々恐々としながら受け答えをし、ある程度カスミを満喫した小鳥は、カスミのボディチェックをして、隠し持っていた物を全て没収した後に、機材の残骸の上に吊し上げると、そのまま放置したのだった。

 

「さて、後の事は風紀委員会に任せるとしましょう。まぁ、活動自体は、ほぼあってないようなものみたいですけどね」

 

「あぁ〜やっぱ。ヒナさんがいなくなったからかぁ?」

 

「それもありますが、今は色々とゲヘナも立て込んでいるみたいですからね。仕方のない事です」

 

 カスミが言うには、ヒナがいなくなった風紀委員会は弱体化の一途を辿ったが、先生の計らいで、万魔殿と風紀委員会を併合し、新たな組織として運用する事になったらしい。

 

 しかし、その組織が問題だった。

 

 万魔殿の生徒達は、風紀委員会を毛嫌いする生徒が多い。特にマコトがその際たる例だった。

 

 ヒナの尻拭いの為に誰が協力するものかと、非協力的な姿勢を見せたが、そこでクーデターが起き、マコトは失脚。

 

 万魔殿のトップはクーデターの首謀者である丹花 イブキと棗 イロハの両名が仕切る事となったのだという。

 

 溺愛していたイブキに万魔殿を追い出されてしまったマコトは、失意のドン底に突き落とされた後、給食部に拾われ、今では厨房の隅でジャガイモの皮を剥いているらしい。

 

「トップが入れ替わった上に新たな組織として活動する上で、どうしても指揮系統が混乱してしまうようです。ですので、こうして温泉開発部が暴れ回っていても初動が遅れてしまうのは、まぁ仕方のない事なのでしょう」

 

 噂をすれば、遠くから風紀委員会のメンバーを引き連れたイオリが、機材の残骸に括り付けられたカスミを発見し、護送車に載せるように指示を出していた。

 

「因みに、イオリちゃんが実働部隊のトップみたいです。レンちゃんは知らないでしょうが、他にも何名かはそれなりの肩書きや、元の鞘に戻った子もいます」

 

 イオリが実働部隊として活躍する中、チナツは元の救急医学部に戻ったらしい。

 

 そして、風紀委員会のナンバー2のアコといえば……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやら先生とヒナ委員長のペットになったらしい。アコちゃん輩先も幸せになったみたいでなによりだ。




アコは見つけたのです。

誰もが幸せになれる物語を

アコと先生とヒナが織り成す物語を……青春の物語を!!


おまけ
イオリ:え、あぁ、アコちゃんか……そうだな。まぁ、最初は驚いたけど、それでも、あんなに幸せそうにヒナ委員長に連れられて四つん這いで散歩している姿を見たらさ……うん、なんだろ、ちょっと疲れているのかな? 最近病院に通う回数が増えたんだ。特にアコちゃんを見た後、特にな……うん。アコちゃんは幸せなんだよ。うん。そう思う事にしたいんだ。そうでないと、ちょっとおかしくなりそう……かな?
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