訂正させて頂きました。
ゲヘナ自治区を出た小鳥達は、ヒフミの案内の元、トリニティ自治区に足を運んでいた。
その道中、ヒフミは事の経緯を小鳥達に説明する。
ある日突然、世界がガラリと変化した感覚に戸惑いを覚えつつ、ヒフミは普段と変わらない生活を送っていた。
そんな中、同じ補習授業部のメンバーと、休日にショッピングに行った時、事件が起こったのだ。
モモフレンズのグッズを販売しているショップで商品を物色していた時、ヒフミは『ペロペロさん』のぬいぐるみを見つけ、それを購入しようとした。
しかし、そのぬいぐるみを持った時に、ヒフミが感じていた違和感に気付き、慌ててペロペロさんのぬいぐるみのタグを確認したのだ。
タグには『ペロペロさんシリーズ』と書かれており、何の違和感もない。
だが、その違和感のない事が違和感だったのだ。
このぬいぐるみはペロペロさんではない。この子の本当の名前はペロロ様だ。何故、その事に気付かずに生活していたのだろう。何故、この違和感に気付かなかったのだろう。
ヒフミの疑問は尽きなかった。しかし、その答えは直ぐに分かる事になる。補習授業部のメンバーに問い掛ければ、皆が皆、ヒフミの言葉を理解出来ずに首を傾げている。
皆が皆、何を言っているのだとヒフミに問い掛け、そして改めてぬいぐるみを見れば、皆が揃って『ペロペロさん』と言う。
ヒフミ自身も少し前まで自分の大好きなモモフレンズのキャラクターはペロペロさんだと思っていた。そう認識していたし、そう記憶していたのだ。
しかし、あの時、ぬいぐるみを掴んだ瞬間、心と魂が『これはペロロ様だ』と認識した。その事に漸く気付き、そして自身が周囲とは違う認識をしている事に気付いたのだ。
それからヒフミは何度もモモフレンズのグッズを見て回り、その都度認識の齟齬が無いか確認する中、自分と同じように周囲の認識とは違った認識をしている生徒の存在に気付いた。
それは、本当に些細な事から重要な事まで様々だ。親友がいなくなった。大事にしていた筈の宝物が無くなった。数学が得意だった筈なのに歴史の方が得意になっていた等、本人達ですら、何故そのように認識していたのかすら分からないものばかりだ。
しかし、それらが積み重ねられていく中で、ヒフミは1つの結論に辿り着いた。『歴史が改変された』と。
それも、自分達の認識の外から無理矢理書き換えられ、その余波で巻き込まれる形として歪みが生じている事に。
「一度そう認識したら、もう目の前の事が信じられなくなりました。ここ最近起きたトリニティ内部の出来事ですら、違和感でしか無くなったんです」
「トリニティ内部の出来事……それは一体」
「例えばですが、シスターフッドのサクラコ様が矯正局送りにされました」
「え、あのサクラコさんがですか?」
本人とは直接話した事はないが、遠目に見ても、真面目で立派な方だと思っていた小鳥にとって、これは衝撃的な出来事だった。
「はい、あのサクラコ様がです。普段から誤解されやすい方だったのですが、それが影響して、トリニティを転覆させようとした罪に問われ、矯正局に送致されました。その事に何の違和感も覚えていなかったんです」
矯正局に送られるまでの間、サクラコは無実を訴えたが、誰もそれを信用せず連れて行かれたようだ。
「他にも、救護騎士団のミネ団長も同じく矯正局送りにされました」
「これも……誤解で?」
「いえ、ミネ団長は傷害罪で捕まりました。怪我人が暴れていたので殴って大人しくさせました……というのが彼女の主張です」
「あぁ……成程ですね」
ちょっとフォロー出来ないなと感じつつも、ミネの事も知っていたので、普段の彼女らしいやり方をして捕まったのだと思いながら、ヒフミの言葉の続きを待った。
「他にも、ティーパーティーのナギサ様が珈琲派になっていたりキャスパリーグが復活して暴れ回っていると様々な情報がありますが……」
と、本当に些細で、しかし重大な変化にヒフミは戸惑っていた。
恐らく、全てが全て、レン・テラーの仕業ではないだろう。
しかし、歴史とはほんの些細な出来事がきっかけで大きく変化する事がある。
所謂、バタフライ効果というものだ。
幼少期の小鳥の死や梔子 ユメの生存。果てはヒナ委員長の件や黒服とベアトリーチェの変化で、周囲にも影響が及んでいるのだろう。
まさか、ペロロの名称がペロペロさんになるとは思いもしなかったが。
「現状、トリニティは2つの組織のトップが不在で、極めて危うい状態。今は正義実現委員会がなんとか場を収めてはいますが、それも時間の問題です」
「それでヒフミさんは、ゲヘナで情報収集を……」
「あぁ、いえ……あそこにいたのは、ゲヘナ限定のペロロ様グッズが販売すると聞いていたので」
「そっちですか!!」
思いの外、趣味嗜好に偏っている事に小鳥が驚いていると、ヒフミは顔を真っ赤にしながら手を左右に振った。
「い、いえ!! ペロロ様グッズは大事ですよ!! トリニティにはない限定品がゲヘナにあると聞いたら、居ても立っても居られなくて」
「そ、そうですか」
ヒフミの熱弁に若干気後れしつつ、彼女がゲヘナにいたのはそういう理由かと納得した。
認識の齟齬に困惑しつつも、己の趣味嗜好に拘る。なんとも彼女らしいと言えばらしいのだろう。
そうこうしている内に、トリニティ自治区に到着した小鳥達は、ヒフミの案内で、人通りの少ない区画を歩き、ある建物へと辿り着いた。
「此処です」
ヒフミが案内したのは、トリニティ自治区でも古くて大きなビルで、周囲と比べても、一際目立っている。
「このビルは少し前に廃ビルになった建物ですが、電力がまだ生きているんです。そして、此処に、私と同じように周りの環境の変化に違和感を感じた生徒達が集まっているんです」
ヒフミはそう言って廃ビルの階段を上ると、小鳥とレンを中に案内した。中には様々な学園の制服を着た生徒達が一定のグループを形成し、行動していた。
その数、視界に映るだけでも数百人はいるだろう。
「これだけの人数を、ヒフミさんは集めたんですか?」
「私だけではありません。みんながみんな、違和感の正体を確かめようと行動している内に、自然と集ったんです。そして、このビルに辿り着きました」
組織だったグループではないが、同じ境遇の仲間として、ヒフミを中心に集まったのだろう。中にはグループの輪には入らずに個人で行動している者もいる。
その内の1人に目が行くと、ヒフミが彼女の事を説明してくれた。
「あの子は百鬼夜行の生徒で……確かシュロちゃんです。彼女も、何かの物語を作りたかったみたいなんですが、それが何かを忘れてしまって、今は小説サイトのハ◯◯ルンで自作の小説を書いて思い出そうとしています」
説明の最中に、何らかの動きがあったのだろう。シュロは携帯を凝視した後に顔を真っ赤にしながら画面を何度もタップしていた。
あの動きは分かる。恐らく投稿した小説が低評価を受けたか、もしくは誹謗中傷を受けた事に対するお気持ち文を書いているのだろう。
あれは書き込みサイトでレスバが始まる流れだなと、小鳥はシュロの行動からそう判断した。
「此処はまだ表立った行動はしていませんが、この違和感の正体が分かり次第、みんなで協力して異変に対処していこうと思っているんです」
自分達だけでなく、ヒフミのような生徒達も今回の事件に対処しようと動いている。
何をすればいいのか、手探りではあるが、それでも何か出来る事がある筈だと、行動している。
本当に凄い事だ。ヒフミも、彼女の周りにいる生徒達も。
歴史の改竄という大きな異変を前に、それを乗り越えようと懸命になっている。
何が起きているのかすら、分からないというのに。
「それで、小鳥さん……レンちゃん。2人にお願いがあるんです」
ヒフミは真剣な眼差しで小鳥とレンを見つめた。その目は、何か強い覚悟を持った者の目だ。
「この違和感を、私達と一緒に解決してくれませんか?」
「一緒に……ですか?」
小鳥の問い掛けに、ヒフミは力強く頷いた。
「私達だけでは、まだ違和感の正体が掴めません。でも、小鳥さん達となら……何か分かる気がするんです」
それは確信に近しいものを感じていた。違和感や記憶のずれはあれど、それを理解していながら落ち着いていた小鳥達に、ヒフミは希望を見出していたのだ。
「無理にとは言いません。ですが、何か情報があればそれを共有してくれるだけでも良いんです。小鳥さんが協力してくれるなら、私達も協力を惜しみません」
ヒフミは小鳥達に握手を求めるように手を差し出した。
「私達は私達の大切な思い出を守りたいんです。それが、私達が立ち上げた『キヴォトス解放戦線』の理念だから」
・キヴォトス解放戦線参加者プロフィール
箭吹 シュロ
ある日を境に記憶の大半を消失させた生徒
覚えているのは自分の趣味と目的の為に『物語』を作ろうとしていた事。しかし、その物語がなんなのか、思い出そうとしても思い出せないでいた所をヒフミに拾われた。この時、ヒフミは百鬼夜行限定ペロペロさん(ペロロ様)のグッズを買いに来ていた。本人の目的が物語を作る事だったので、小説サイトを紹介し、そこで執筆活動に取り組んでいる。最近は、所謂なろう系作品にありがちな『〇〇を追放された手前が実は〇〇において最強だった件』なる作品を投稿している。
※作中、執筆中にハ〇〇ルンから感想通知と評価が来たのをドキドキしながら確認すると、最低評価と誹謗中傷を書かれていたので、お気持ち文からレスバに発展した。尚、負けて泣いた。この後の登場は恐らくない。
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