訂正させて頂きました。
今回は少し短めです。
ーアリウス自治区ー
この世界線の黒服は、定時には必ず仕事を終わらせ、そして何処にも寄らずに家に帰るのが日課となっている。
擦り込まれた記憶の中の黒服。
アリウス自治区、バシリカの近くに設けた彼と彼女の新居。
玄関の前に立つと、心の何処かで『帰ってきた』という安堵が芽生え、黒服はその感情に思わず苦笑してしまった。
本当に……本当に一体何がどうなればこうなったんだ?
身体が勝手に身嗜みを整え始めるし、その行動を止めようとも思わないし、寧ろ自然な事だと『私』は受け止めている。寧ろ受け入れてさえいる始末だ。
(本当に何をしでかしたんですかレン・テラーさん)
まだレンとの繋がりのおかげで、これが偽りの記憶である事を認識しているが、何時その繋がりが切れてしまうかと思うと気が気でならない。
黒服はため息をつきながら玄関の鍵を開けた。
「ただいま帰りました……ょ」
玄関のドアを開けると、夕餉の香りが鼻腔を擽り、そして台所の奥からパタパタと足音が聞こえてきた。
「おかえりなさい。あなた」
「……ただいま帰りました。ベア子さん」
出迎えてくれたのは、エプロン姿の妻、ベアトリーチェ。彼女に返事を返して靴を脱ぎ、玄関を上がるとベアトリーチェは私に抱きつき、その小さな頭を黒服の胸元に押し付けてきた。
そんな彼女の仕草に、黒服は愛おしさを感じると共に、存在しない記憶に身体が拒絶反応を示そうとする。
「大丈夫ですか?」
ベアトリーチェが心配そうに見上げてくる。その姿に、黒服は笑みで返した。
「……えぇ、大丈夫ですよ。少し仕事が滞ってしまいまして、その影響で疲れが出たのかもしれません」
「そう……ですか。それでしたら、今日はゆっくりと休まれて下さい。食事とお風呂の用意は終わっていますので、どちらを先にするかですが……」
と、一度言葉を切り、上目遣いに黒服を見つめる。
「支障がないのでしたら、先の2つの選択肢の他に、『私』も含まれますが、如何ですか?」
「っ!!!?!!!!!!??!!?????」
突然の発言に言葉を失う黒服。その反応に、ベアトリーチェは頬を赤ながら黒服の背中に回した腕にそっと力を入れた。
「ごめんなさい。ふしだらなマダムと笑って下さい」
謝罪の言葉とは裏腹に、その仕草が何を意味しているのか、それは言うまでもない。
彼女はヤる気だ。
今……此処で!!
2人だけの新居。2人だけの空間。何も起きない筈もなく、ベアトリーチェは黒服の手を取り、寝室へと導いた。
「うわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ??!!!!?!!!!?!!!」
「ちょ!! 黒服さん落ち着いて下さい!!」
「やべぇぞ小鳥。錯乱しちまってる」
後日、改めて合流した3人だったが、突然黒服が虚無顔になると同時に、急に奇声を上げながら発狂したのだ。
突然の奇行に、小鳥もレンも驚きの声を上げる。しかし、黒服がここまで発狂する理由を知っているレンは何処か気まずい様子だった。
「すまねぇ……すまねぇなぁ黒服ぅ……」
例えそれが過去の記憶と混合したものであったとしても、ふしだらなマダムと共に夜のラブ・イット・ワンをした記憶がトラウマとなり錯乱しているのだ。
その後、小鳥の顎に右ストレートをかました黒服を小鳥が組み伏せ、血反吐を吐くまでビンタして正気に戻したが、暫くの間、使いものにならなくなっていたのは言うまでもない。
敵対者情報①
・小鳥遊 ホシノ
レン・テラーの協力者。有事の際はレン・テラーに協力する事を条件にユメ先輩の死を無かった事に。
無事にアビドスを卒業したユメ先輩だが、彼女はアビドス自治区に残っており、借金を返済しながらも、アビドス砂祭りの準備をしている。
ユメ先輩が卒業した事と、自身に後輩が出来た事で、中々ユメ先輩に会えない事にヤキモキしている。
そんなある日、アビドス自治区の外に出ていた際に見かけたお店に目が止まり、暇を見つけては入り浸るようになる。
入店前、偶々玄関先を掃除していたスタッフは、ホシノの言葉を聞いた。
「そこにいたんですね。ユメ先輩」
以降、オプションと延長増し増しで常連となったホシノは初めての入店からずっと1人のバイトの子を指名し続けている。
その子の名は『ヒヨリん』最近お店に入った新人である。
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