風紀の狂犬   作:モノクロさん

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今回は少し短めです。


解放戦線始動

―キヴォトス 某所―

『私達の、青春の物語(ブルーアーカイブ)を!!』

 

 ファウストの青春物語宣言と共に、キヴォトス解放戦線のメンバーが動き出した。

 

 街中では『擬態型』のアバンギャルドが本性を現し、生徒や市民を襲い始める。

 

 逃げ惑う民衆を他所に、武装した解放戦線のメンバーが現場へと急行していた。

 

「居たぞ! 『擬態型』だ!!」

 

「撃てっ! 一体残らず破壊しろっ!!」

 

 解放戦線のメンバーが発砲し、アバンギャルドが撃破されていく。彼女達の中に裏切り者はいない。

 

 徹底した管理体制の元、アバンギャルドの『擬態』を暴き、破壊する。

 

 そして、彼女達もまた、一般の生徒や市民に紛れ込んでいた者たちが多く、アバンギャルドが出現すると同時に、その牙をむいた。

 

『助けてくれ。こ、こっちにも変な奴が……』

 

「撃てっ! そいつはアバンギャルドだ!」

 

「ファウスト様の御心のままに!!」

 

「ファウスト様バンザーイ!!」

 

「ファウスト様バンザーイ!!」

 

「ファウスト様万歳! 青春物語(ブルーアーカイブ)は私達の物だ!!」

 

 狂気の雄たけびと、『擬態型』アバンギャルドの破壊する音が響き渡る。

 

 市街の混乱だけではない。学園でも多くの解放戦線がアバンギャルドとその思想に賛同する生徒と市民の全てを相手に戦いを繰り広げていた。

 

 そして、その混乱は本来市民や生徒を守る立場であるヴァルキューレ警察学校でも起きていた。

 

「おい!! お前たちそこで何をしている!!」

 

 罪を犯し、収容された生徒や市民たちが多くいる矯正局で、解放戦線の思想に同調した関係者がバリケードを張り、囚人達を解放していた。

 

 堅牢な監獄に閉じ込められていた筈の犯罪者が一斉に解き放たれる。

 

 看守の生徒達は『ファウスト様の御心のままに』と制止する生徒達の言葉に耳を傾けようとしない。

 

 そして、彼女達から押収した武器弾薬を囚人達に渡し、共にキヴォトスに革命の旗を掲げようと扇動する。

 

 その中には、トリニティに所属するシスターフッドのサクラコや救護騎士団のミネも含まれていた。彼女達もまた、『ファウスト様の御心のままに』と虚ろな目で解放戦線の思想に賛同した生徒達と共に武器を手に戦っている。

 

「なん、だ……これ……」

 

 その惨状を目の当たりにして、ヴァルキューレ警察学校に所属する生徒達は言葉を失っていた。

 

『ファウスト』という一人の生徒の名のもとに、キヴォトスの均衡は崩れ去り、崩壊へと導かれていた。

 

 全ての生徒と市民が狂っていく。誰も彼もがその狂気に染まり、『ファウスト』という生徒に付き従うように。

 

 擬態していたアバンギャルドが市民と生徒を捕縛していく。その思想に賛同した生徒や市民諸共に攻撃を仕掛ける解放戦線。

 

 誰がどちらの陣営に所属しているか分からない。誰が助けるべき市民か生徒かすらも判別できない。

 

 現場に急行したヴァルキューレの生徒達は、混乱し、右往左往するしかできなかった。

 

「くそっ! どうなっている! 何が起きているんだ!!」

 

「本部っ! 本部っ!! 応答してくれ!! このままだと現場は崩壊するぞっ!!」

 

「わ、私達は……一体誰を守ればいいんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ヴァルキューレの生徒達は、その混乱に飲み込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その混乱は港に位置する区画でも起きていた。

 

 比較的過疎化した港にて、漁師達が足を止め、遮蔽物の無い海の先を凝視していた。

 

「なん……だ……あれは……」

 

「魚……か?」

 

 そんな漁師達の目に、海の底から何かが近づいてくるのが見えていた。

 

 最初は、魚の類かと思ったが、違う。この距離に近づけば近づく程、魚ではなくその『何か』の正体が露わになっていく。

 

「お……おい……あれって……」

 

「……クジラではない……いや、そもそもあれはいったい何なんだ?」

 

 海面が盛り上がり、ゆっくりとその姿が明らかになる。それは、巨大な……あまりにも巨大過ぎる『何か』だった。

 

 白く……丸っこい……鳥の様な姿。それがのそりのそりと港へと近づいてきていた。

 

「な、何なんだ……あれは……」

 

 呆然と立ち尽くす漁師達。しかし、本能からか、一人が後退り、踵を返して港から逃げ出す。

 

 それに釣られ、他の漁師達も慌てて逃げ出した。

 

 駐在していたヴァルキューレの生徒も、一度は銃口を向けたが、その『何か』の異様な雰囲気に、異常なまでの巨体さに、ゆっくりと銃口を降ろし、市民の非難を優先させた。

 

 荷造りする暇もない。皆が皆、丸腰で逃げ惑う中、一人の漁師が振り返り、そして『それ』を目にして言葉を失う。

 

 大きい……なんて言葉では言い表せない巨躯。一歩踏み出す度に地面が揺れ、建物は崩壊していく。

 

 そして、その『何か』は鳴き声を上げた。人間の物とは思えない咆哮が海を揺らし、まるで世界そのものが悲鳴をあげているかのように響き渡った。

 

『待ってて……今……行くよ……』

 

 その声は誰にも理解できないだろう。しかし、明確な意思を持った『何か』は真っ直ぐに突き進み、妨げとなるあらゆるものを踏み潰した。




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