風紀の狂犬   作:モノクロさん

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神話の戦い

―エリドゥ要塞都市―

 場所は変わってエリドゥ要塞都市。

 

 序盤はアバンギャルドの軍勢の猛攻により、防戦一方だったキヴォトス解放戦線だったが、次第に戦況は変わり始める。

 

 各自治区で一斉蜂起したキヴォトス解放戦線の連携。そして臨戦モードとなったホシノの猛攻により、アバンギャルドの軍勢は徐々に戦線を維持する事が出来ず、後退を余儀なくされた。

 

 そして、その隙を見逃す解放戦線ではない。エリドゥ要塞都市を囲むように布陣し、エリドゥ要塞都市へと迫る。

 

「ファウスト様にご報告!! カイザーコーポレーションが我が陣営に!!」

 

「それは本当か!!」

 

「はい!! カイザーコーポレーションに潜り込んでいた同士が上層部を掌握!! プレジデント!! ジェネラル!! その他多くの幹部を捕らえたとの事!!」

 

「更に報告!! カイザーコーポレーションが所有する民間軍事会社より航空支援の報告!! 弾道ミサイル多数接近!! 着弾まで30秒との事!!」

 

 報告が次々と舞い込み、エリドゥ要塞都市の彼方此方で爆発が起き、そして、その爆発が徐々にエリドゥ要塞都市へと迫ってゆく。

 

「我々の勝利は近いぞ!!」

 

「ファウスト様ばんざーい!!」

 

「そうだ。もはや勝利は目前……っ!!」

 

 しかし、その報告は突如として途絶えた。そして、次の瞬間……。

 

「っ!?!!??!!」

 

 エリドゥ要塞都市の中心に巨大なアバンギャルドが聳え立つ。

 

『まさか人間が此処までやるとは』

 

『しかし、何の問題もない。我々には決戦兵器がある』

 

『この決戦兵器さえあれば、人間は忽ち屈服する事になるだろう』

 

『そして我々と同じくアバンギャルドになるのです』

 

『さぁ、これぞ我々アバンギャルドの最終形態。『終極』のアバンギャルド。お前達の抵抗は無意味と知るが良い』

 

 その言葉に、キヴォトス解放戦線の生徒達は動揺する。

 

「な……なんだ……アレ……」

 

 そして次の瞬間、『終極』のアバンギャルドの全身から無数のミサイルが発射された。

 

「っ!! 総員退避ぃぃぃぃ!!」

 

「だ、ダメです 間に合いません!!」

 

 キヴォトス解放戦線の生徒達が敗北を覚悟した瞬間、彼女達を庇う様に巨大な影が『終極』のアバンギャルドに立ちはだかり、ミサイルの雨をその身で受け止めた。

 

「あ、アレは……」

 

「マコトさんが言ってた……ゲヘナの最終兵器……『パンちゃん』?」

 

―キキ……キキキキキ……あぁ、そうだ―

 

 ミサイルを受け止めたパンちゃんから声が響き渡る。

 

―漸く……漸く馴染んできたぞ……そうか、これが……『力』か……キキキキキ……キャハハハハハハッ!!―

 

 そう言って、パンちゃんは姿を徐々に変化させ、ドロドロの人型へと変貌していった。

 

「な、なんだ……何が起きて……」

 

 キヴォトス解放戦線の生徒達は困惑する。しかし、そんな事に構う暇もなく、パンちゃんは次々とミサイルを受け止め、その口から不気味な触手を射出させて、ミサイルを迎撃し、逆に『終極』のアバンギャルドに無数の触手を突き立てた。

 

―キキキキキ……貴様も、取り込んでやる……イブキを……イロハを返してもらうぞ……キャハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!?!―

 

 そう言って、パンちゃんだったものは『終極』のアバンギャルドを取り込み始める。

 

 しかし、『終極』のアバンギャルドも無抵抗に取り込まれるほど甘くはない。

 

『無駄ですよ。貴女と我々では格が違う』

 

 そう言うと、『終極』のアバンギャルドは高出力のレーザーを射出し、パンちゃんだったものの触手を悉く焼き払い、更に出力を高めたレーザーでパンちゃんだったものに止めを刺そうとする。

 

「くそっ!! このままでは巻き込まれる!!」

 

「せめてファウスト様だけでもお逃げください!!」

 

「ダメです!! 此処で引く事は出来ません!! 私が此処で1人逃げたら、皆の頑張りを否定する事になります。それだけは絶対にダメなんです!!」

 

「し、しかし……」

 

「それに、此処に集まったのは私達だけではありません!!」

 

「それは……それはいったい……」

 

「キヴォトスの象徴……私の愛したあの方がきっと……っ!!」

 

 ヒフミの……ファウストの言葉に応えるように彼女達の後方から一際大きな鳴き声が木霊する。

 

「っ!! アレは……まさかっ」

 

 背中には恐竜めいた突起を生やした巨大な鳥の様な生物。

 

 人々から忘れ去られ、消えゆく運命にあった神秘の塊……。

 

 名を奪われ、『ぺろぺろさん』と偽りの名を与えられ、そしてキヴォトスの生徒達から忘れられた『それ』は、ヒフミと……ファウストと漸く再開を果たしたのだ。

 

「ペロロ……様……?」

 

 ファウストがそう呟くと、それにつられて多くの生徒達がペロロ様の名を思い出す。

 

「そう……だ。あれは、ペロロだ……」

 

「なんで……私達は、ペロロの名を……」

 

「なんで忘れていたんだろう……」

 

「なんで私達は……」

 

 皆がペロロの存在を思い出し、その名を口にする。

 

 その様を見下ろしながらも、ペロロジラはファウストへと目を向け、そして再び鳴き声を……咆哮を上げた。

 

『ようやく……会えた……』

 

「ペロロ様……」

 

 ファウストは目に涙を浮かべながらペロロジラへと歩み寄る。

 

『近付いたらダメ……君が巻き込まれて傷付く事を、僕は望まない』

 

「でも……」

 

『此処は任せて……君は……皆とそこで見守っててほしい』

 

 そう言って、ペロロは『終極』のアバンギャルドへとその巨体を震わせながら立ち塞がった。

 

『みんなは……僕が守るっ』

 

 エリドゥ要塞都市に、三体の巨人が相対す。

 

 『終極』のアバンギャルド。自我を奪われた巨大パンちゃん。そしてペロロジラ。

 

『無駄な事を……』

 

『無駄なんかじゃないっ』

 

『キキキ……貴様らを取り込み、今度こそ私が、キヴォトスを……』

 

 それぞれの思惑と共に、エリドゥ要塞都市は戦場と化す。

 

 その戦いは、まるで神話の戦を再現するが如く、エリドゥ要塞都市を舞台にぶつかり合った。




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