風紀の狂犬   作:モノクロさん

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狂犬と立ち位置 風紀委員会視点

「ターゲットに被弾……い、いいえ!! 着弾寸前で何者かがターゲットの盾になりました!!」

 

「なんだと、どういう事だ? おい、そいつの身元は分かるか!!」

 

 擲弾兵の報告に、イオリは眉をひそめながら所属不明の生徒の身元確認を急がせる。

 

 黒煙の所為で視界は悪いが、風紀委員会からも確認は出来る。イオリはその方角を凝視しながら、歩兵を突入させるべきかと思案した。

 

 だが、そんなイオリの思考を遮る様に、風紀委員が声を荒げながら報告を上げてきた。

 

「ほ、報告します!! 便利屋68を庇った生徒は小鳥ちゃんです!! 小鳥ちゃんが便利屋68を庇いました!!」

 

「なっ!! え? はぁ!!」

 

 その報告にイオリは言葉を失った。小鳥とは数日前に何処かへ出かけるとだけ告げられ、そのまま連絡がつかない状況だった。

 

 此処に来る前に、他の風紀委員の子達から、自分探しの旅に出かけているとだけ報告を受けていたので、いつもの放浪ぶらり旅と思っていたのだが、まさかアビドスに来ていようとは……。

 

 それに、小鳥が便利屋68を庇っただと?

 

 一体何故……いや、それは後で直接訊けばいい。今は混乱している他の風紀委員の子達を落ち着けるのが先だ。

 

「ど、どうしよう。小鳥ちゃん怒ってる?」

 

「だ、大丈夫。見た感じ怒ってないけど……誰が小鳥ちゃんに被弾させた!!」

 

「そこにいる○○ちゃんです!!」

 

「ちょっ!! おまっ……ふざけ……っ!? ふざけんなっ!!」

 

「落ち着けお前達!! 小鳥ちゃんは身内に危害を加える事はない。それはお前達が一番分かっている筈だ」

 

 小鳥が自分達に危害を加える事は絶対にない。分かってはいるが、現場での彼女の活躍(悪い意味で)を知る風紀委員は、その銃口や銃床が向けられた時の事を想像し、身震いしている。

 

 小鳥は身内には手を上げないが、敵には一切の容赦をしないというのは風紀委員会全員の共通認識だ。

 

 だから今回の砲撃に関しても、彼女なら許容するだろう。

 

 無論、この後、風紀委員会に加担して、便利屋68の逮捕を手伝うかと問われれば、非番の日の彼女は仕事をしない事でも有名な為、参加する事はないだろう。

 

 動揺する擲弾兵を何とか宥め、改めて便利屋68を逮捕すべく、歩兵を進ませようと試みるも、今度はアビドスの生徒達が此方を警戒してか、身構えている。

 

 いつものイオリなら、公務執行妨害として敵対する事を厭わないのだが、そう遠くない距離には小鳥がいる。向こうからは撃ってこないと分かってはいるが、アビドスや便利屋68を狙った銃弾が、流れ弾として、再び彼女に被弾する事があれば、流石に怒る可能性がある。

 

 それを踏まえて、小鳥にそこから離れるよう声をかけようとしたその時、小鳥の口から、思いもよらぬ言葉が発せられた。

 

「失礼、貴女方はアビドスの対策委員会で、其方にいるスーツ姿の貴方はシャーレの先生でありますね?」

 

 それは、アビドス陣営に向かって発せられた言葉。

 

 だが、その言葉に含まれる『シャーレの先生』という言葉にイオリと共に部隊を率いてきたチナツが反応した。

 

「シャーレの先生……今、シャーレの先生と言いましたか?」

 

「シャーレ……何のことだ?」

 

「連邦生徒会長が設立した連邦捜査部の担当顧問です。以前報告書に上げた筈ですが」

 

 チナツの言葉にイオリは記憶の片隅を探る。そういえば、そんな報告書が上がっていたようなという認識だったが、シャーレの先生が何故此処にいるのだという疑問が出てくる。

 

「それで、そのシャーレの先生とやらが何故此処にいるんだ?」

 

「それは私にもわかりません。ただ、シャーレの先生が此処にいて、そしてその場所に小鳥ちゃんがいるという事は、もしかしたら小鳥ちゃんは、先生に会いに此処にいたのかもしれません」

 

「は? なんで小鳥ちゃんがシャーレの先生とやらに会う必要があるんだ?」

 

「それも分かりません。ただ、偶然にしてはあまりにも出来すぎています。イオリ、少しだけ様子を見ましょう。下手に兵を動かしては問題が大きくなる可能性があります」

 

 チナツの判断に、イオリも不本意ながら了承し、前に出そうとした歩兵に待機命令を下す。

 

 その間も、小鳥はシャーレの先生に話しかけているようで、その声は遠く離れているイオリ達の所にも聞こえていた。

 

「先ずは謝罪させてください。この度の柴関ラーメン爆破は私個人の落ち度にあります。本当に申し訳ありませんでした」

 

「申し遅れました。私は風紀委員会に所属する不死川 小鳥と申します。ですが、今回の柴関ラーメン爆破と風紀委員会との関係は無く、あくまでも私個人の問題である事を、どうかご理解いただきたい」

 

 普段と異なり、礼儀正しい小鳥の態度に、イオリ含む、風紀委員の皆が目を丸くする。

 

 シャーレの先生とは、あの狂犬が襟を正して接する程の存在なのか。そう思わざるを得ない中、小鳥の視線がイオリ達へと向けられた。

 

「そして、先程の砲撃は私が所属する風紀委員会によるものです。此方に関しては、私の口から発言する事が出来ない状態にあります。故に、この件に関しては、彼女達を指揮する立場の者に答えてもらう義務があると思われます」

 

 その言葉に、背筋が凍りつく。怒っている。少なくとも、自分自身にも非があると認めた上で、今回の風紀委員会の行動に対して、思う所がある。そう言わんばかりの発言に、イオリは今回のアビドス遠征の指揮をとっていた人物の名が脳裏に浮かんだ。

 

「そうでありましょう? アコ行政官殿」




・報告
現在のストーリーパートが終わり次第、日常パートに戻ります。
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