風紀の狂犬   作:モノクロさん

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レン・テラーの最期

 世界が崩壊していく。

 

 私の努力……あぁ、そうだな。無駄な努力と分かってはいたんだ。

 

 継ぎ接ぎだらけの世界。改竄に改竄を重ね、あらゆる可能性を手当たり次第に試した結果、歪み切ったこの世界。

 

 キヴォトス解放戦線とアバンギャルドの軍勢の戦いは、キヴォトス解放戦線の勝利に終わった。

 

 巨大なアバンギャルド……『終極』のアバンギャルドと言っていたが、最終的には巨大なぺろろとパンちゃん……なる化物による攻撃でアバンギャルドの巨体は崩壊し、そしてキヴォトス解放戦線の勝利で戦いは終わった。

 

 ……本当にあの巨大なぺろろは何だったんだろう。

 

 それにあのパンちゃんなる化物も。

 

 小鳥は幼少期に化物と言われていたらしいが、あれの方がよっぽど化物だろうに……。

 

 話が逸れてしまった。

 

 キヴォトス解放戦線の勝利に終わり、アバンギャルドに連れ去られた生徒や市民は無事に救助され、事の発端である調月 リオも無事に保護された。

 

 ホシノさんも……アバンギャルドに連れ去られたユメ先輩を助ける事が出来、安堵の表情を浮かべていた。

 

 でも、これだけは言わせてほしい。流石にあの場での発言……『ここに居たんですね。ユメ先輩』は貴女にとってはトラウマ級のセリフなんだよな。ホシノさんがシャーレに残ってくれていたら、別の未来もあり得たのかな?

 

 その件は今更だし、きっと上手くいかなかったんだろうけど。

 

 私は道を踏み外したんだ。きっとその段階で、私の負けは確定していたんだ。

 

 それでも、無理に無理を重ねて、諦めたくなくて、抵抗して、抗って……その結果がこれだ。

 

 本当にどうしようもない。どうしようもないと切り捨てた小鳥以上にどうしようもない。

 

「でも、私はこの選択肢を後悔していないぞ。それだけの覚悟はあったんだ。でなけりゃ、あんな事……」

 

 ……いや、やめよう。無粋だ。本当に無粋すぎる。

 

 折角与えられた最後の時間だ。1分1秒無駄にしたくない。

 

 私はまっすぐに見慣れた道を歩き続ける。その道を進み、私は住み慣れた民家へと辿り着くと、そのドアを開いて中へと入った。

 

「ただいま、姉ちゃん」

 

「あら、お帰りレンちゃん」

 

 声が聞こえる。暖かい声だ。何時だってこの声に導かれてきた。私を見守ってきてくれた大切な人。

 

「全然連絡くれないから心配したんだよ。黒服さんからレンちゃんの事を聞いていたけど、たまにはちゃんと連絡してくれないと、心配なんだから」

 

「ごめんなさい、姉ちゃん」

 

「今度から気を付けるんだよ? でも、元気そう……じゃなさそうだけど、こうして帰ってきてくれて嬉しいな。お腹すいてない? 何か作ろうか?」

 

「大丈夫だよ姉ちゃん。それより、ちょっとだけ甘えていい?」

 

 本当はその資格はない。

 

 自分の幸福の為に他人を蹴落とした自分に、そんな資格はないというのに。

 

―安心しろ。小鳥はお前の事を許してるぞ。いや、そもそも今回の件でお前の事を責めていない。だから、最後くらいは私のやりたい事をしな―

 

 罪悪感はある。やった事に後悔はないが、罪悪感はあるんだ。

 

 それでも、小鳥は許してくれた。いや、そもそも責めてすらないというのは、かえって小鳥が壊れている事を証明しているようなものだというのに。

 

 そんな私の心情を露知らず、姉ちゃんはほんわかとした笑みを浮かべて両手を広げてくれる。

 

「うん。いいよ」

 

 そう言って姉ちゃんは私を優しく抱きしめてくれる。

 

 あぁ、暖かいな。この温もりに……ずっと包まれていたかったな。

 

 私は暫く姉ちゃんに抱きしめられる。そして……。

 

「ありがとう、姉ちゃん」

 

 その言葉を最後に、世界が崩れ落ちていく。

 

 姉ちゃんにはこの瞬間を見てほしくない。

 

 きっとまた私を助けようとするにきまっている。

 

 だからこそ、この瞬間を認識する事なく、姉ちゃんと共に、私は消える。

 

 本当に自分勝手で我儘な選択だ。

 

 世界は何時だって選択の連続だ。

 

 その選択次第で天国を見る事もあれば地獄を見る事もある。

 

 それでも、こうして最後に幸福の時を与えられた自分は……。

 

「幸せ者だったよ……本当に度し難い私の筈なのに……」

 

 そして、世界は崩壊し……1つの物語は幕を閉じるのであった。




・ベアトリーチェ
終わったんですね。全てが……

アバンギャルドの残骸を踏み締め、ベアトリーチェは姿なき夫の黒服を思う。

分かってはいた。きっとこれは蜉蝣の如く儚い世界の奇跡の一端。

彼はきっと、私の知る彼ではないのだと。

長くもないが、それでも短くもない付き合いだ。それくらい分かって当然である。

それでも、私はこの道を選択した。その事に後悔はない。

彼に尽くす事が出来た事を胸に刻み、私はアリウスの子達に暇を渡した。

でも、あの子たちは私についてくる選択肢を選んだ。

きっとこの選択も、本来存在しないものだったのかもしれない。

最期の最期まで私に付き従う……いいえ、一緒にいる選択を示してくれたこの子達には本当に心から感謝の意を示そう。一人だけ、此処にはいない子もいるけど、それも仕方のない事。あの子が選んだ選択なのだから……。


・槌永 ヒヨリ
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!?!

みんな何処ですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!




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