風紀の狂犬   作:モノクロさん

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風紀の狂犬

 世界は再び動きだす。いつもと変わらぬ日常が幕を開ける。

 

 多少のイレギュラーはあれど、それでも変わらぬ日々が続いていく。

 

「……良いんですか? レンちゃんも偶には家に帰ってもいいんですよ」

 

「よけぇなお世話だ。それに、私は決めてんだよ」

 

「なにをですか?」

 

「家に帰るのは、全部が無理だって匙を投げた時だ。それまでは、絶対に帰らねぇ。これはな、願掛けでもあるんだよ」

 

 小鳥だって同じだろと、そう問いかければ、小鳥はそうですねと頷いた。

 

「それで、小鳥はやるべきことは終わっただろ? ヒナさんの神秘は落ち着いた。暫くは安泰だ。だから、もう良いだろう?」

 

「残念ながら、まだまだやるべき事が残ってますので」

 

「やるべき事?」

 

「色彩の問題が残っています。黒服さんとはその件で改めて契約を結びましたので」

 

 そう、レンを苦しめる元凶となった色彩。レン・テラーに過った道を歩ませた存在には、それ相応のケジメをつけなければならない。

 

 それはあくまでも、小鳥個人の意思であり、その事をこの場で言うつもりはなかった為、大まかな部分は端折ってレンに伝えた。

 

「……あぁ~その件なぁ~」

 

 自身も関与した案件でもあり、レンは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。そんなレンの表情には気も留めず、小鳥は言葉を紡ぎ続ける。

 

「本当に大変なのはこれからなんですよ? 私はまだまだ未熟で、しかも今は殆ど力を使えない。だから、キヴォトスを巡り、様々な経験を積んで力をつけないといけないんです。そして、それは私一人では不可能で……」

 

 そこまで言って、小鳥はレンへと顔を向ける。

 

「これからも頼りにしてますよ。レンちゃん」

 

 その言葉に、レンは小さくため息を漏らす。だが、その表情は決して嫌そうではなく、寧ろ……。

 

「ったく、しょうがねぇなぁ」

 

 満更でもなさそうにレンはそう呟くのであった。

 

「じゃ、協力してやっから、お礼に何かうめぇもん食べに行こうぜぇ。折角黒服から軍資金をがっぽり貰ったんだからなぁ」

 

「ですね。私の神秘が籠った銃弾一発で狂喜乱舞して大盤振る舞いだったからですねぇ」

 

「意外と黒服も俗っぽいよなぁ」

 

「人間ですからね。ちょっと見た目が怪しいですが」

 

 そんな軽口を叩き合いながら、2人は街へと繰り出していく。

 

「さて、何を食べに行きましょうか」

 

「おぉ、今日はあめぇもんを食いたい気分だ。パフェなんてどうよ?」

 

「いいですねぇ。ゲヘナで美味しいスイーツを知ってますのでそこに行きましょうか」

 

「へぇ、そりゃ楽しみだ」

 

 そんな他愛のない会話を繰り広げながら歩いていく2人のその背中はとても楽しそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、小鳥ちゃんらしき人物に壊滅させられた上にカスミが連れ去られたって? 本気で言ってるのか?」

 

 ゲヘナ自治区で、何時ものように温泉を発掘しようとしていた温泉開発部のメンバーが何者かの襲撃を受け、壊滅した上にカスミを連れ去られたと風紀委員会のイオリに嘆いていた。

 

 辺りを見渡せば、確かに小鳥が暴れまわった時と同じ惨状が広がっており、そしてカスミの姿が影も形もない。

 

 携帯で連絡を取ろうにも、電源が入っていない様子。

 

 他にも様々な形で連絡を取ろうにも、その悉くが失敗に終わり、温泉開発部のメンバーは途方に暮れていた。

 

「……まぁいい。取り敢えずお前たちを拘束した後、いなくなったカスミの捜索も継続する」

 

 そう言って、イオリは温泉開発部の部員達を拘束する。皆が皆、大人しくお縄についている事から、相当怖い目にあったのだろう。

 

 それにしても、小鳥がいなくなってから大分時間が経つ。そろそろ連絡の1つくらい入れても良いだろうに。そんな事を考えていると……。

 

「そっちは終わった?」

 

 イオリと同じく、温泉開発部の取り締まりに来ていたヒナがイオリに声をかける。

 

「あぁ、全員大人しくお縄についたぞ」

 

「そう。それじゃ帰りましょう」

 

「……なぁ、ヒナ委員長。小鳥ちゃんの奴……」

 

 イオリが何かを言いかけると、それを遮ってヒナが言葉を発する。

 

「……小鳥は大丈夫よ」

 

「え?」

 

「あの子が帰ってくる時は、やるべき事を終わらせた時。だから、今はまだ、やるべき事が終わってないだけ。だから、大丈夫」

 

「……そうか、そうだな。ヒナ委員長がそう言うなら、きっと……そうなんだろうな」

 

「えぇ、帰りましょう。あの子が帰ってきた時に、笑顔で迎えてあげられるように」

 

 それでも、偶には帰ってきて、元気な姿を見たいという気持ちはある。しかし、その気持ちを胸に、ヒナとイオリは帰路につくのであった。

 

 キヴォトスは変わらずに廻る。今日も今日とて、この学園都市は様々な思惑の中で廻っている。

 

 小鳥の物語は終わらない。やるべき事を為し、そしてそれが解決するまでは、きっとこの物語に終わりはないのだろう。

 

 小鳥は前へ進み続ける。己の役目を果たす為に。

 

 多くの失敗と多くの後悔。

 

 何も為せず、何も守れず、それでも進む事を諦めない。

 

 その先に奇跡の未来がある事を信じて、小鳥は今日も歩み続ける。

 

 その道は決して楽なものではない。

 

 しかし、それでも……彼女は進み続けるのだ。

 

 その道の先にある、彼女にとっての幸福の為に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて、レンちゃんは何が食べたいですか?」

 

「おぉ……その前に、そいつはどうすんだ?」

 

「え、連れ帰って大事にしますよ」

 

「おぉ……………………もしもしヴァルキューレ?」

 

「やめてくださいレンちゃん。まるで私が犯罪者みたいじゃないですか」

 

「おぉ、犯罪者だな。捕まりたくなかったらそのち●かわみてぇな顔した人を元の場所に返してこいな」

 

「ヒィ…………ヒィ…………タスケ…………タスケ……………………テ……………」

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