風紀の狂犬   作:モノクロさん

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狂犬と立ち位置 アコ視点

「そうでありましょう? アコ行政官殿」

 

 小鳥の言葉に、アコは内心、舌打ちをした。

 

 余計な事を。そもそも、何故彼女が此処にいるのだ?

 

 情報では、非番で数日間消息を絶っているとは聞いていた―正確には、自分探しの旅と風紀委員が言っていた―が、まさかアビドスにいようとは思いもよらなかった。

 

 だが、彼女の発言から鑑みるに、目的は自分と同じ……いや、少し似通っているというのが正しいか。

 

 小鳥の目的は先生に会う事。そして先生という人物の人となりを、自身の目で見て評価する事。

 

 そしてアコの場合、トリニティの生徒会であるティーパーティーが、シャーレの先生に関する報告書を入手している事に危機感を抱いた所から始まった。

 

 現在、ゲヘナとトリニティはエデン条約を前に緊張状態にある。そこにシャーレの先生という不確定要素が関われば、どのような影響を及ぼすか分からない。

 

 それなら、エデン条約が締結するまでの間、風紀委員会の庇護下に置くという名目で拘束もやむなしと判断し、先生の情報を集めていた。

 

 その結果、現在シャーレの先生は、アビドス自治区に出入りしている情報が入り、更に便利屋68が件のアビドスに関わっている事が分かった。

 

 この状況を利用しない手はない。そうして、今回の作戦を立てたのだ。

 

 校則違反者の逮捕は建前。そして、アビドスの自治区外で問題を起こす事でアビドスの生徒とシャーレの先生を誘き寄せ、あわよくばどさくさに紛れて先生の身柄を抑える。

 

 その為に必要な戦力を整え、アビドス校から程よく近い位置にいた便利屋68が自治区外で騒動を起こした事をきっかけに行動に移ったのだが……。

 

(これは流石に想定外ですね。元々この作戦には、彼女も同行してもらう予定でしたが、突然いなくなった上に、彼女も先生に接触しようとしていたなんて……)

 

 アコにとって、小鳥は、風紀委員会における校則違反者を鎮圧するという名の暴力装置であり、それ以外の事を求めてはいなかった。

 

 少なくとも、彼女自身も、自分の事をそういうものだと認識している節があり、その点においてはイオリ以上に使えると評価していた。

 

 だが、今の彼女は、アコにとって、目的の邪魔者以外の何者でもない。

 

 実力は折り紙付き。最悪、戦力として用意した風紀委員の四割は軽く削りきるだろう。

 

 その状況でアビドスや便利屋とも一戦交えるとなると、戦力が心許なくなる。

 

 ヒナ委員長には内密に自身の権限以上の戦力を動かした事もあり、この作戦に失敗した上に、独断で部隊を動かした事が公になれば、叱責は免れないだろう。

 

 その上、名指しで呼ばれた以上、他の者に代役を任せるわけにはいかない。アコは小さくため息を吐くと、彼女の言葉に応じるべく、回線を開いた。

 

「小鳥の言う通りですね。此処から先は、私の口から答えさせていただきます」

 

 アコの声に、風紀委員の面々が反応する。一々反応しなくていいのにと思いながらも、小鳥と対策委員会。そしてシャーレの先生に向かって、今回の一件のあらましを説明した。

 

「先ずは、初めまして。アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します。今の状況について少し説明させていただきたいと思いますが、宜しいでしょうか?」

 

 自分達の目的は、同じ学園の校則違反者である便利屋68の逮捕である事。

 

 その為に、自治区の外とはいえ、騒動を起こした事を謝罪。しかし、まだ違法行為とは言い切れない状況の為、今回の一件はやむなしと理解してほしい事。

 

 そしてその上で、風紀委員会の活動に、対策委員会に協力を要請した。

 

 嘘は言っていない。ただ、本来の目的を話していないだけである。

 

 何となく、小鳥は本当の目的を直観的に理解しているだろうし、便利屋68のカヨコ辺りなら、本当の目的を察していてもおかしくはない。

 

 ただ、そんな事はどうでもいい。仮に目的が分かったとしても、その件で一悶着起きるのであれば、それを理由に―正確には、便利屋68を逮捕する名目で来た風紀委員の邪魔をしたとして―アビドスと敵対するのも止む無し。いや、それこそが本来目的とするシャーレの先生確保の名目も立つというものである。

 

 対策委員会の返答は、分かりやすく言えば、交渉決裂に終わった。

 

 これで心置きなく武力を行使する事が出来る。

 

 元々はティーパーティーが、シャーレの先生との関りを仄めかした事から始まった今回の作戦。

 

 思わず、件の生徒会の名称を口にしたのは失言だったが、最早関係あるまい。

 

 後は、イオリとチナツに部隊を動かせ、敵対するアビドスと便利屋68の両陣営を制圧する。

 

 その筈だったのだが、ここで携帯の着信音が鳴り響き、ディスプレイに映った人物の名に、アコは目を疑った。

 

「……え? ひ、ヒナ委員長!!」

 

 ディスプレイに映った人物の名は、彼女が所属する風紀委員会の委員長、空崎 ヒナの名だったのだから。




アンケートが思いの外、票が入っていて凄く感謝です。
ストーリーパートが終わり次第、執筆にとりかかりたいと思います。

評価や感想頂き、本当にありがとうございます。凄く励みになりますし、もっと頑張らねばとなりますので、お気軽に評価や感想など、書いて頂けると幸いです。それでは失礼します。
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