風紀の狂犬   作:モノクロさん

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今回も少し短めです。


狂犬と試験 前編

『この借りはいずれ何処かで』

 

 先生と交わした約束だ。

 

 この約束が、まさか思っていた以上に早く果たされる事になろうとは、小鳥はまだ、知る由もなかった。

 

 

 

 

 

深夜

 ナギサの妨害工作により試験会場と時間を急遽変更された補習授業部は、変更された新着情報を見て、頭を抱えていた。

 

 場所はゲヘナ自治区。そして試験開始時間が深夜の3時。あまりにも急な変更な上、試験会場も、今から出なければ間に合わない状況だ。

 

 しかし、ゲヘナ自治区は他の自治区と比べて無法地帯と言われており、更に治安を守る風紀委員会も、自治区内全てに対して対処出来ているとは言い難い。

 

 行けば確実にトラブルに会う事は間違いない。その状況で、時間通りに会場に着けるかどうかもあやしい中、補習授業部の面々は、どうするか話し合っていた。

 

 その様子を見守る先生も、何か手はないかと思考を巡らせている。

 

 そんな中、先生の携帯から生徒からのモモトークが届いた。

 

 携帯を開き、内容を確認する。

 

 すると……。

 

『ハロハロ〜せんせ〜みてみて〜』

 

『カスミちゃん捕まえた〜』

 

 というメッセージの後に、絶望の表情と共に涙と鼻水、そして大量の汗で顔がグチャグチャのカスミを愛おしそうに抱き締める小鳥(全身血塗れ)の写真が送られてきた。

 

 それを見た先生は、慌ててメッセージを送り、補習授業部のメンバーに提案した。

 

「みんな、私から提案があるんだけど……」

 

 

 

 

 護送車の前で、小鳥は涙目になりながら、カスミに別れの言葉を告げていた。

 

「ごめんねカスミちゃん。先程、私は用事が出来たのです。だから、お家に連れて帰れなくなりました」

 

「カ、カナシー……」

 

「そうです、悲しいであります。カスミちゃんも悲しいし、寂しいでありましょう?」

 

「サミシー」

 

「申し訳ありません。その気持ちは私も同じでありますが、それでも、やらなければならぬ事があるのです」

 

「ガ、ガンバッテー」

 

「はい、それでは、また会いましょう。次会う時は、必ずや連れて帰りますね」

 

 そう言って、優しく頭を撫でると、小鳥はマスクを被り直し、その場を他の風紀委員に任せて、護送車に乗り込み、その場を後にした。

 

 それを見届けたカスミは、護送車が視界から見えなくなるのを見届けた後、残された風紀委員に向かって両手をかざした。

 

「ワッパ……かけてください」

 

 この時のカスミは、とても晴々とした表情を浮かべていた。

 

 風紀委員の面々も、小鳥との間で何かあったのだと理解しながら、それを言及せずに背中を叩く者もいれば、その姿が居た堪れなくなり、抱きしめる者も出る始末。そしてカスミが落ち着いたタイミングを見計らい、別の護送車へと案内した。

 

 この一件は、後に一部の風紀委員間で語り継がれる事になるのだが……それはまた別のお話。

 

 

 

 

 指定された合流ポイントに向けて、小鳥を乗せた護送車は走る。

 

 久方振りに温泉開発部が暴れているとの報告を受け、運良くカスミを捕まえてテンションが上がっていた小鳥は、その記念にと先生にモモトークでコメントを送っていた。

 

 すると、先生から連絡が入り、今からゲヘナ自治区に用がある事と、その道中の案内を頼めるかという内容のメッセージが送られてきたのだ。

 

 こんな時間にゲヘナに用事とは……。

 

 そう思いながらも、念の為にヒナに報告し、可能な限り協力するようにとの指示を受けていた小鳥は、目的地に到着するまでの間、何が起こったのか推測する。

 

 先生からのメッセージでは『協力して欲しい』という内容だけが送られてきた。細かな事は書かれていない。

 

(出来る限り、文章として残さない為の配慮……それなら、補習授業部の件か?)

 

 この時期で先生から協力を要請されるのであれば、それ以外に考えられない。

 

 しかし、補習授業部とゲヘナ自治区がどう繋がるのか分からない小鳥は、想像の範囲を補習授業部から範囲を広げて仮説を立てる。

 

(補習授業部……ティーパーティー……いや、ナギサさんか? ナギサさん……補習授業部……からの『何か』)

 

 もしや先生、ナギサと揉めたか?

 

 揉めたというより意見が対立したと言い直した方が良いかもしれない。

 

 意見が対立した結果、何故かゲヘナ自治区に用事ができた。その辺りだろうか。

 

 先生も悩みが尽きないものだと、苦笑を浮かべながら、目的地近くまで差し掛かった所、ゲヘナの自治区ではよくある、トラブルの気配を感じた。

 

 まさか先生か?

 

 そう思い、車から降りた小鳥は、風紀委員の子達にその場で待機するよう指示。音のする方角へと足を進めると、そこにはゲヘナ自治区に似つかわしくない、制服を着た生徒と先生の姿を確認した。

 

 そして、先生たちに絡む、不良生徒2人の姿も……。

 

 小鳥は、瞬時に不良生徒に近付くと、有無を言わさず、1人の不良の頭を鷲掴みし、このまま地面へと叩きつける。

 

 顔半分が埋まる程度だ、少しすれば目が覚めるだろう。

 

 残ったもう1人も、何が起こったのか理解するよりも早く襟首を掴んで地面に叩きつけ、そのまま開いた口へと銃口を突き付けた。

 

 そして、先生やトリニティに所属する制服を着た生徒たちにも聞こえる声で、不良生徒に話しかけた。

 

「ハロハロ〜こんばんは。良い夜ですね。初めまして。私は風紀委員会所属の不死川 小鳥です。お気軽に、小鳥ちゃんと呼んで頂けると幸いです」




おまけ
小鳥「カスミちゃんは小鳥ちゃんが好き」

カスミ「キライ」

小鳥「違うでありますよ。カスミちゃんは小鳥ちゃんが好き」

カスミ「コトリハカスミノキョウフノタイショウ」

小鳥「あっはっは、大体あってる」

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