風紀の狂犬   作:モノクロさん

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内容短めとなっております。


風紀の狂犬 孤立無援の対策委員会編
Prologue


 明け方、少し大きめのキャリーケースを引きずりながら、小鳥はゲヘナの自治区を歩いていた。

 

 その足取りは迷いがなく、目的地に向かって真っ直ぐに進んでいる。

 

 暫く歩くと、廃墟が立ち並ぶ区画へと辿り着き、小鳥はその内の1つに足を踏み入れていく。

 

 そして、ある程度進んだところで立ち止まり、辺りを見渡した。

 

 此処はかつて、黒服と初めて出会った場所。約束したわけではないが、彼と合流する事が出来るとしたら此処しかない。そう考えていると、不意に小鳥の耳が微かな足音を拾った。それは次第に大きくなり、やがて背後から声が掛かった。

 

「お久しぶりですね。不死川 小鳥さん」

 

「久しぶりですね、黒服さん。此処に来れば迎えに来てくれると思っていましたよ」

 

 小鳥の言葉に、黒服はふっと笑みを浮かべた。

 

「クックック。当然です。私と貴女は対等な関係。無碍にする事など出来ませんよ」

 

 そう言って、黒服は手を差し出してきた。

 

「改めまして、ようこそ小鳥さん。我々ゲマトリアは、貴女を歓迎しましょう」

 

 差し出された手に、小鳥は迷う事なくその手を握り返す。

 

「私は貴女の神秘を研究する為。そして貴女は、己の神秘を調伏……いいえ。貴女の大事な存在を守る為に。互いの目的の為に、この手を取り合うと誓った仲。この関係が、続いていく事を願います」

 

 それは本心からくる言葉だったのだろう。黒服は小鳥からキャリーケースを受け取ろうとしたが、小鳥はそれをやんわりと断わった。

 

「荷物くらい自分で運びます。それよりも、早速で悪いのですが、私に住居をご提供して頂いても?」

 

「そうですね。私が所有する物件に空き部屋があります。そこを貴女の住居としましょう。ちょうど、貴女に会わせたい方もいますので」

 

「私と同じ……いや、私とは違うベクトルの神秘を持つ協力者の事ですね」

 

 小鳥の言葉に、黒服は頷くと笑みを浮かべた。

 

「えぇ、貴女とは別の意味合いで大変興味深い神秘を秘めた子ですよ。きっと、貴女も気に入る事でしょう」

 

 詳細は会ってからのお楽しみと、黒服は歩き出す。その後に続くように小鳥もまた歩き出した。

 

 これから始まるは切り捨てられた者達の物語。

 

 それは、有り得たかもしれない歴史を紡ぐ幾多の可能性。

 

 決して交わる事のない、終わりを迎えた物語を、新たなる可能性で塗り替えていく。

 

 そんな物語の始まりである。

 

 

 

 黒服の所有する居住区にて、1人の少女が目を覚ました。

 

 気怠げに体を起こした少女は、大きな欠伸をしながらベッドから降りると、パジャマを脱ぎ捨て、クローゼットに掛けられていた制服に腕を通すと、そのままリビングへと足を運ぶ。

 

 恐らく今日が予定の日だ。

 

 彼女が来る。不死川 小鳥が、自分の元へとやって来る。

 

 彼女の事はよく知っている。彼女の生い立ちも、彼女がどのような人生を歩んできたのかも。だからこそ……。

 

「安心しろぉ〜。ちゃ〜んと、私に出来る事はするからさぁ〜」

 

 そう言って、少女は笑みを浮かべた。その言葉は誰に向けられたものなのか、それを知るものは誰もいない。




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