風紀の狂犬   作:モノクロさん

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初対面

 小鳥に用意された住居は高級マンションの最上階だった。

 

 家賃を聞いたら卒倒しそうな金額である。少なくとも学生には不釣り合いな物件だ。

 

「クックック、ご安心下さい。此処は元々、カイザーコーポレーションが保有する物件で、彼等と協力関係にあった際に受け取ったもの。ですので、家賃はかかりませんよ」

 

 小鳥の思考を先読みしたように告げる黒服に、小鳥は苦笑を返す。

 

「それで、この一室以外から人の気配がないと言うわけですか」

 

「えぇ、他の者がいたら貴女も気を遣うでしょう? ですので、この部屋以外は全て空き部屋としています」

 

 どうやら黒服は小鳥の事を考えてくれているらしい。それでも、マンション一つを自分と協力者の2人で占有するのは少し気が引ける。

 

 そんな事を考えていると、黒服は笑みを浮かべた。そしてそのまま言葉を続ける。

 

「私は契約に重きをおくタイプでしてね。私達と対等である事を条件にした貴女には、それ相応の対価をお支払したいと考えています」

 

 そう言って、黒服は1枚のカードを手渡す。それはカードキーのようだった。小鳥がそれを受け取ると、カードには1つの部屋番号だけが刻まれている。恐らく部屋の扉の鍵なのだろう。

 

「協力者にも、番号は違いますが同じものを渡しています。共同生活になるとはいえ、プライベートな時間は必要でしょう。そのカードは、貴女が自由に使って下さい」

 

 黒服の言葉に、小鳥はカードキーをポケットにしまう。

 

「……あ〜正直な話、ここまで至れり尽くせりとは思わなかったから尋ねるけど、コレに対する対価って、何を要求されるか聞いても?」

 

 黒服が小鳥を対等な協力者として見ている事は、このカードキーから察する事が出来た。しかし、それだけの対価を支払うとなると、それ相当のものを要求されるだろう。一体、何を要求されるのかと考えていると、黒服は笑みを浮かべたまま首を横に振った。

 

「クックック。どうやら貴女は、ご自身の価値を理解していないようだ。神秘を顕現させた。それが例え、どのような形であろうと、それを成した者はそういない。強いて言うなら、今の貴女は、今まで発見される事のなかった新しい元素みたいなもの。その価値は、到底計り知れるものではないとご理解ください」

 

 簡単に言えば、存在そのものが金の卵という事だろう。そこにいるだけで価値がある。それを手元におけるというだけで、十分すぎる対価だ。

 

 黒服はそう告げると、小鳥に背を向けた。その背中に向かって小鳥が声を掛ける。

 

「何処に行くんですか?」

 

「貴女を確保した事を他の者と情報として共有しようかと思いましてね」

 

「……流石に、ゲマトリアの集会には参加できそうにありませんね」

 

「申し訳ありません。流石に貴女を他のメンバーと引き合わせる事は出来ませんので」

 

「構いませんよ。私も、出来る事なら貴方以外のゲマトリアとは……特に、アリウス関連に関わったメンバーとは関係を持ちたくないので」

 

「ほぉ、それはまた、どういった理由でしょうか?」

 

「いや、単純に嫌いなだけですよ。勿論、エデン条約を台無しにした原因を作った他のメンバーも同様ですが」

 

 黒服の問いに小鳥がそう答えると、黒服は口元に笑みを浮かべた。

 

「小鳥さん。これは興味本位なのですが、貴女は今のゲマトリアを構成するメンバーが何人いると考えていますか?」

 

「え? 最低でも3人以上では?」

 

「その理由は?」

 

「1つはアリウス、1つは亡霊、そしてもう1つは兵器。貴方達が何を研究しているかは不明ですが、そこにジャンルが存在するなら、この3つは畑違いだ。だから最低でも3人以上、でも、10人もいない少数の構成員ではないのですか?」

 

 兵器に関しては、自分を再起不能にした爆弾と古聖堂を爆破したミサイルが同じジャンルになるか不明な為、一括りにしたが、それを踏まえた上でも、エデン条約に関わったゲマトリアは大まかに分けてこの3つとなる。

 

「クックック、素晴らしい洞察力ですね。分かりました。彼女には私の方からお伝えします。それでは、私はこれで」

 

 小鳥の返答に黒服は笑みを浮かべる。それは、正解だと告げているような表情だった。黒服がその場から立ち去ると、小鳥はポケットからカードキーを取り出す。そしてそれを、扉の近くにあるセンサーへとかざすと、ガチャリと鍵の開く音がした。

 

 そのまま扉を開き、部屋の中に入る。そこは2人で生活するには十分過ぎるほどの広さだった。リビングには大きなテレビが置かれており、テーブルやソファーも高級感溢れる作りになっている。

 

 生活に必要なものは全て取り揃えている。まさに至れり尽くせりだ。

 

 小鳥はリビングを後にして、寝室へと入ると、ベットの上で大の字になって眠っている少女を発見した。黒いロングヘアーに、スラリとした細い四肢。身長はヒナよりも小さく、あどけない寝顔をしているが、その容姿はとても整っているように見える。

 

 協力者とはこの子か?

 

 小鳥は少女を起こさないようにゆっくりと近付くと、少女の体を揺すった。すると、少女は眠たげに目を開き、そして目の前にいる小鳥を見て気怠げに起き上がる。そして、小鳥に向かって口を開いた。

 

「お〜なんだぁ……夜這いってやつかぁ〜? 勘弁してくれぇ、こちとら、うら若き乙女だぞぉ〜」

 

 そう言って欠伸をしながら目を擦る少女だったが、暫くして小鳥の姿を再確認するなり、首を傾げながら口を開いた。

 

「あ〜成程なぁ。すまねぇなぁ。ちょっと前まで起きてたんだけどよぉ〜眠くなったから二度寝してたわ」

 

 どうやら少女は寝起きで寝ぼけているらしい。

 

「私は龍巳 レンってんだ。レンちゃんとでも呼んでくれぇ。そぉそぉ、私の名前と神秘は関係ねぇからそこんとこも宜しくなぁ〜」




おまけ
今回、名前が明かされた龍巳 レンちゃんは本当に名前と神秘は関係ありません。元々は彼女の神秘と関連のある名前になる予定でしたが、そうなると完全にFG⚫︎になってしまうので

いつも閲覧頂き、ありがとうございます。
感想・評価・ここすきなど、励みになっています。

昨日のブルアカ生放送は本当にヤバすぎました。今回、天井いっぱいまで回す予定ですので、皆さんも無事にお迎え出来る事を祈っております。それでは、失礼します。
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