風紀の狂犬   作:モノクロさん

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久方の実戦

 小鳥は悠々とマスクを被り、バリケードを乗り越えたヘルメット団と対峙する。

 

「なんだてめぇ!!」

 

 先頭に立つヘルメット団の構成員がそう言うと、小鳥は右手の人差し指をクイっと動かしながら答えた。

 

「唯のしがない傭兵志願者ですよ。本校に用事があるようですが、アポイントは取っていますか?」

 

「あぁん!! てめぇ、ふざけてんのか!!」

 

「いえいえ、私は至極真面目ですよ」

 

 小鳥がそう言うと同時に、ヘルメット団は一斉に銃を構えた。

 

「誰だか知らねぇが構うこたねぇ!! やっちまえ!!」

 

 構成員の1人がそう言うと同時に、小鳥に向かって銃を撃つ。それに対し、小鳥はその場から動かず、その一撃を敢えて受け入れた。ヘルメット団から放たれた弾丸が、小鳥の身体に直撃する。しかし、小鳥は微動だにしなかった。

 

「なっ!! ば……バケモンかよ!!」

 

「えぇ、昔よく言われてました」

 

「ひ、怯むな!! 撃て!!」

 

 リーダー格らしき人物の声に、他のヘルメット団も発砲を続ける。しかし、小鳥はその場から動かずに弾丸を受け止めた。

 

「ま、マジかよ……」

 

 ヘルメット団は全員驚愕の表情を浮かべている。その様子を見て、小鳥はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「さて、次はこちらから行きましょうか」

 

 そう言って、小鳥はリーダー格の少女目掛けて真っ直ぐに走り出す。

 

「ひっ!! く、来るなっ!!」

 

「もう遅い」

 

 小鳥はそう言うと同時に、リーダー格の少女に肉薄すると同時に、彼女のヘルメットを鷲掴みにすると、近くにあったバリケードの残骸目掛けて、彼女の頭を叩き付けた。

 

 ヘルメットが砕け散り、リーダー格の少女はその場に倒れ込む。

 

「安物のヘルメットでありますなぁ。もう少し頑丈な物を用意すべきでしたな」

 

 小鳥はそう言うと、他の構成員の誰を標的にすべきかと辺りを見回す。

 

 すると、リーダー格の少女が倒された事で動揺していた構成員達は、撃つ事を忘れてその場に立ち尽くす。

 

「ふむ……では、貴女から」

 

「ひっ!!」

 

 小鳥はそう言うと同時に、構成員の1人目掛けて跳躍する。そして、その勢いのまま愛銃を振り上げると、構成員の頭部目掛けて思い切り叩きつけた。

 

「次」

 

 小鳥はそう言うと同時に、近くにいたもう1人の構成員に肉薄すると、その腕を掴み、そのまま持ち上げる。そして、リーダー格の少女が倒れたバリケード目掛けて構成員を叩き付けた。

 

「これで3人」

 

「あ……あぁ……」

 

 残った構成員達は戦意を喪失し、その場に立ち尽くす。小鳥は首を傾げながら銃を構えた。

 

「もう終わりですか? ろくに補給も出来ない相手だと強気なくせに、いざ攻めてこられたらこのザマですか」

 

「ま、待てっ!! 待ってくれ!! 降参!! 降参だ!!」

 

 構成員達は銃を投げ捨てると両手を上げる。その様子を見て、小鳥は溜息を吐いた。

 

「持っている武器弾薬を全て置いていけ。それで手打ちとしましょう。ただし」

 

 小鳥はそう言うと、気を失ったリーダー格の少女の元まで近付き、足首を掴むと、そのまま引き摺りながら構成員達の元に戻った。

 

「コイツだけは置いていってもらいます」

 

「わ、分かった!! だから許してくれ!!」

 

 構成員達が慌てて逃げる中、小鳥はリーダー格の少女を引き摺って校舎へと戻った。

 

 

 

 

 

「お〜小鳥〜おかえり〜」

 

 教室に戻った小鳥に労いの言葉を送るレンに小鳥は笑みを浮かべる。

 

「ただいま戻りました。それで、2人の様子は?」

 

「お〜さっきまで怯えていたけどよ〜今は落ち着いてるぜ〜」

 

 マスクを外しながら一息つく小鳥に、レンは答える。そんな2人のやり取りを見て、獣耳の少女はおずおずと口を開いた。

 

「えっと……あんた、本当にあのヘルメット団を……?」

 

「えぇ、取り敢えず撤退させました。そして軽く脅しておきましたので次の襲撃までの時間は稼いだかと」

 

「……本当に?」

 

「はい。あ、一応ですが、武器と弾薬も回収しておきました。少しは足しになると良いのですが」

 

「あ、ありがとう。助かったわ」

 

 獣耳の少女はそう言うと、ペコリと頭を下げた。小鳥は首を横に振りながら答える。

 

「いえいえ、これくらいならお安い御用ですよ」

 

「あの……御礼と言っては何ですが、お菓子とジュースをどうぞ」

 

 メガネをかけた少女がそう言うと同時に、キャリーケースの中からレンが顔を出す。

 

「小鳥〜」

 

「はいはい、今出しますねぇ」

 

「暑いから持ってきてくれぇ〜」

 

「了解であります」

 

 レンの言葉に小鳥は頷くと、メガネをかけた少女からジュースとお菓子を受け取ると、それをレンに手渡した。

 

「お〜ありがとな〜」

 

「あぁ、いえ……あの……此方こそ本当にありがとうございました」

 

 メガネをかけた少女はそう言うと同時に深々と頭を下げる。小鳥は苦笑しながら口を開いた。

 

「いえいえ、私は仕事をしただけですから」

 

「それでも……です。本当に助かりました」

 

 メガネをかけた少女はそう言うと、獣耳の少女の方を見つめる。獣耳の少女はその視線を受けて、コホンと咳払いをすると口を開いた。

 

「その……黒見 セリカよ。セリカでいいわ」

 

「私は奥空 アヤネです」

 

「えっと……あはは、そう言えば、自己紹介がまだでしたね。私は小鳥と言います。この子はレン」

 

「お〜龍巳 レンってんだ〜よろしくな〜」

 

 レンはそう言うと、お菓子をポリポリと食べ始める。小鳥は敢えてフルネームで名乗る事はなかったが、レンは構わずにフルネームで名乗った。

 

 切り離された世界とはいえ、この世界にも不死川 小鳥はいるだろうし、同じく龍巳 レンも存在する筈。大丈夫なのだろうか?

 

 小鳥がそんな心配をしていると、獣耳の少女……セリカが口を開く。

 

「それで、聞きたい事があるんだけど……」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「その……なんでそいつを連れて来たの?」

 

 セリカの視線の先には気を失ったヘルメット団のリーダー格の少女。先の戦闘で、真っ先に無力化させた少女だ。

 

「あぁ、それはですね。ほら、きっとこの子達の他にも仲間がいると思いましてね。ちょっと協力して貰おうかと思いまして」

 

「協力?」

 

 セリカが首を傾げると、小鳥は笑顔で答える。

 

「はい。此方が誠心誠意お話をすれば、きっと教えてくれると思うのです。ですので、セリカちゃん達の先輩達が戻り次第、説得しようかと」

 

「……話してくれると思う?」

 

「えぇ、勿論。きっと話して頂けると思いますよ。こう見えて拷問……話し合いは得意なのです」

 

(今、拷問って言った)

 

(拷問って言いましたね)

 

(お〜ゲヘナってやっぱこえ〜)

 

 セリカとアヤネ、そしてレンは小鳥の言葉にドン引きする。そんな3人を見て、小鳥は慌てて言葉を続けた。

 

「あ、いえ……拷問と言っても、そんな酷い事はしませんから。ちょっと痛い思いをして頂くだけですよ」

 

「……いや、十分怖いわよ」

 

 セリカがそう言うと、アヤネも同意するように頷く。小鳥は困った表情を浮かべると口を開いた。

 

「と、兎に角……拷問は最終手段です。私とて、無意味に誰かを傷付けるなんてダメだと思っています。暴力をふるっていいのはルールを破る者と人の道を踏み外した者です。私はあくまで平和的に話し合いをしたいのですよ」

 

「あっ……はい」

 

 小鳥の言葉に、セリカは呆気に取られながら頷く。すると、メガネをかけた少女……アヤネが口を開いた。

 

「えっと……では、その子をどうするんですか?」

 

「どうしましょうかねぇ。取り敢えずは下手に抵抗されても勘弁ですので、四肢の骨を……」

 

「それじゃあ、両腕と足を縛るのでロープを持ってきますね。小鳥さんはレンさんとお菓子を食べていて下さい」

 

「え、あ、はい」

 

 ……そっか、此処はアビドスだからゲヘナ流の拷問はしないんだ。アヤネの言葉を受け、小鳥はそんな事を考えた。




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