風紀の狂犬   作:モノクロさん

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誤字報告ありがとうございます。
修正させて頂きました。


一方その頃、アビドスでは…

「ありがとねぇ小鳥ちゃん。私達の留守の間、可愛い後輩を守ってくれて。おじさん、助かっちゃった」

 

 自らをおじさんと称するアビドス高等学校の3年生、小鳥遊 ホシノは、カタカタヘルメット団の襲撃を防いでくれた小鳥に礼を言った。

 

 そんなホシノに、小鳥は首を傾げながらも口を開く。

 

「いえいえ、偶々成り行きでそうなっただけですから。それに、可愛い後輩ちゃんとのキャッキャウフフな触れ合いも出来ましたし」

 

「あはは……成程ねぇ。もしもしヴァルキューレ? 不審な人が1人いるから、ちょっと来てもらえるかな?」

 

「あ、やめて。本当にやめてください。ヴァルキューレには良い思い出がないんです」

 

「え、もしかして前科持ちだったりする?」

 

「えっと……職質を少々」

 

(お〜やめろ小鳥〜この世界のお前、マジで犯罪者なんだぞ〜)

 

 と、本人が聞いたら膝から崩れ落ちる案件なのだが、それを言ってはあまりにも酷というもの。レンは教室の隅っこでアヤネから貰ったお菓子を頬張りながら、小鳥とホシノの会話を見守る事にした。

 

 それと、クーラーボックスに入っているアイスも、今の内に全部食べた方が良さそうだ。まだまだ沢山あるが、暑いところにいると、どうしても食べたくなる。

 

「そっか……まぁ、人生色々あるから仕方ないね。流石に小鳥ちゃんを傭兵として雇う余裕はないけど、何かあったらいつでも言ってよ。おじさん、小鳥ちゃんの味方だからね」

 

「……はい、ありがとうございます」

 

「うんうん、素直で宜しい。それじゃ、おじさんは少し疲れたから一眠りしてくるから。アヤネちゃん、小鳥ちゃんの事お願いね」

 

「あ、はい。分かりました」

 

 ホシノはそう言うと、そのまま教室を後にする。その後ろ姿を見つめながら、小鳥は思った。

 

 あぁ、カケラも信用されていないな、と。寧ろ警戒されていると。会話の節々にそれが滲み出ている。

 

 当然と言えば当然だ。ホシノにとって、小鳥やレンは部外者だ。そんな部外者を、自身の懐に招き入れる事は避けたい。それがホシノの本心だろう。実際、それは正しい判断だと小鳥は思う。

 

 そして、それを察してか、ホシノと共に買い出しに出ていた2年生の砂狼 シロコも、警戒というか見張っている。

 

 対して、同じく2年生の十六夜 ノノミは、それを踏まえた上でレンの事を可愛がっている。レンの周りには食べ終わったお菓子の袋が散乱し、クーラーボックス内のジュースやアイスも殆ど空になっていた。お腹は大丈夫だろうか?

 

 取り敢えずは、現状として1年のセリカとアヤネからは多少の信頼を得て、2年の2人からは軽く警戒。そして3年のホシノからは完全に警戒されている。なんとも悲しい現実だ。

 

 仕方がない。信頼とは勝ち取るものだ。捕虜にしたヘルメット団から拠点を聞き出し、襲撃して追い払えば、多少は見方も変わるだろう。

 

「ではではアヤネちゃん。早速ですが、今からヘルメット団の方とお話をしますので、取り敢えず、バケツ一杯の砂と漏斗を用意出来ますか?」

 

「え? 砂と……漏斗?」

 

「え? ……あっ」

 

 アヤネに言われ、小鳥は思い出した。此処はゲヘナでは無かったと。折角、沢山の砂があるのに勿体無い。そう思いながら、小鳥は口を開いた。

 

「あ、いえ。すみません。今のは忘れてください」

 

「え? はい、分かりました」

 

(拷問だ)

 

(拷問ですねー)

 

(拷問する気だったわね)

 

(ん、その方が効率的)

 

 思っていた以上に、話し合いとは難しい。身近にあるもので使えそうなものといえば……多分ダメだ。きっとドン引きされる。

 

 此処は無難なやり方でいこう。

 

「アヤネちゃん、預けていた銃を返して貰っても良いですか?」

 

「あ、はい。どうぞ」

 

「ちょっと待って。一応確認するけど、それで何をするつもり?」

 

「え、先ずは挨拶がわりにお口の中で散弾を……」

 

「アヤネちゃん。絶対に銃を返したらダメよ」

 

「……成程、口内炎にするのもダメという事ですね」

 

「そういう問題じゃないわよ」

 

 そっか……そういう問題じゃないのか。これなら、大抵の生徒は自白するのに勿体無い。

 

「では、普通に話し合うしかないですな」

 

「……本当に普通に話し合うんでしょうね?」

 

「はい、勿論です」

 

 セリカのジト目で見つめられながら、小鳥は肯定する。話し合うだけなのだ。それだけの事なのに、一体何が違うというのだ?

 

 そう思いながらヘルメット団を拘束している教室に向かおうとした小鳥だったが、部屋の隅から聞こえた声に、その足を止めた。

 

「小鳥ぃ……」

 

 それはレンの声だった。小鳥は、そんなレンに近付きながら口を開く。

 

「おや、どうしたんですか? レンちゃん」

 

「……お腹いてぇ〜」

 

「お腹痛いって……あぁ、アイスとジュースを沢山食べたからですね」

 

「トイレ連れてってくれ〜」

 

「自分では厳しそうですか?」

 

「動くと出そうだぁ〜大分やべぇ事になってんぞ〜」

 

「あ〜分かりました。すみませんが、トイレは何処に?」

 

「それなら、廊下を出て右に」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 アヤネにトイレの場所を聞くと、小鳥はレンを抱き抱え、そのまま教室を出ようとするも……

 

「洋式じゃないとやだ〜」

 

「……洋式はありますか?」

 

「和式しか」

 

 ウォッシュレットが無いだけで辛いレンにとって、洋式ではなく和式のトイレという事実は、泣き出すには十分な破壊力だった。

 

「や"だぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"小"鳥"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"〜!!」

 

「あーほら、分かりました。分かりましたから、支えてあげますから、それで我慢して下さい」

 

「見"ら"れ"だぐね"ぇ"よ"〜!!」

 

「目を瞑りますから」

 

「匂"い"も"だぁ"〜!!」

 

「息も止めますから」

 

「耳"も"塞"い"でぐれ"ぇ"」

 

「無茶言わないで下さい。支えるんですよ。レンちゃんは貧弱なんですから、手を離したら、トイレにドボンですからね」

 

 小鳥はそう言うと、レンを抱き抱えたままトイレへ向かった。そしてトイレの中に入り、ズボンと下着を脱ぐようレンに指示する。プルプルと震えながらにズボンと下着をおろしたが、既に呼吸が『ヒーヒーフー‼︎』と限界の模様。

 

 上手い具合に上着で大事な部分は隠れているが、下半身を露出したまま動こうとはしないレンに、小鳥は優しく声をかけた。レンの尊厳を傷付けないように。

 

「は〜いレンちゃ〜ん、そのままトイレを跨ぎましょうね〜脇を支えてますのでゆ〜くり、おろしますよ〜。後、上着が汚れますので、たくし上げますね〜」

 

「ぞの"言"い"方"や"め"でぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"〜!!」

 

「はいはい、暴れない。暴れない」

 

 小鳥はそう言いながらレンの脇を支え、和式のトイレを跨がせた。そしてそのまま中腰姿勢にさせると再び優しく声をかける。

 

「はい、よく出来ました〜。お利口さんですよ〜後はう〜んと気張って下さいねぇ〜」

 

「も"う"や"だあ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! 小"鳥"嫌"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」

 

 レンは限界を迎えた。レンは泣きながらに尊厳を破壊された。次からはおまるを用意しようと、小鳥は心に誓った。




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