風紀の狂犬   作:モノクロさん

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情報の共有

 カタカタヘルメット団の拠点を入手した小鳥は、対策委員会のメンバーと情報を共有すべく、ホシノを教室へ呼び出す事にした。

 

 モモトークにメッセージを送って数十分後、ホシノが教室に現れる。

 

「おはよ〜小鳥ちゃん。こんな朝早くからどうしたの?」

 

 眠い目を擦りながら、欠伸をするホシノ。しかし、その視線は小鳥をしっかりと捉えており、彼女の一挙手一投足を観察しているようだった。

 

 突然の呼び出しで、しかも呼び出したのはホシノ1人。何かあると考えられていてもおかしくない状況だ。それでも此処に来たと言う事は、不測の事態が起きようとも、自分1人で対処できるという自信の現れなのだろう。

 

「あはは、朝早くから申し訳ありません。ただ、先日捕らえたカタカタヘルメット団の子から、拠点の位置を割り出したので、その情報の共有をと思いまして」

 

 小鳥のその言葉に、ホシノの瞳が揺らぐ。脈はある。少なくとも、その情報に、ある程度の価値をみいだしたという証拠だ。

 

 今、ホシノの心は揺れている。信用するか否か。行くべきか、行かざるべきか。1人で向かうか、それとも皆で挑むべきかと。そんな心の内が見て取れる。

 

 ホシノのその揺らぎに付け込むようで心苦しいが、小鳥は構わず話を進める事にした。

 

「メンバーの数と武装に関しても、ある程度の情報を得ましたが、定期的に物資を補給しているらしく、その全容までは把握出来ませんでしたが、少なくとも、この拠点を襲撃し、彼女達の物資を全て奪う事が出来れば、暫くは活動が鈍りますし、その間の此方の立て直しも可能でしょう」

 

 物資に関しては、カイザーコーポレーションと、カイザーコーポレーションを裏で操っている黒服が賄っている事を知っている。

 

 しかし、その事を話すとなるとややこしい事になるのは明白だ。あくまでも、彼女達の裏にはスポンサーがいる事を仄めかす程度で良いだろう。

 

「資金が潤沢にあるのか、それとも、スポンサーが居るのかは分かりませんが、戦車も保有しているみたいですね。数は3両……1両は防衛用に残して2両はブラックマーケットに売り捌いて軍資金にすれば良いんじゃないでしょうか?」

 

 決定権はあくまでもそちらにある事をアピールし、ホシノに判断を委ねる。

 

 元々、小鳥やレンは、雇われているわけではない。発言権の高いメンバーが不在の中、偶々襲撃された危機的状況の中に居合わせただけの立場だ。

 

 ヘルメット団を追い払い、そのリーダー格を捕虜にはしたが、それは自分達の意志であり、見返りとして、教室を提供された事で、貸し借り無しとなっている。

 

 ただし、捕虜から得られた情報は別だ。情報とは時にあらゆる兵器をも凌駕する力を持っている。特に、ヘルメット団の脅威に晒されている彼女達からすれば、敵の拠点を把握するだけでも様々な対策を講じる事が出来るのだ。

 

 例えそれが、真偽を問わずとも、小鳥から齎される情報には、それだけの価値がある。

 

 ホシノは暫くの間、小鳥の目をジッと見つめていた。疑念・疑惑、数え上げればキリがないが、それらを全て飲み込み、決断する。それが上の人間としての務めであり、責任だ。

 

 ホシノは、考える。小鳥が言った情報の真偽を。仮に真実だとすれば、彼女達の拠点を潰す事で、襲撃を抑制する事が出来るだろう。その間に立て直す事も出来る。しかし、もしそれが嘘だった場合は……。

 

「……1つ聞いても良いかな?」

 

「はい、何なりと」

 

「どうしてその情報を私達と共有しようと思ったのかな?」

 

 小鳥達はあくまでも客人だ。雇っているわけではない。その事を念頭に置き、ホシノは問う。情報を提供する事による利益。それを知りたいと思うのは当然だ。未だに疑いが晴れてない以上、その解答から、小鳥達に対しての評価を決める必要がある。

 

 小鳥もまた、この解答により、今後の関係に影響を及ぼす事を重々承知していた。なので、それ相応の解答を用意する必要がある。

 

「理由なんて単純なものですよ。知人にアビドスの様子を見てきて欲しいと言われた。それだけの事です」

 

「……それだけ?」

 

「それだけでは足りないでしょうか? 私からすれば、その知人は命の恩人……いや、それ以上の存在です。貴女には理解出来ないでしょうけど、その人の為なら、私は協力を惜しまない。それが私の原動力ですから」

 

 脳裏に浮かぶはヒナの姿。もし仮に、ヒナからそう頼まれたなら、小鳥は喜んで全力を尽くしただろう。

 

「…………」

 

 敢えて挑発的な物言いをした。これでホシノがどう出るか確かめる意味合いもある。協力する理由は、あくまでも世話になった知人からの頼みであり、その人には多大な恩がある。その人の為ならば、利益を度外視した行動を取る事に抵抗がない事を示唆し、情報の価値よりも、恩義に報いている事をアピールした。

 

 ホシノは小鳥の言葉を聞き、暫くの間沈黙した。そして……

 

「そっか……うん、分かったよ。その情報の信憑性は別として、その情報の真偽を確かめる必要がありそうだね。小鳥ちゃん、その拠点の場所を教えて貰える?」

 

 ホシノは、そう結論付けた。

 

「はい、分かりました。では……」

 

 悪くはない感触だった。少なくとも、信用されていない状況から、多少は軟化したと見て良いだろう。

 

 ヘルメット団の子から得た拠点の情報をホシノに話すと、彼女は、その情報をメモに書き留める。

 

「うん、ありがとう小鳥ちゃん。おじさん助かっちゃった」

 

「いえいえ、お役に立てたなら幸いです。あ、そうだ」

 

「ん? どうしたの?」

 

 ホシノは首を傾げる。小鳥が何を言いたいのか、その意図を測りかねているのだろう。

 

「もし宜しければ、今から確認も兼ねて偵察に行きませんか。勿論、私も同行しますので」

 

 小鳥のその言葉に、ホシノは目を見開く。そして、少し考える素振りを見せた後に……。

 

「……うん、分かった。良いよ。行こっか」

 

 そう答えた。




おまけ
今回のアビドス編にはラスボスを用意しています。
それを考察しながら見て頂けると幸いです。

感想ありがとうございます。
凄く励みになっています。
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