風紀の狂犬   作:モノクロさん

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狂乱の宴 市街地攻防戦

 轟音と共に黒煙が空へと立ち昇る。

 

 崩れ去る建物、人々の怒号と悲鳴、鳴り止まぬ銃声。

 

 そこはまさに地獄絵図。人々はただ逃げ惑い、恐怖に怯え、そして蹂躙される。

 

 その様子を、ホシノは呆然と眺めていた。

 

「これ……は……」

 

 銃声が響き渡る度に、人々の悲鳴が木霊する。困惑するホシノの脳裏に昨晩の黒服との会話が過ぎった。

 

『ホシノさん、私は今回の件から手を引こうと思っています。貴女がたの借金についても、その負担の大半を私が請け負いましょう』

 

『どういう風の吹き回しかな? もしかして、小鳥ちゃんやレンちゃんと関係が……』

 

『お話する事はこれ以上ありません。あぁ、此処から家に戻るには時間がかかるでしょう。私は此処を退去しますので、好きなだけご利用下さい』

 

『あっ、ちょっと……っ』

 

 黒服はそれだけ伝えると、振り返る事なくその場を立ち去った。まるで全てを放棄するかのような態度に困惑したが、ホシノは黒服が何か企んでいるのではないかと思い、警戒していた。

 

 しかし、これはどういう事だ?

 

 黒服の仕業にしては、あまりにも雑で稚拙な行動。黒服ならば、もっと確実に相手を追い詰める筈だ。

 

「まさか……あの子の仕業?」

 

 小鳥とレンが今回の騒動を?

 

 いや、それこそ有り得ない。彼女達もまた、黒服と協力関係にある。それなら、今回の騒動を起こす必要が無い筈だ。

 

 ならば何故……。

 

 カイザーコーポレーションに所属するカイザーPMCが街を襲っている?

 

 

 

 

 ホシノを除く、対策委員会のメンバーは、市街地で暴れ回るカイザーPMCの部隊と交戦していた。

 

 市民の避難を誘導しながらの交戦は、流石の対策委員会のメンバーも苦戦を強いられている。

 

 唯一の幸運は、小鳥とホシノがカタカタヘルメット団の拠点から物資を大量に入手し、補給の心配が無い事だが、敵の数が余りにも多過ぎる。

 

「アヤネちゃん!! ホシノ先輩との連絡はまだ!!」

 

「ダメです!! 連絡がつきません!!」

 

 アヤネが端末を操作するも、ホシノに繋がらない。電波障害でも起きているのか、それとも電源を切っているだけなのか。

 

 その間にも、カイザーPMCのオートマタは一般市民と対策委員会のメンバーに襲いかかる。

 

「このっ!!」

 

 セリカが応戦し、オートマタを数体無力化するも、倒れたオートマタは地面を這いずりながらに、落とした銃へと手を伸ばす。

 

「まだ動けるのっ!!」

 

「でも、なんだか様子が変」

 

 シロコが銃を手に取り、オートマタの背中に銃弾を撃ち込み続ける。

 

「う、うぅ……っ」

 

 オートマタは呻き声を上げながら、それでも銃へと手を伸ばす。その様子に、セリカは違和感を覚えた。

 

「な、何よ……一体なんなの?」

 

「セリカちゃん!! 危ない!!」

 

 アヤネの叫び声に、咄嗟に身を翻す。すると、先程までセリカがいた場所に、銃弾が撃ち込まれた。

 

「もう一体……っ!!」

 

 セリカの視線の先には、もう1体のオートマタの姿があった。そのオートマタはそこかしこに銃を乱射しながら、セリカ達に突進して来た。

 

「させないっ!!」

 

 シロコがオートマタの頭部に銃弾を撃ち込み、機能を停止させる。だが、そのオートマタはそれでもなお、銃を撃ち続けた。

 

「この……っ!! しつこい!!」

 

 シロコがオートマタの腕を蹴り上げ、そのまま背後に回り込み、膝を撃ち抜く。ガシャリと崩れ落ちながら、無力化に成功したオートマタだったが、その身体はガタガタと震えていた。

 

「な、なんなの……これ?」

 

 一帯のオートマタの無力化に成功した対策委員会だったが、彼等の異常行動に、困惑するしかなかった。

 

「…………け……て」

 

 無力化されたオートマタが震えながらに声を発する。

 

「死に……た……くな……」

 

「……っ、あんた!! 自分達が何をやったか分かってるわけ!! それなのにそんな……っ」

 

 セリカの叫びは虚しく響く。

 

「ち、違……違うん……だ」

 

 オートマタが懇願するかのように、セリカに手を伸ばした。

 

「もう嫌だ……あんな……あんな化物……俺達は……アレに脅されて……」

 

「化物? なんの事よ!! ちゃんと言いなさい!!」

 

 セリカの叫びに、オートマタは耐え切れずに叫んだ。

 

「うわぁぁぁっ!! 嫌だ!! もう嫌だぁっ!! 仕方が!! 仕方が無かったんだ!! 俺達は全員、あの化物に……奴は見てる!! 今も俺達を!! だから俺達は、アビドスを……何でもいいから混乱させろって!! これは祭りだ……宴だって!!」

 

 錯乱したように叫ぶオートマタに、対策委員会のメンバーは困惑を隠せなかった。

 

「何よ……これ……何なのよいったい……」

 

 オートマタの言葉に、セリカは理解が追いつかない。それもその筈だ。彼女達からすれば、オートマタが錯乱し、意味不明な言葉を発しているようにしか聞こえないのだから。

 

 だが、このオートマタの言っている事は、あながち間違いではない。

 

 何故ならば……。

 

「撃てっ!! 撃てっ!! 撃てぇぇぇぇ!!」

 

 狂気を孕んだ声が市街地にて木霊する。それに呼応するように、銃声が鳴り響き、轟音と共に建物が崩れ落ちる。

 

 オートマタの表情を捉える事は出来ない。しかし、彼等が恐怖に怯えながら市街地を攻撃している事は間違いない。

 

「考えるのは後。今はこの状況をどうにかする」

 

「うん。そうね。この状況を見過ごす事は出来ないわ」

 

 シロコの言葉に、セリカが同意する。

 

 対策委員会のメンバーは、アヤネの指示のもと、市街地へと駆け出す。1人でも多くの市民を避難させ、暴れ回るオートマタを無力化する為に。

 

 これで、彼女達がオートマタに釘付けとなった。

 

 その様子を、狂乱の不死鳥はビルの屋上から見下ろしながら、ニタリと笑みを浮かべ、思わずペロリと舌舐めずりした。




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