……そう、私ならそうする。
先ずは敵となり得る兵を分散させる為に、アビドスの自治区を襲撃する。
必要なのは混乱だ。
混乱は大きくなれば大きくなる程都合が良い。逃げ惑う市民が行手を遮り、敵の戦力を不明瞭にする。
次に、その混乱に拍車をかける為に必要な物がある。程良く爆弾を仕掛けて爆発させるのだ。
混乱する人々は音に敏感となる。爆発は人の恐怖を増幅させ、混乱に拍車をかける。
爆発と同時に、建物が崩れ落ち、火の手が上がろうものならば、皆が我先にと逃げ出すのは明白。
逃げ惑う人々でごった返している中、何処に敵が潜んでいるかも分からずに、無闇に発砲すれば市民に危害が及ぶ。
そうなれば、混乱はより大きくなるだろう。そして、その混乱に乗じて私は動く。
目的地は明白だ。障害物のない開けた場所。罠は仕掛けない。フェアでは無いからだ。
敵と定めた相手ならば、正面から叩き潰す。それが私事ならば尚更だ。
この世界の私は、私を敵と認識している。レンを狙ったのも、それが原因だ。
だから私は、レンを狙ったこの世界の私を敵と判断した。ならば、私がやるべき事は何か。答えは明白だ。これは私自身の葬り方でもある。
私が私を倒す。その為に用意した舞台がアビドスだ。そして、その舞台には、彼女も招かれるのだろう。私は知っている。彼女は必ず、この世界の私を止める為に動くとそう確信していた。
ならばこそ、私の行動は、すべて手に取るように分かるのだ。
私は私を敵として認識していなかった。この世界線の私が何をしていようと、それが私の選んだ選択だ。それに異議を唱える事もなかった。
しかし、レンに手を出したなら話は別だ。だからこそ、私は私を『敵』として認識した。
そこに理由があり、それが正しいものだとしても、私は私の敵を許しはしない。
それは私も同じ事だろう。ならば、お互い様だ。私は私の敵を排除する。ただそれだけだ。
ビルの屋上から眼下を見下ろせば、アビドスの自治区が一望出来る。カイザーPMCのオートマタが建物を破壊し、市民を襲っている。
ホシノさんの姿を確認した。1人で獅子奮迅の如くオートマタを無力化し、市民を安全な場所へと誘導している。
他のアビドスの面々も同じ様に、市民を安全な場所へと誘導している。
此処は彼女達に任せれば良いだろう。
彼女達に申し訳ない気持ちを胸に、小鳥は1枚の紙を取り出して床に置き、手頃な石を重し代わりに乗せた後、移動する。
高い所から見ればよく分かる。彼方此方に火の手が上がってはいるものの、一箇所だけ、被害が少ない場所がある。
そこそこ開けた場所で、見通しも良い。恐らくは、あの場所こそが、私が用意した舞台だろう。
「見栄えだけは気にするんだな。どっちの性格だ?」
私はその場所へと向かいながら、ボソリと呟いた。
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