森の中を一頭の馬が主人と従者の女の子を乗せ稲妻の如く速さで駆ける。辺りには木が林立しているが、馬は駆けながらも器用に避けるのであった。
「百、悪い急に付き合わせて」
「気にしないで。私は何があろうと義龍様に付き添う」
「三太夫ありがとう。頼りにしてる」
(大きくなった。あの時の小さな子供が)
雷光を走らせる義龍様……私は義龍様の横顔を見詰め、大きな背中にしがみつきながら義龍様との初めて出会った時を思い出す。
過去・・・
三太夫side
「最後の試練だ。お前たち二人には一人になるまで殺し合いをしてもらう」
忍びの里の頭領である父親が私たちに最終試験を伝える。
私が生まれた忍びの里では頭領の子供、後継者にはある程度の年齢になると最後の一人になるまで殺し合いをしないといけない掟がある。無論私と双子の妹も例外ではない。
私の目の前には私と顔立ちが似た水色の髪の幼い少女が生き残るためにクナイを持ち襲いかかる。
「ごめん、命を貰う……!?」
「姉上……」
私は妹が振りかざしたクナイを左手で受け止めて、右手で持つクナイでそのまま首を狙い切り裂こうとした……が出来なかった。
私は双子の妹を殺そうとするが、私を呼ぶ声を聞いてしまい、里で妹と楽しく過ごして来た記憶が脳内を過り躊躇う。その一瞬が命取りであった。
グサっ!
あれ? 何か胸に刺さった……そっか……自分の胸を確認するとクナイが刺さり血で赤く染まる。
「姉上……ごめんなさい、ごめんなさい」
妹は私を刺した後、懺悔しながらも容赦なく川に突き落とす。父の後継者は妹に決まる。川に落ちる瞬間、最後に見た妹の顔は辛そうに身体を抱きしめて泣いていた……ずるい……そんな顔をされたら恨み言一つさえ言えない……
「生きてね……」
私は瀕死の状態で川に落とされて里から離れた何処かに流される。何とか川から上がり、近くに生えていた薬草を使い治療をして歩き続ける私……
ここは何処? 私はここで死ぬの? それも悪くないかも……
私は遂に力尽きて倒れてしまう。……目を瞑ると、何処までも深く、深い闇……私はもう駄目だと諦めてた……仕方ないとはいえ……双子の妹に殺されて終わるなんて……
「おい!? 大丈夫か!?」
大きな声を聞き、目を開けると、眩しくて闇を振り払う、まるで太陽のような男の子であった。これが私……後継者争いに敗北し名も無きくノ一となった私と後の美濃の鬼神……斎藤義龍様との出会い……
「俺は斎藤義龍。キミは誰なんだ?」
「私は……です」
「えっ? なんて?」
「名前が無いです」
あの時の義龍様はキョトンとしていた。今思うと反応が凄く可愛かった。でも名前がない事は本当の事。私は妹に敗北して名前も、家族も、住む場所も無くなった……空ろになった。
「そっか……色々大変なんだな……なら俺が名付けてやるよ……三太夫……お前は今日から百地三太夫だ!!」
「百地……三太夫……」
何度も私は自身に与えられた名前を心の中で呟く。私は百地三太夫。私だけに与えられた名前だ。
「三太夫。お前は何が出来る?」
「私は……忍だった。忍びこみ相手の暗殺や情報を盗む事が出来ます」
「そっか……忍か……」
私は斬られる覚悟で私が出来る事を正直に話す。このお方には嘘を吐きたくない。でも、誰も好き好んで間者かも知れない人を受け入れてくれる筈もない……あの時の私は自身が斬られる覚悟で伝える。腕で身体を抱き震えながらも斬られる痛みに備えるが……義龍様はそんな素振りを見せずに笑いかけ言葉をくれる。
「お前は今日から俺の忍として仕えろ。よろしくな……百」
暖かな小さな手が私の頭の上にそっと置かれる。
「はい、はい!」
私は必死に答えるが、溢れる涙で視界が悪く目の前に立つ義龍様の顔を見る事さえ出来なかった。あの日から百地三太夫としての生活が……物語が始まった。私の始まりの日。
それからは月日が流れるのがあっという間だった。信頼できる優秀な家臣を揃える為に義龍様の指示で播磨(後の兵庫県)に黒田官兵衛という武将の情報収集を行ったり、美濃の竹中半兵衛を調べたり。
調べると二人共、義龍様が言った通り凄い才能であった。流石義龍様だ。竹中半兵衛の評価は、一部の愚か者たちは、書物に取り憑かれたうつけと言い、竹中半兵衛の才能を分かってないみたいだが。
その後は優秀な家臣たちが義龍様と運命に引き寄せられたように増えていく。天才軍師、竹中半兵衛、腹心、明智十兵衛光秀、
義龍四天王、義妹、未来を見通す巫女、斎藤龍興様。二人にも負けない軍略を持つ、島左近、城作りの名人、藤堂高虎、器用貧乏な山内一豊。
正直私は義龍様と龍興様以外は嫌いだ。私から大恩人で大切な兄上のような存在の義龍様を奪おうとする竹中半兵衛たちが、妹のような存在の龍興様と仲の良い山内一豊が……私はもう二度と家族を失いたくない。何度忍び込み暗殺しようとした事か……でも竹中半兵衛たちも義龍様にとって大切な家臣であり戦力。暗殺は止めることにする。
現在・・・
「本当に大きくなった」
あの時見た小さな背中が今は大きくなった。私の大切な人……国をも守れる意思と力を持つ青年に……私にとって義龍様は大切な恩人である。でもそれ以外にも二つの想いが私の胸の中の奥に潜めている。兄上のような存在……そして恐らく……心を寄せる異性。でもたかが忍の分際である私にそんな事は伝える事は出来ないし、するつもりもない。
ただの忍びとして義龍様の陰に潜み……何があろうと……何をしようと義龍様を守る。その想いはあの時仕えた時から何一つ変わらない。
その頃の美濃の様子……
今川義元が大軍を率いて上洛する。有名な戦……桶狭間の戦い……不安を抱える稲葉山城城内……
「とにかく! 私たちが義龍様の留守を守るですぅ!!」
「そうですわね。半兵衛ちゃんが倒れた今は十兵衛ちゃんが頼りです。指示をお願いしますわ」
お兄ちゃんがいない時は半兵衛ちゃんと十兵衛さんが指示を出しますが、今は半兵衛ちゃんが意識を失ってるので十兵衛さんが一人で指示をします。緊急事態のはずだけど落ち着いていてやっぱり十兵衛さんは頼りになります。
「任せろですぅ!! 半兵衛が居ない今、龍様に良いところを見せる絶好の機会! このまま半兵衛を追い抜け追い越せですぅ!!」
でもやっぱり腹黒い所もあります。半兵衛ちゃんが倒れてる隙にお兄ちゃんの評価を上げようとしているみたいです。そんな事を考えなくてもお兄ちゃんは、十兵衛さんの事、半兵衛ちゃんと同じくらい信頼してるのに。
「龍興! 未来で今川義元が上略する歴史はありますよね?」
おっと、私のお仕事の時間ですね。私は半兵衛ちゃんのように軍師と呼ばれ、今では私と半兵衛ちゃんを合わせた両兵衛と呼ばれてます。未来では大河ドラマ、軍師龍興が始まりますね……ごめんなさい嘘です! 見栄をはっちゃいました! 両兵衛は本当の事ですが軍師は嘘です。私は半兵衛ちゃんのように優れた軍略や、十兵衛さんのように全ての能力が優れてる訳ではないです。それに他の四天王方のように戦国の世を渡り合えるほどの一点型の能力もありません。でも得意なことはあります。令和の時代、小学生の弓道部に入ってたので弓は得意です。もう一つはこれから起きる出来事や武将の得意な策を半兵衛ちゃんに伝え、私の話を聞いた半兵衛ちゃんが軍略を考え指示を出します。
何時しか私の通り名は未来を見通す巫女と呼ばれてます。えへへ! ちょっと格好良くないですか? 服装も通り名に合わせて巫女装束に替えたんですよ~後は……何と私には陰陽師の才能があったみたいで、半兵衛ちゃんに師事を受け私も陰陽師になっちゃいました~まだ見習いですけど……
「はい。桶狭間の戦い……未来では、織田信長が桶狭間で休息する今川義元の本陣に奇襲をかけて討ち取った、そういう戦が伝えられてます。織田信長……信長の代わりの織田信奈が、桶狭間で休息し油断している今川義元に奇襲を仕掛け倒すと思いますが……」
「あの有名なうつけ姫が東海一の弓取りをな……凄えじゃねえか!」
「うつけがですか……ならばその間に僕たちも体制を整えましょう! そのまま織田家と戦になるかも知れませんし」
私の言葉に高虎さんは驚き、一豊君は冷静に先の事を考えて進言する。私の言葉に引っかかりを覚えた二人が問いかける。
「龍興ちゃん……思いますが……ですか?」
「……龍興そのまま続けるですぅ」
私の意味深な言葉に気づいた二人。左近さんが問いかけ、十兵衛さんに話を続けろと言われたので私の考えていることを素直に答える。
「歴史は何度もお兄ちゃんが変えたように、人の想いや行動で大きく、又は小さくでも変わると思います。だからお兄ちゃんは確実な情報を欲しいから自身で動いたんです」
「ごもっともなお考えですわね。どうしますか十兵衛ちゃん」
私の考えに微笑みながら納得してくれる左近さん。十兵衛さんは瞳を閉じて私の言葉を深く考え瞳を開けて自身の考えを言う。
「左近、私は龍様のように皆を引っ張り先行する事は出来ねえですし、半兵衛のように完璧な策は伝えれねえです」
「十兵衛さん、それは違うよ。十兵衛さんは何度もお兄ちゃんや私たちを引っ張って来てくれたよ!!」
「そうですわよ。十兵衛ちゃんはしっかり役割を果たしてますわよ。何処かのまな板娘と違って……」
「くぉら!? 誰がまな板娘だ!! っと……そうだぜ副大将殿! アンタはアタシらの副大将だぜ! もっと堂々としろよな!」
「僕たちは何度も十兵衛殿に助けられました。今度も僕らを率いてくれるって信じてます」
十兵衛さんは弱気になる。でもそんな事必要ない。十兵衛さんの頑張りは私たち四天王が一番知ってるから。私たちの言葉に元気を取り戻した十兵衛さんははっきりと指示をする。
「私らしくなかったですね……感謝するです……では指示を出すから耳の穴かっぽじって聞きやがれですぅ!! 左近は私と全体の指揮、龍興は今川義元の事をもっと教えろです!」
「うふふ分かりましたわ」
「うん! 分かった!」
左近さんは大人っぽく微笑み、私は了解する。
「高虎は今川軍が来た時の為に罠を仕掛けるデス!! 一豊は補助を頼んだデスよ!」
「分かりました!」
一豊さんは頷くが高虎さんは自身の考えを打ち上げる。
「今からだとそんな大した物は作れねえぜ」
「足止め出来る簡単な奴で良いです!」
「足止めか! 分かったぜ! 副大将殿!!」
高虎さんも頷くと気を失っていた半兵衛さんの意識が戻り進言する。
「くすん、くすん。大丈夫ですよ。仕掛けは龍君に言って前から作ってもらってますから」
「軍師殿、前から作ってたのかよ?」
「はい。今川義元が上洛する事は考えられましたからね。でも美濃に来る確率は殆どないと思いますが」
私は言ってないしお兄ちゃんから聞いたのかな? ……違うね半兵衛ちゃんは情報を探り自分で考えたんだよね……やっぱり凄いな。相変わらずの頭の切れに驚きと納得をする私。
「半兵衛ちゃん意識が戻ったんだね! 良かった!!」
「はい。くすん、くすん。ごめんなさい、ご心配をおかけしました」
申し訳なさそうに謝る半兵衛ちゃん。違うよ。半兵衛ちゃんたちに心配をかけ過ぎた馬鹿お兄ちゃんが悪いんだよ!!
「半兵衛ゆっくり休んでいた方がいいですよ」
「十兵衛さん、ありがとうございます。私は龍君の軍師ですから大変な時に呑気に寝てる訳にはいきません」
うんやっぱりこのツートップは絵になるね〜幾つもの戦を一緒に乗り越えて絆を深めた。友だち+戦友だよ! 羨ましいな。私にもそんな子がいたらな~
「っち! 半兵衛が倒れてる隙に私が大活躍して龍様に褒めてもらおうと思ったのですぅ」
「くすん、くすん。十兵衛さんの事ですからそういう事だろうと思いました!! 龍君に<ありがとう良くやったなって>褒めてもらうのは私の方です。それに私は十兵衛さんだけには絶対負けたくありません」
「上等ですぅ! 半兵衛には負けないですよ!!」
……と思ってる私がいましたが、すぐに私の評価は180度反転させられました。半兵衛ちゃんと十兵衛さんはメンチの切り合いを始めてしまう。拝啓、鈍感なお兄ちゃん……桶狭間の戦いも大切だけど、こっちの正妻戦争(半兵衛ちゃんと十兵衛さんの)も早く解決しようよ。
でもお二人は流石で、いがみ合いながらも二人はテキパキと行動を起こす。半兵衛ちゃんと十兵衛さんは指示を出して忍たちは重元さんや美濃三人衆。城を治める城主さんたちに指示を報告しにいく。高虎さんと一豊君は罠の確認、半兵衛ちゃんが意識を取り戻したので左近さんも着いていく。
私は……お二人の正妻戦争を眺めています。け、けっしてサボってる訳ではないですよ。早く言い合い終わらないかな……
義龍side
桶狭間……尾張と三河の境目にある有名の戦が繰り広げられる場所。
実は桶狭間と呼ばれる場所には二つあり、桶狭間山……だが山なのでもしそんなところに本陣を敷いていたら、今川軍から織田軍の動きが丸わかりで奇襲は確実に失敗する。
最低でも谷じゃないと織田の奇襲は成功はしないはずだ。
考えられるのはゲーム織田信長公の野望のイベントで知った、田楽桶狭間。
実は今川義元を討ち取った田楽桶狭間と呼ばれる場所も候補になってるみたいだ、もう一つは三太夫から教えてもらい分かったが、この付近の村の人たちは桶狭間山の東に狭い平地があり、寿限無寿限無……
「百、正式名称って何だったけ?」
「はい。寿限無寿限無ごこうのすりきれあかまきぎゃみあおまきぎゃみきみゃきぎゃみ狭間です」
長いのでこの辺の人は省略して<桶狭間>と呼ぶらしい。百、凄いな。正式な名前を覚えてるのもだけど、噛まずに言えたのが。
俺は少なくとも少ししか言えねえよ。
「義龍、二カ所ありますがどうしますか?」
「そうだな……ここから近いし桶狭間山の東に向かうか」
「御意」
今川義元軍にばれないように雷光から下りて気配を隠しながら歩いて行く。
「いたな……」
桶狭間に着くと、休息する今川義元の本陣を発見した
「義龍様、織田のサル、相良良晴がいます」
百は良晴の事を発見した。教えてもらった方角を見ると何かに追われて必死に逃げている。これはもしかして今川義元の本陣を信奈に伝えようとしてるよな?
「百、あいつを逃せば織田家は今川義元に勝てるかもな。頼むぞ」
「はっ! 義龍様の仰せのままに」
三太夫は闇に消える。さて、俺も行くか。俺も走り良晴を追いかけていく。
「はあ、はあ、」
「我が名は服部半蔵。織田家の間者を帰す訳にはいかん。フフフ」
「今時フフフとか言ってるよ!?」
織田家に仕える制服を着た茶髪の少年、相良良晴は辺りにある木を上手く使いながら必死に逃げるが相手は凄腕の忍。未来から来た普通の高校生が逃げられるわけがない。木にぶつかり追い詰められた良晴……忍は良晴に狙いを定めると手裏剣を投げる。
「小一郎ちゃんも五右衛門も、犬千代もみんな俺のために……信奈が勝てるように頑張ってんだ!!俺だけ頑張らねえでどうするよ! マサ……力借りるぞ!! 御剣流……三の太刀・守亀!!」
良晴は呼吸を整え、鞘に収められていた刀を抜き勢いよく円上に切りつけて手裏剣を弾く良晴。
「何故貴様がその流派を!?」
「何言ってんだお前……」
冷静に一歩一歩逃げ場所を無くして追い詰めていた忍は良晴が見せた御剣流を見て表情を一変する。
何故なら平和である令和では無論だが、この戦が繰り広げられる戦国時代でも御剣流は習得不可能であり、戦国時代で義龍が戦で活躍するようになって何人の武将たちが挑戦するが習得不可であった。
今では伝説の流派とされていた。そんな伝説の流派を大うつけと呼ばれる織田家の侍、良晴が使えるとは夢にも思わない。
「まあいい……今度こそ……死ね」
「もう一回……はぁ、はぁ……やべえ……呼吸が……」
もう一度技を使おうとするが御剣流の技を使うのは負担が大きいのか、呼吸を乱れ苦しむ。良晴に複数の手裏剣が迫る……絶体絶命のピンチ……
キン! キン! キン!
義龍は間に入り、虎御前で迫りくる手裏剣を全て弾く。
「何でお前が桶狭間にいやがる……斎藤義龍!?」
「久しぶりだな。織田家のサル」
「俺はサルじゃねえ!! ていうか質問に答えやがれ!!」
良晴は俺に激情を向け怒鳴る。正徳寺の会見で織田家と敵対したので仕方ないが。良晴……仮にも命を助けてやったのに随分な態度だな。
「……道に迷った」
「嘘吐け!!」
とっさに考えた理由を伝えるが騙されないか。
「……!?」
カキン! カキン!
「いきなり手裏剣を投げるなんて随分な挨拶じゃねえか」
「お前たちが呑気に話てるのが悪い」
「違いねえな……!? っち!」
俺を簡単には殺せないと思った松平元康(後の徳川家康)の忍、服部半蔵は良晴に狙いを変え手裏剣を投げるが俺は何とか弾く。
「サル……早く行け。ここはこの俺、斎藤義龍が足止めしてやるよ」
「信用できるかよ!!」
こいつ……今の状況が分からねえのかよ……
「そうか……なら俺がお前をここで殺す」
「なっ!?」
良晴に竜牙を近づけ殺気を放ち脅す。
「俺は美濃を守るために今川の様子を見に来ただけだ。このまま進めばもしかしたら美濃に攻めてくるかもしんねえからな……それによう……本来お前ら織田家と争う理由はあっても、助ける義理はねえ」
「ぐっ!」
俺の言葉に怯む良晴。
「お前にはお前のやるべき事があるんじゃねえのか? 選べ、ここで無意味に俺か半蔵に殺されるか、このまま逃げて役目を果たすか」
「信奈に伝える方が重要だよな……分かったぜ! お前にそいつの相手は任せた!! 礼は言わねえからな!!」
良晴は少し考えると自分の役目を優先してがむしゃらに走り今川義元の本陣を伝えに行く。
「させるか……!?」
「ここから先は通らねえ事をおすすめする」
俺は地面を虎御前で切りつけて境界線を入れ良晴を追いかけようとする半蔵に忠告した。
「美濃の鬼神、この服部半蔵を舐めるなよ。この手裏剣にはハンミョウ毒が塗ってある。かすっただけで死ぬ。ふふふ終わりだ。成仏せい!」
半蔵は多くの毒を塗った手裏剣を投げる。毒の手裏剣が俺に迫るが気にせずに深く深呼吸する。手裏剣事……半蔵を叩き潰す!
「覇王御剣流・・・飛竜一閃!」
勢いよく二刀の刀、虎御前と龍牙を振り下げて斬撃を放つ。斬撃は多くの手裏剣を弾きながら距離がある半蔵に命中する。
「見事……だが忍は俺一人ではない」
こいつ俺の斬撃を受けたのにまだ動けるのかよ……タフな奴だ……半蔵の指示で他の忍たちが集まると思われたが……
「お前の頼りの忍たちは私が倒した……」
俺の命令で動いた三太夫が気を失ってる半蔵の部下の忍たちを引きずりながら連れてくる。
「貴様! 何故生きている!?」
「久しぶり半蔵。私は百地三太夫。義龍様の忍」
半蔵は百の姿を見ると表情を崩して驚く。そんな半蔵に百は名乗る。
「知り合いなのか?」
「はい。半蔵とは里に居た時に面識があります」
三太夫に問いかけると教えてくれる。半蔵は過去に百がいた里に所属していたようだ。
「半蔵、取引をしないか?」
「取引だと?」
半蔵は今川じゃなくて松平元康に仕えてる筈だ…交渉は出来るはず。
「ああ。織田のサルをこのまま見逃せ」
「織田の侍を逃して我らに何の徳がある?」
「サルを逃せば織田信奈は今川義元に勝てる」
「ぬ?」
さっきは聞く耳を持たなかったのに話を聞き出したな……
「このまま織田のサルを逃がせ、そうすれば織田信奈は奇襲して今川義元に勝てる」
「ぬ? それは美濃の巫女の予言か?」
「ああ。巫女の予言だ」
美濃の巫女……ハルの通り名、未来を見通す巫女として呼ばれるようになる。
半蔵は誤解してるようだがここは頷くか。
「ふんなおさら逃す事は出来んな」
「良いのか? 織田信奈が勝てば元康は独立出可来るのに」
「……」
「このまま今川義元に付いていれば一生パシリのままで終わり使い潰されるだけだ」
「確かに我が姫は独立を望んでいる。それにこの上洛で今川義元は、姫や家臣たちを使い潰すつもりだ」
俺の考えを聞いて納得をする半蔵。
「だが仮に勝てたとして織田信奈が攻め込み、織田軍が三河を飲み込まないとは限らない」
「それはないな。あいつが興味があるのは俺が治める美濃だけだ。東には興味がない。織田信奈は今川義元に勝った後、東の抑えとして松平元康に同盟を結ぶはずだ。だが、もしも織田信奈が三河を攻めるなら、背後から美濃が尾張を攻める」
信奈はあの正徳寺の会見でもはっきりと言ってたしな。
「我が逃したと知る目撃者はお前たち二人と織田の侍一人、もし約束を違えた時は何処に逃げようと忍び込み織田の侍を消す」
「まあそれは仕方ねえな」
「そしてお前も殺しそこの女は里に報告して抜け忍扱いし始末する」
「てめえの考えは分かったよ……残念だぜ……百?」
俺の事は別に良いが……百を殺すだと……ふざけるな! 龍牙を構え動こうとするとそれよりも早く百が動いていた。
「義龍様を傷つけるなら私はお前をここで殺す」
「ふふふ出来るのか妹を殺せなかった優しい女子が」
百は半蔵の首筋にクナイを近づけ警告するが、過去の百を知る半蔵は冷笑した。
「優しいか試してみる?」
百はクナイをゆっくりと動かし半蔵の首筋から出血する。
「降参だ。貴様は変わったようだな」
「あの時川に落ちた女の子は死んだ。私は百地三太夫。義龍様の影に潜み、影として生きる忍……例え誰であろうと……殺す」
「覚えておこう」
百は首筋からクナイを離すと半蔵の気配は消えた……後はお前次第だ。良晴が駆けて行った先を見ながら応援する。
「さて帰るか」
「はい」
俺たちは雷光に乗り美濃に向かう。
「兄上……」
百は俺にしっかり抱きつき、普段は兄と呼ばないが、うとうとしていて夢を見ているのか俺の事を兄と呼ぶ。俺も百の事は妹のように思ってるから嬉しいな。
「ありがとう。いつも俺を陰で支えてくれて。頑張ったな」
百は、普段感情を見せないが俺を離さないよう強く抱きつきながら気持ちよさそうに眠る。俺は影で頑張る妹の頭を撫でながら起こさないようにゆっくりと雷光を走らせて美濃に帰る。
その後、忍から聞いたが良晴は織田信奈に情報を伝え歴史通りに今川義元の本陣を奇襲して勝利した。ちなみに今川義元は歴史とは違い、出家し信奈に降伏して命は許されたようだ。
小話
令和のボクっ子剣士
目の前を見ると防具を着けた同い年ぐらいの女の子が気絶していた。やった!……ボク、勝ったんだね……全国大会優勝だ!!
「一本! 葵選手の勝ち!!」
「わあぁ!!!」
審判の判定によりボクの勝ちで終わる。中学の剣道の全国大会で優勝したから観客の歓声が凄い。ボクがこの日本で剣道が一番強い中学生なんだ。でも最強じゃないんだよね~五年前に行方不明になった高校生の御剣先輩。最強の剣士と呼ばれてて実際めっちゃ強いんだよ!! 同じ学校の親友と試合を何度も見に行ったんだ~ボクの憧れの人なんだ。
「あのう……東雲先輩! 好きです! 付き合ってください」
試合が終わったので制服に着替え親友の家に行こうとしたら女の子に告白されちゃった。なんでか、男子じゃなくて女子に告白されるんだよね~あっ返事返さないと……
「ボク、女の子なんだけど」
「それでも先輩の事が好きなんです!! 付き合ってください!!」
あはは、困ったなこの子のこと何にも知らないんだけどな~
「ごめんね」
「そうですか」
「キミの事何も知らないからさ、まずはボクと友達になろうよ♪」
「は、はい//」
ボクの言葉に顔を赤くして返事を返す女の子。LINEを交換して別れる。
「あれから五年か……」
途中でまんじゅうを買いこの街で一番大きな屋敷に来た。大事な親友、西蓮寺小春は五年前に行方不明になり、手がかりが無く警察がどれだけ捜索しても見つからない。まるで神隠しにあったように消えたようだ。ベルを鳴らすと綺麗な銀髪の女の人が出てくれる。
「こんばんは! 小春ちゃんの命日なのでお参りに来ました」
「こんばんは! ???ちゃんいつもありがとうね。さっ上がってちょうだい!」
「お邪魔します」
小春のお母さん相変わらず綺麗で羨ましいな。それに大きいし……自分の胸と比べて泣けてきたよ。でもまだまだ成長途中だから大丈夫だよ……ね?
「あれから五年たったんだよ……キミは本当に死んだの? ……会いたいよ……ハル君」
ボクの親友は五年前小学3年生の時に消えた……もし生きていたらボクと同じ中学三年生のはずなんだよね。
「いつもありがとうね葵ちゃん」
「試合見たよ~凄かったよ!」
「大丈夫です! ありがとうございます。でも、まだまだですよ」
春君のお姉さんたち、長女のお姉さんが大学生で、次女のお姉さんが高校生だ。勿論二人ともスタイルが良い……はぁー
春君のお母さんとお姉さんたちと話し終わり屋敷を出る。
今は家に帰宅途中……あれ……目の前が真っ暗に……
「ここは……嘘……」
街中にいた筈なのに何処かの町に移動していて、目の前にいる人たちの服装を見るとまるで時代劇に登場するような服装をしていた。何より山の上には大きな城が見える。もしかしてボク……タイムスリップしちゃった!?
令和の剣士は義龍と龍興が生きる異世界に飛ばされる。親友との再会、憧れの剣士に弟子入り、妹武将、明智秀満として十兵衛に仕官する。
沢山のアンケートありがとうございました。半兵衛凄い人気ですね。龍興が十兵衛と同じぐらい人気とは驚きました。
来週の日曜日までアンケート募集中なのでよろしくお願いします。
好きなヒロインと見てみたいヒロインの話
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竹中半兵衛
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明智光秀
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島左近
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藤堂高虎
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斎藤龍興